第12話 褒賞

「ほらよ、約束のもんだ」


 神奈ちゃんから渡されたのは、巻布に覆われた星霊王の神斧。布越しでもその神秘は健在で、間違いなく本物だ。

 偽物を渡されるとも思わないけど。


「重っ」


 気を抜くと落としそうになるくらいの重量がある。これを振ってずっと一人でか。根性あるよね、ホント。


「重ねてお礼を。助けていただき本当にありがとうございました」

「そう何度もいいよ、礼なんて。キミを斬らなきゃ、こうして平和的な返還はなかったんだか」

「しかしですね」

「ああもう、いいって言ってんだからいいんだよ。やたらとすると、礼の有り難みがなくなっちまうよ」

「姉さん……」

「まぁ、とはいえだ。あたしからも、ありがとな、隊長さん」

「姉さん?」

「あたしからは一回目だからセーフ」

「なんだよ、それ」

「弟を助けてくれて。正直、あんたがいなかったらこの結末はあり得なかった。天南も、最後まで信じてくれてありがとう」

「えへへ、どう致しまして」


 天南ちゃんも報われた。


「二人はこれからどうするの?」

「あー、それなんだけど、またチームに戻ることになった」

「嘘!? やった! でも、なんで?」

「事情を話したんだ。天南にしたみたいに。そしたら受け入れてくれてさ。壊した町も、一緒に直してくれるって」

「そっかー! よかったー!」


 自分のことのように喜んでいる。

 こういう所が天南ちゃんの長所だね。


「それじゃ、俺たちはこの辺で。早くこいつを持って帰らないとなんでね」


 星霊王の神斧を背負う。

 やっぱり重い。


「じゃあね、神奈、零士も。偶には帰ってくるから、その時は」

「わかってる。チーム総出でお出迎えだ!」

「そうこなくっちゃ! じゃあね!」


 星霊王の神斧を背負い、天南ちゃんと帰路につく。大変だったけど、無事に持って帰れるようになって良かった。

 さて、後は帰るだけなんだけど。


「あ、団子屋」

「蒼鍵隊長?」

「ちょっとだけ、ちょっとだけだけだから!」

「早く帰らなきゃでしょ! 蒼鍵隊長!」


 天南ちゃんの制止を振り切って団子屋へ。

 お持ち帰りの団子、食べるのが楽しみだな。


§


「失礼します。星痕烈士天隊、桜灯隊長、花尾蒼鍵、到着しました」

「入れ」


 聖域に足を踏み入れ、そこで待つ稍波さんの目の前に腰を下ろす。そして背負っていた星霊王の神斧を巻布を外して二人の間に置いた。


「星霊王の神斧。回収成功しました。ここに返還いたします」

「うむ、よくやった。花尾蒼鍵。大儀である」


 これで果たすべき使命を一つ終えたことになる。まだ一つ目だけど、大きな一歩だ。このまま歩みを進めていきたいな。


「今回の働きは非常に大きい。何が褒賞を考えねばな」

「ほ、褒賞ですか?」

「何か希望はあるか?」

「そうですね……では」


§


「褒賞ですか!? 私に?」


 制服姿の天南ちゃんは、かなり驚いていた。


「そう。俺の方から頼んでおいたんだ。二人で回収したからね」

「そんな……隊長、ありがとうございます」

「どう致しまして。欲しい物とかある?」

「うーん。あの、蒼鍵隊長はどうしたんですか? 褒賞」

「俺? 俺は色んな食べ物お取り寄せ。下界、中界、上界問わずのね。楽しみ!」

「なんというか、すごく蒼鍵隊長らしいですね」

「そう? とにかく、そういうことだから褒賞の内容、考えておいてね」

「はい!」

「それじゃ」


 星護宮の廊下を渡って桜灯へ。

 いつ届くかな、お取り寄せ。


§


 天南ちゃんの褒賞は休みになった。

 星護宮にて日々、隊士となるため、己を鍛え上げている生徒たちには休みというものがほとんどない。

 特殊な事情で隊長になった俺のサポートのため、学生ながら隊士となった天南ちゃんも、それは例外じゃない。

 だから、なんだろう。

 天南ちゃんは休みをとって、中界に里帰りしている。きっと今頃はチーム総出のお出迎えをうけているはず。

 その光景が目に浮かぶようだ。


「このステーキ、うまっ!」


 こちらはこちらで、褒賞である色んな食べ物のお取り寄せが届いていた。どれも筆舌に尽くしがたい絶品ばかり。

 いま、とても幸せです。 

 



 

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