第25話 連絡先
山上さんと一緒にクレープを食べに行ってから数日が経過した。
俺の友達作りの進捗は相変わらずだ。
だが、大きく変わった点がある。
毎日お昼ご飯を山上さんと食べている事だ。
他の友達と食べなくていいのか?と何度か
やんわりと聞いているのだが、「坂井君と食べたいんですっ!」と返されてしまうので、
結局一緒に食べている。
まぁ、それはいい。山上さんと一緒にご飯を食べるのは楽しいからな。
…だが、勘弁してほしい事が1つ。
食べさせあうのは勘弁してほしい!!
お互いに持ってきたご飯をおすそわけとして
相手に食べさせる事をしているのだが、1度
山上さんに食べさせるとずっと「あ~ん」と
口を開いてくるのだ。
まぁ…口を開いてくる山上さんは可愛いから悪い気分はしない。
問題は俺にも同じ事をしてくるという事だ。
山上さんにある程度食べさせた後「次は坂井君に食べさせてあげますっ!」と言って、
俺に「あ~ん」と口を開くよう促してくるのだ。
当然、俺は断っているのだが「む~っ」と
頬を膨らませて抗議してくるので、仕方なく口を開くと嬉しそうに食べさせてくるのだ。
そんなこんなで結局自分が持ってきたご飯を
ほぼ全部相手に食べさせるという謎の光景が毎日展開されている。
そして今日もお昼ご飯の時間がやってきた。
「坂井君、お待たせしましたっ!」
「全然待ってないよ」
目立つのを避けるため、俺が先に行って後から山上さんが来るという事にしてあるのだが
来るスピードが半端ない。俺が教室を出る時
山上さんが友達に囲まれているのを確認しているのだが、あっという間にここにやってくるのだ。
…山上さんは瞬間移動でも出来るのかな。
山上さんはいつも通りぴったりとくっついて座ってきて、唐揚げをひょいと箸でつまんで
差し出してきてこう言ってきた。
「今日の唐揚げは自信作なので是非食べてみて下さいっ!」
「あ、ありがとう」
そう言ってもらったのだが、うん。
これは美味しいな。生姜を感じるなー。
俺、生姜好きなんだよね~。
「どうですかっ?」
「とっても美味しいよ。生姜がいい仕事してるね~」
「良かったですっ!」
確かに美味しい。美味しいのだが、食べさせてもらうのは何回やっても慣れないな。
…あ、山上さん俺の焼きそばパンをじーっと見てるな。
「良かったら食べる?」
「はい!食べたいですっ!」
いつも通りお互い持ってきたご飯を食べさせあって、雑談をしていた。
すると、突然山上さんが緊張した面持ちに
なった。
「あ、あの坂井君!!」
「どうした?」
「よ、よかったら連絡先教えてくれませんかっ??」
…あっ、そういえば交換してなかったな。
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お読み頂きありがとうございます!
坂井隼人君の数少ない友人である富田勇二の
エピソードを短編でサポーター様限定公開させて頂きます。
是非本編と一緒にお楽しみ頂ければと思います。
こちらもよろしくお願いします。
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