第21話
翌朝から俺はさっそく準備に取り掛かった。
だが学校で話しても恐らく頭のおかしい奴と言われて終わりだろう。
資本も人材も信用も何もかもが足りない。
最長で60年程度と女神様は言っていた。
つまり裏を返せば10年くらい修行してても大丈夫ってことだ。多分。
そんな理由を無理矢理つけて「洗う」のスキルを育てることにしたんだ。
「それじゃおじさん、いってきまーす!」
いつもより少し早い時間に起きて通学路を歩いていたらパオラが眠そうな目を擦りながら彼女の家から出てきた。
「ライアおはよぉ~。
やっば、すっごいねむいわ…。」
「おはようパオラ。今日めっちゃ早いね、大丈夫?俺のスキルで顔洗う?」
「化粧おちちゃうからぱす~
やっぱなれないことするもんじゃないねぇ~」
どうやら俺と登校したかったから早く起きて待ってたらしい。
「ちょっとパオラ忘れ物!ほらもう、しゃきっとなさい!
あら?ライ君おはよう。不出来な娘ですがどうぞよろしくお願いします。」
「おはようございますマリアさん。
いえいえご丁寧に此方こそ若輩の身ですがよろしくお願いします。」
「あら♪丁寧なあいさつできて偉いわね。
孫はいつでも歓迎してるわよ♡」
「ちょっ?!ちょっとお母さんやめてよ!
ライアも乗らなくていいからぁ!!
…それに孫って!……いずれは…だけど…まだ…そういう関係じゃ……」
耳まで真っ赤にして照れる彼女をニマニマとした顔で揶揄う俺たち。
可愛すぎか!
「あ、この子ったらライ君と登校したいからって頑張って朝起きてきたのよ。
お熱いわよね~。しかも今日は「わー!わー!」」
「それ以上は禁止!だめ!タブー!ほらライア、いこ!」
「それじゃマリアさんいってきます!」
「あらあら♪
気を付けていくのよー!」
「はぁっはぁっぜぇっぜぇっ」
「はっ…はっ…はぁ~~~~。
いやぁごめんねライアってホントごめん!」
ある程度の所で止まったらへたり込む俺。
なんでそんなに息が切れてるかって?
高校生のダッシュに都会で外で余り遊んでなかったガキがついていけるはずないだろう?そういうことです。
「ごめん。ごめんね。あのまま恥ずかしくて死んじゃうとこだったから…
その、怒ってる?」
息を整えながら大丈夫のサインを出しておく。
「はぁ~~~~~~~やっと収まった。
大丈夫大丈夫怒ってないよ!スタミナもつけないといけないなって思っただけだからね。」
「そっかそっか。
じゃあお姉さんが特別コーチをしてあげよう!」
「えっと、お手柔らかにお願いします…」
ふふん。とどや顔をする彼女に何か言い知れぬ不安を感じつつ頼むと喜色満面の笑みを浮かべながらあれやこれやぶつぶつと計画を立てだした。
「ほらパオラ学校。遅刻しちゃうよ。
トレーニングメニューは放課後一緒に考えよう?」
「あ!うん、そうだねそうしよー♪
あ、そうそう聞いてよ昨日ねー」
家族でこんな話をしたよとか、テレビでこんなのがやってて面白かったよとか彼女の話を聞いて時には感心したり怒ったり驚いたりと相槌を打っていたらあっという間に学校だ。
彼女が下駄箱で上履きに履き替える時
「今日のお昼さ、二人で食べない?
その…お弁当、さ…作ってみたんだ」
「えっほんと!?
勿論いいよ!嬉しいな~!」
嬉しくて太ももに抱き着くと俺をそっと剝がしてからしゃがんで抱きしめてくれる。
……身長、もっと欲しいな…
「パオラ、愛してるよ。」
「うん、あたしも…」
「あーお二人さん。お熱いのは結構だけどここ廊下だからな?」
二人の世界に入ろうとしてたら横からクラス委員のコージ君が気まずそうに声をかけてきた。
青い髪で爽やか系のイケメンの彼はとにかく大人からの受けがいいし彼と同年代の生徒は大体コージ君にキャーキャー言ってる。
その割にはうちのパオラは引っかかってないな?
「あ、あははは!ごっめーん!」
「すいません。気を付けます。」
「どうしても二人きりになりたいなら校舎には空き教室がいっぱいあるんだからそこならいいんじゃないか?」
等と揶揄い混じりに言ってくる辺りは俺たちに対して悪感情を抱いてるわけではないらしい。
「しっかしあの高嶺の花が婚約でしかもショタコンとはわからないものだねぇー。
あ、気を付けた方がいいよ。パオラ君を狙ってる奴はクラスにも結構いたんだ。
彼らの嫉妬心を余り煽らないように。」
「ああ、はい。そうですね。
うちの彼女は美人で優しくて何より可愛いですから」
「はいはいご馳走様。
ま、忠告はしたからね。また教室でー。」
この忠告が本当に親切心だと知ったのは学校に慣れた数か月後の事だった。
え?お弁当ですか?走ったせいでずれてたけどクマのキャラ弁で味も最高でしたとだけ。
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※尚、作者には未実装でした。※
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