第7話 埋もれた歴史を明らかにする一助を担って

 ついに、ある歴史が塗り替えられた。

 とは言っても、特別な何かが起こったわけではない。

 過去のことについて、ひとつ、ある意味においては重大な事実が判明し、そしてそれが公衆のもとに明白に記されただけである。


岸一郎(元大阪タイガース監督。1894~没年不明)


 早稲田大学卒業後満州にわたり、満鉄の投手などでも活躍した野球人。

 終戦後1954年、突如、大阪タイガース(以下「阪神」)監督に就任。

 翌1955年5月に病気療養を理由に休養。実質監督解任。しかしながらその後数年にわたり技術顧問として阪神球団に在籍した。

 もっともその後は故郷の福井県敦賀市に隠遁生活を送っていたため、没年は長年にわたり不明のままであった。プロ野球の監督どころか、野球創成期の野球人のひとりでもある彼の没年が不明というのはどうしたことだろうか。


 しかし、去る2024年2月5日に発売されたある書籍によって、その没年どころか命日までが判明したのである。


岸一郎(1894~1969)


 私は楽天ブックスでかねて予約していたので、発売日の1日前に届いた。

 そして早速、むさぼるように読み進めた。

 なんと、その謎は解かれていたのである!


 岸一郎氏の命日は、1969年4月3日。

 私が生まれるわずか5箇月と9日前のことだった。

 氏が檀家となっていた寺の過去帳により、その事実は判明したという。

 さらにその本では岸一郎氏の人となりが次々と白日の下にさらされていくのであるが、それについてはここでは詳しく述べることはしない。一言で言えば、抱腹絶倒、常軌では測れぬほどの面白さを体感できるでしょう、ということで。


 さて、かの検索サイト・ウィキペディア。

 本書発売後十数日にわたって「没年不明」のままであった。

 しかしながら、発売後まもなく張られていた参考文献のリンクに連動し、数日前にはなんと、岸一郎氏の命日がその出典とともに明記された。

 書籍発売後2週間ほど経過した頃であった。


 実は私、ネット上のブログと某SNS上において、その事実を明記した記事と書込をいくつか出していた。そんなことをしたからと言って、それでもって何かを変える力となったと思うのは、いささかおこがましい思い上がりかもしれない。

 しかし、公衆が無料で検索・確認できるサイトにも、岸一郎氏の命日という事実が明記されるまでの、何かの力になっていたのではないか。

 かのウィキペディアの記述を見たとき、こんな思いが込み上げてきた。


 自分も、埋もれた歴史を明らかにする一助を担ったのだ、と。


・・・ ・・・ ・・・・・・・


 その書籍名を、参考文献としてここに示しておきます。

虎の血 阪神タイガース、謎の老人監督 村瀬秀信・著 集英社 

                   2024年2月5日発売

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