第11話
国枝先輩たちといっしょに遊んだ日曜日の翌月曜日からは、“喜多楼”でのアルバイト生活の再開です。
先週いっぱいでやるべき仕事内容はおおよそ把握し、その仕事についても慣れてきたので、その点では楽と言えば楽なのですが……。
8月に入って暑さが増し、空調の利いた旅館内はともかく、外での作業も一部あるので、日差しや汗に悩まされる機会もあります。
とは言え、トータルで見れば“苦行”とか“ブラック”とは程遠い、ホワイトで快適な職場環境だと言えるでしょう。
「ふぅーーっ、お互い今日もよく働いたわね~」
「──全面的に肯定。軽作業とは言え、8時間労働は結構たいへん」
「あはは……で、でも、こういう風に毎日温泉に入れる分、疲れも翌日までは残りませんし」
勤務時間のあと、晴海さんたちとお風呂に入り、3人並んで湯船に浸かりながら雑談するのも、すっかり習慣になっています。
「確かにね、温泉入り放題ってのは如何にも“従業員特典”って感じで、悪くないわ!」
「──猪狩沢の温泉の効果は薄めだが、「軽度の疲労回復と美肌」なので、今の私たちにとっては僥倖」
そんな会話をしつつ、身体や髪を洗ったり再度湯船でまったりした後、ほぼ3人同時に風呂から上がって脱衣場に出ました。
長身でプロポーションの良い晴海さんや、私同様に小柄ながら出るべきところは相応に出て均整のとれた体格の雪さんに、多少のコンプレックスを抱きつつ、わたしは胸元までバスタオルを巻いた状態で、脱衣場のストールに腰かけました。
腰近くまである髪を、まずはタオルで拭いて予め水気をおおよそとってから、鏡を見つつドライヤーで乾かします。
なにしろわたしの髪質は猫っ毛なので、寝る前にキチンと乾かさないと、起きた時大変なことになるので……。
(あれ? そう、だっけ? 以前は適当に拭いただけで済ませていたような──)
「ところで、恭子、アレから何か“進展”はあったの?」
些細な違和感を感じて眉を寄せているところに、晴海さんが声をかけてこられました。
「? 進展って何のことですか?」
そもそも“アレ”って何のことでしょうか。
「──晴海が言っているのは、「昨日カラオケ後に解散して以降、国枝逸樹と貴方との関係に変化があったのか」という意味」
!
「そ、そんな短時間で何もあるワケありませんよぉ。それに、わたしと先輩の間に“関係”なんて……」
「おや~、でも、昨日は夜遅くまで布団の中でLINEしてたわよね。アレは国枝先輩が相手じゃなかったの?」
「──普段あまりLINEを使わない恭子だからこそ、興味深い」
うっ……おふたりに見られていましたか。
「と、特別なことは話してませんよ? 「今日は楽しかったですね」とか、「ボウリングで足引っ張ってごめんなさい」とか……。
先輩からのメッセージも「バイト頑張ってね」とか「普段は応援部でどんなことしてるの」とか、あたりさわりない内容でしたし」
「またカラオケに行きたいね」と誘ってくださいましたけど、きっと社交辞令でしょうし。
「ふ~む、カラオケかぁ。“ふたりカラ”は親密度マシマシになれる可能性は高いけど、恭子は歌がアレだからねぇ」
ほっといてください。わたしだって、あんまり歌が巧くないという自覚はあるんですよ!
「ココは奇をてらわず、映画館か水族館、プラネタリウムあたりを持ってくるのがベスト」
「面白味には欠けるけど、鉄板っちゃ鉄板よね~」
だから、何の話ですか!? いえ、わかりますけど、先輩がわたしを誘ってくださるとは限りませんし、それに──ソレってまるっきりデートじゃないですか!
顔を赤くしてわたしがそう言うと、晴海さんと雪さんは揃って顔を見合わせて、訳知り顔に頷かれました。
「これは──結構重傷ね。自覚がないあたり、特に」
「──此処は草津ではないし、そもそも湯でも薬でも直せない」
もぅっ、優しい(生暖かい?)目で見るのは止めてくださいよぅ。
「安心しなさい、恭子。あたし達は──恒聖高校応援部よ!」
「無論、恋の応援だってバッチリ」
止~め~て~! そう言って、三年の小泉先輩と九重先輩の仲を取り持とうとした時は、大惨事になったじゃないですかぁーー!!
「──しかし、雨降って地固まる。あのふたりは結局付き合うことになった」
「終わりよければすべて良し! さらに、あたしたちが楽しければ倍率ドン、よ!」
(ああ、先輩、すみません、わたしでは、このふたりの暴走を止められそうにありません)
わたしは、心の中で国枝先輩に謝ります。
しかしその一方で、「どうして本来“
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