第34話 調理実習2

いつもの場所でお昼ご飯を食べていると山上さんがやってきた。

「やっほ!坂井君っ!」

「やっほー。山上さん。今日は友達とお昼食べなかったの?」

「もう食べたよ!なんか委員会や部活でみんないなくなったからここに来ちゃった!」

「そっか」

山上さんは時々ここにやってくるからなー。

最初はビビりまくってたけど今は逆に落ち着くぐらいだからな。

いやー、慣れってスゴいね!


「そういえばさ、さっきの調理実習でクッキー作ったじゃん」

「うん」

「上手く作れた?」

「それなりにはね。一応家で料理はしてるから」

「そっか。あ、あのさもし良かったらなんだけど…」

そう言うと山上さんがモジモジしだした。

「ん?」

「これっ!食べてみてっ!」

山上さんが顔を赤くしながらキレイに包装された袋を差し出してきた。

「ん?これさっき作ったクッキー?」

「うん」

「キレイに包装されてるね」

「料理部の子がね、袋余ったからってくれたから包装してみたんだっ!」

…すごいな、山上さん。店に売ってるやつみたいだ。俺なんか自分のおやつ用にラップに包んだだけなのに。

「こんな立派なやつもらっていいの?」

「坂井君に食べてほしいんだっ!味は保証できないけど…。」

美味しいのは知っている。なぜならさっき

「亜美ちゃんのクッキー美味しいー!」って

女子達で盛り上がってたからな。

男子なんか多分全員が食べたがってたな。

誰にもあげてなかったけど。

「じゃあありがたく頂くよ」

「うんっ!」


「今食べてもいい?」

「えっ!?今?」

「うん。せっかくだし」

「う、うん!じゃあ食べてみて!」

俺はキレイに包装された袋からクッキーを取り出し一枚食べた。

…山上さんがめちゃくちゃ不安そうにこっちをみてる。

「めちゃくちゃ美味しいよ!お店のやつより美味しいかも!」

「褒め過ぎだよ、坂井君…!でも美味しかったなら良かったっ!」


いや~、本当に美味しいな。山上さんのクッキー。…ん?これもしかしてお返しに俺の作ったクッキー渡したほうがいいのか?

いや、そもそも俺のクッキーって俺のおやつ用にラップで包んであるだけなんだけど。

そんなの渡して逆に失礼じゃないか?とか、

色んな考えが浮かんできた。が、まぁ良かったらって感じで聞いてみるか。


「あのさ、山上さん」

「はいっ?」

「良かったらさ、俺の作ったクッキーも食べてみてくれない?ラップに包んであるだけなんだけど…。」

そう言って山上さんに差し出してみた。

山上さんは、しばらくキョトンとしていたがそれから目を輝かせてきた。


「もらっていいんですかっ!?」

「うん。俺こそ味の保証はできないけど」


「やったっ!ではいただきます!

う~ん!とっても美味しいですっ!」

「そっか。良かった」


それからお互いのクッキーを食べていたのだが、山上さんが突然固まった。

「どうしたの?」

「あの、このクッキーって私以外に誰かに渡したりしましたか?…女の子とかに。」

「誰にも渡してないよ。山上さんオンリーだよ」

「私オンリー…。フフっ、それなら良かったたですっ!」


山上さんオンリーとか気持ち悪い発言をしたが、笑ってくれているので良かった。


それから俺達はチャイムが鳴るまでお互いのクッキーを食べながら雑談していたのだった。

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