第29話 ドキドキの夜3

坂井君と電話したいです?

メッセージするだけでテンパっていたのに、電話なんてして大丈夫か俺?

うーん…。数分固まってしまっていると、山上さんから再びメッセージが送られて来た。


「やっぱりご迷惑でしたよねっ!

またお時間がある時にお願いします!」


「いや、今大丈夫だから電話しようぜ!」

勢いで送信してしまったよ、アッハッハ。


既読がついたな。あ、かかってきた。


「も、もしもしっ。坂井君ですかっ?」

あれ?なんか山上さんも緊張してね?


「あ、坂井ですっ。こんばんは」

こんばんはって何回言ってんだ俺。気の利いた言葉が思いつかないからってまた挨拶してしまったよ。


「こ、こんばんはっ……」

………えーっと、会話が途切れたよ…。

マズイぞ、何か言わないと。

「え、えーっと、こうやって話するのは初めてだね…」

「そ、そうですねっ」

……はい、会話終了ー!!

え、マジでどう話したらいいか分からないんですけどーー!!なんか山上さんも緊張?してるっぽいし、会話がマジで続かんぞ!


「山上さんは友達とかとこうやってよく電話したりしてるの?」

ナイス、俺!なんとか話題を出せたぞ!


「うーん、あんまりしないですね。男の人とこうやって話すのは家族以外だと坂井君が初めてですよっ!坂井君はお友達と電話よくされるんですかっ?」


山上さん、電話も家族以外だと俺が男の人で初めてなんだ~。なんかテンションあがるな!ワッハッハ!…なんてキモい事を考えてしまったがここは冷静になるんだ、俺!

「いや~。俺も電話はほとんどしないな~」

そもそも電話する友達が全然いないんですけどね!…うん、悲しい!!

「女の子と電話したりもないんですよねっ?」

「うん、もちろん。女の子とこうやって電話したのは初めてだよ」

なんか俺の発言が若干気持ち悪いような気がしなくもないがまぁいいか。


「そうなんですねっ。嬉しいですっ!」

山上さんが嬉しいと言ってくれたので良かった。


「山上さんはこの時間帯はいつも勉強してるの?」

「そうですねっ!予習復習をしてそれからテレビを見たりして過ごしています。坂井君は何してるんですか?」

「俺はソファでゴロゴロしながらテレビ見たりスマホいじったりしてるかな~」

「なるほどっ!」


最初は緊張しまくりだったが、好きな食べ物は何だ?とか最近読んでるラノベの話題などで思った以上に会話が盛り上がった…と少なくとも俺はそう思いたい。


「あ、坂井君ごめんなさい。お母さんがお風呂に行けって言ってるのでそろそろ切らなくちゃ」

「おー。わかった。電話ありがとう。

楽しかったよ」

「はいっ!とっても楽しかったです!

またご連絡してもいいですか?」

「もちろん。こっちからもまた連絡するわ~」

「はいっ!お待ちしています!」

「じゃっ」

「おやすみなさい」

「おやすみ」


そう言って電話を切ったのだが、何コレ?

ドキドキが止まらんぞ!


結局その夜は、ほとんど寝つけないまま朝を迎えたのであった。

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