第7話 黒いもの


父母が他界し、喪に服していたらじいちゃん帰ってきた。


「すまん!」

帰ってくるなりじいちゃんは俺たち家族を集めて土下座をした。

いつもにこにこして豪快だったじいちゃんの頬が若干こけて目の下には濃い隈ができ、筋肉たちも哀しみを表現するかのように委縮しているようだった。


「お仕事なのだから仕方ないですよ。

頭を上げてくださいおじいちゃん。

父さんと母さんはこっちです。」


やつれたユニ姉についてじいちゃんが奥の部屋に向かっていく。

その後ろ姿にはびっしり黒いものがついていた。


(なんだあれ……煤かなんかでも浴びたのか?)


気になった俺はじいちゃんについて一緒に奥の部屋に行った。


黙祷を終えると静かに泣き出したじいちゃんの背中をさすっているユニ姉をみていたが黒いものは落ちる気配はなかった。


(煤じゃない?なんだ?

ユニ姉には見えてない?)


「こらライ君、こっちに来なさい。」

訝しむ俺をジェイク兄がリビングに連れ戻した。


「ジェイクにーちゃんじいちゃんのせなかなんかくろくない?」


「んん?

特に黒くはないと思うけど…?」


「そっかー」

(やっぱり俺にしか見えてないのか…)


「すまない…。

戦争が終わったら絶対に退役できるようにするからそれまでライ君もユニたちを頼むな。」

ひとしきり泣いた後、

残された家族全員の頭を撫でて言葉をかけたじいちゃんはまた基地に戻っていった。

その背中は寂しそうだったと思うが俺には黒いものがついててよくわからなかった。


ジェイク兄もセリ姉もユニ姉にはついてないのにな?


これがじいちゃんとの最後の別れだった――







※父母はシートベルトを付けていたはずなのに事故の衝撃でガラス突き破って外に飛び出ていて病院に担ぎ込まれた時点で本来ならば死んでました。不思議なこともあるものですねー。

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