第94話
闘技場、舞台外の壁に激突した頭領を第二形態――全身、竜を模した鎧を纏った戦士の姿に変わっているユリフィスは注意深く観察する。
間違いなく首の骨をへし折った。
初手で殺したはずだが、嫌な予感は拭えない。
案の定、瓦礫に埋もれ、土煙の中からぼんやりと輪郭が浮き出る。
月の光に照らされた相手の全貌にユリフィスは顔をしかめた。
まるで骸骨のようにがりがりで不健康そうな男、
完全に首の骨が折れているにも関わらず、黒装束についた埃を払いながら平然と立ち上がった。
ただし白目を剥き、口からは唾液が零れている。
もはや肉体的には死んでいるとしか思えない。
ユリフィスは着けている片眼鏡型の
名前 なし
レべル:40
異名:
種族:人族
体力:0/400+1000
攻撃:229+500
防御:210+500
敏捷:250+500
魔力:21+1000/320+1000
魔攻:202+500
魔防:209+500
固有魔法【
血統魔法:【なし】
技能:【身体能力強化】【暗黒蛇気】【蛇神化】
恐らく無理やり動かされているのだろう。
倒すためには木っ端微塵に粉砕するしかないかもしれない。
ステータスが大幅に上がってはいるが、苦戦するレベルではない。早々に決着をつけ、セレノア達の援護に向かいたいところだ。
ユリフィスは刀身に映った自らの姿を見つめ、同じようにステータスを測る。
名前 ユリフィス・ヴァンフレイム
レベル:12
異名【なし】
種族:半魔【竜人】
体力:1903/1965
攻撃:498+498
防御:413+413
敏捷:506+506
魔力:100203/98621
魔攻:497+497
魔防:449+449
固有魔法:【なし】
血統魔法:【
技能:【竜化】【身体能力強化】【属性武装<風・炎>】
グライスやスペルディア侯爵との戦いを通して、レベルは5も上がっている。
更に第二形態になっている影響で、ほぼ全ての値が倍加していた。
『ったく、容赦ないねえ、第三皇子の坊や』
「……肉体のダメージはあんたには関係ないのか。いよいよ化け物じゃないか。少なくとも俺は首を折られたら死ぬぞ」
『本体じゃないからね。所詮、うちの
「最悪だな」
『そうでもないさね。圧倒的な力を手に入れられるんだから』
頭領が再び失った右腕から黒い蛇を生やし、それを高速で伸ばしてきた。
ユリフィスは暗闇に紛れて襲い掛かってくる蛇を避けながら、手に握った灰色の長剣に金の炎を纏わせる。
倒すには完全に消滅させる以外の方法はない。
「属性武装【
巨大化した金の炎を纏った大剣を振り下ろすが、難なく躱される。
地を這うように身を低くして駆け出した頭領。
身体が壊れるのも構わず、強引にステータス以上の速度を出している。
身体中の血管が切れ、血を吹き出しながら迫るその姿に対抗するため、
「<
ユリフィスも竜化状態に加え、更に黒い旋風を身体に纏い速度を上げて迎え撃った。
頭領が左手に隠し持っていた短剣と<
力で勝っているため、拮抗は一瞬だった。
ユリフィスが押し切り、短剣を両断する。
そのまま返す剣で身体を斬り捨てようとするが、頭領は即座に飛びのきながら黒い蛇を右手から放出する。
「……鬱陶しい」
今度は一体ではなく、複数体だった。うねうねと気持ちの悪い動きをしながら牙を剥いて襲ってくる。
一々、斬るのも面倒に感じたユリフィスは、
「<
虚空から槍や剣、斧を射出して黒い蛇を地面に縫い付けていく。
しかし、頭領はそれでも際限なく右手から蛇を生み出し続ける。
『……仕方ないねぇ、竜種の力に加えて、帝国有数の血統魔法を持ち合わせた戦闘の天才が相手じゃあ、こっちも奥の手を使わざるを得ないよ』
「――」
ユリフィスは早々に決着をつける為、再び【
しかし、生み出し続けていた黒い蛇達が身を挺してその斬撃から頭領を庇う。
『……【蛇神化】」
唱えたその瞬間、
全体的に顔つきが蛇っぽくなり、長くて細い舌が裂けた口から飛び出した。
縦長の瞳孔へと変わり、顔や腕、見えている限りの肌に鱗が浮き出てくる。
蛇人間とでも形容できそうな姿へ変わった頭領。
『……形態変化はお前さんの専売特許じゃないんだよッ!』
「どんどん気持ち悪くなるな……どういう原理か知らんが、蛇が竜に勝てると思うな」
そのやり取りを合図に、二人の姿が消える。
転移と見紛う速さの左手の手刀を紙一重で避け、負けじとユリフィスも長剣を一閃する。
しかし頭領の右手から生えている巨大な黒い蛇が刀身を噛んで止めた。
再びの手刀をユリフィスは地面から噴き出させた<
「<
金の炎を消し、今度はステータス低下を付与する暴風を剣に纏わせて横凪ぎに払う。
頭領は身体を捻るが、僅かに間に合わない。
頭領の残っていた左腕が宙を舞った。思い出したように数拍遅れて血が勢いよく噴き出る。
『――勝利を確信したねぇ?』
耳障りな老婆の声が聞こえた。
大口を開けた蛇人間の口から、紫の液体が勢いよく噴射された。
「どこがだ――」
首を捻って躱しながら、ユリフィスは片手を銃口のように頭領に突き付け、
「合成魔法<光炎鳥の
至近距離で放たれた巨大な不死鳥は瞬時に毒液を蒸発させ、頭領の身体を空に持ち上げながら燃やし尽くした。
『……これで終わりじゃないよ』
そんな不気味な呟きを残して。
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