第26話 連絡先2
山上さんに言われて思ったが、確かに連絡先の交換をしていなかったな。
…そもそも誰かと連絡先を交換するという事自体ほぼないからな。と考えていると、
「あ、あのやっぱりダメでしょうか?」と
山上さんが泣きそうな顔でこちらを見てくる。
やっぱり?…前にも連絡先聞かれた事あったっけ?うーん、覚えてないぞ。
「そ、そんな訳ないだろ。こっちからお願いしようと思ってたんだよ。」
…本当は、頭の隅にもなかったのだが山上さんが泣きそうな顔だったので、とりあえず
こう言ってみた。
「…本当ですか?」
「う、うん」
「…本当に?」
山上さんがジトーっとした目でこちらに質問を繰り返してくる。
…仕方ない、白状するか。
「あー…実は連絡先交換の事は頭の隅にもなかったです…」
「やっぱりですか。坂井君は私と連絡先の交換はしたくないという事ですか?」
「ち、違う違う!誰かと連絡先の交換なんてほとんどしないからさ!それで頭の隅にもなかったんだよ。それだけなんだ!」
「…なるほど。では私と連絡先交換して頂けますか?」
「もちろん!宜しくお願いしますっ!」
…あれ、何か俺がめっちゃ交換したいみたいな返事になっちゃったよ。
お互いスマホを出して連絡先を交換した。
交換などほとんどしないのでどうやって画面を出せばいいのかすぐに分からなくてちょっと焦ったぜ。ハハハ。
まぁなんとか交換出来たのでホッとしていると、山上さんがふとこんな事を言ってきた。
「坂井君は女の子と連絡先交換した事はあるんですか?」
フハハハ!愚かな質問だよ、山上さん!
同性の友達もロクにいないこの俺が、女の子の連絡先など知るわけなかろう!
あーはっはっは!
…と言えたら良かったのだが、もちろん言えなかったので「山上さんが初めてです!」と
言っておいた。
…初めてって言い方なんか間違えてないか、
俺!いや、山上さんはそんな事気にしていないか。などと考えていると何か山上さんがブツブツ言いだした。
「く~~っ!さ、坂井君のは、初めてがわ、私だなんて~~!!フフッ、フフフ…!」
…あれ~。何かめちゃくちゃ食いついてるんですけど~。
「お、お~い、山上さん…?」
「はっ!す、すみません。坂井君と連絡先交換出来たのが嬉しすぎて我を失いかけてしまいました。」
…いや、十分失ってたよ。うん。
「そ、そっか」
「私も、父以外の男の人と連絡先交換したのは坂井君が初めてなんですっ!」
顔を真っ赤にしながらそう伝えてくれる山上さんに、俺はテンションが上がりこんな事を言った。
「そっか。とても嬉しいよ。用事がなくても連絡していい?」
「もちろんですっ!」
「山上さんも特に用事なくても連絡してきてね」
「い、いいんですか?」
「もちろん!待ってるよ!」
「は、はい!」
言った事を思い出して後から悶えるのだが、それはまた別のお話。
そんな事を言っているうちにチャイムが鳴ったので、俺と山上さんは小走りで教室に戻ったのだった。
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