第56話 VSブラッディマンティス
『ブラッディマンティスが現れた』
というメッセージが現れた。カマキリってマンティスって言うんだね。
私はサメのリュックやマルタさんから預かったバッグを下ろした。そして、ハンマーを握りしめて間合いを取る。
ブラッディマンティスの情報を私は何も知らない。知らないけれど、相手がかなりの強敵だということは分かる。
たぶん私はブラッディマンティスの攻略推奨レベルには届いていないと思う。
プレッシャーが凄い。
私の生存本能が「ここは逃げた方が生存確率が高いよ」って伝えてきている。でも、私は逃げる気にはならかった。闘争本能があいつを倒せって言ってくるから。
もう一度、しっかりとブラッディマンティスを見据えてみる。
「ひー……。私、実はカマキリの見た目って苦手なんだよね……」
だって手が刃物だし。顔がそもそも怖いし。
トラウマが思い出されてしまうよ。私、小さい頃にカマキリを持とうとしてシュパッと指を斬られた経験があるんだよね。それが痛すぎて心の傷になっているんだ。
このブラッディマンティスの鎌はまるで金属みたいに光っている。あれで斬られたら痛いどころじゃすまないと思う。
だから絶対に一回も斬られたらダメだ。
ブラッディマンティスが私に向かって走ってくる。
一瞬、身構えた。
でも、大丈夫。キラーホーネットに比べたらだいぶ遅いから。ただ――。
「う、うわっ!」
鎌を振るスピードはとんでもなく速かった。
回避の判断が遅れていたら、ざっくり斬られてしまっていたと思う。
「首を狙ってくるの怖すぎ――」
ヒュン、ヒュン、ヒュンと空気を切り裂きながら、何度も何度も執拗に私の首を刈ろうと鎌を振ってくる。
首にかすりでもしたら出血多量で死んでしまいそうだ。ギリギリの緊張感の中で目をこらしながら鎌を避け続ける。
「なんて殺意まんまんなんだろう」
私、別に何も攻撃してないのにな。
ここはブラッディマンティスの縄張りなのだろうか。いや、そもそも虫に縄張りってあったっけ。
なんにしても反撃しないとね。
正面からは攻撃しづらい。あの二本の鎌をくぐり抜けてブラッディマンティスの胴体に攻撃なんて、私にはとてもできないと思う。
だからなんとかして正面を避けて、ブラッディマンティスの横を取らないとだよね。
鎌に気をつけながら右側に移動していく。ブラッディマンティスは何も気にせずに鎌を繰り出し続ける。
徐々にだけどブラッディマンティスの攻撃が遅れ始めているだろうか。もしかしたら方向転換はそこまで速くはないのかも。
「これならいけるかも」
次の左側からの鎌を避ければ攻撃に転じられる。ちょうどその左側からの鎌が私に振り下ろされた。私はしっかりと回避したよ。
よし、攻撃のチャンスはここしかない。
「今だっ!」
攻撃を避けようとしたときだった。
あ……れ……。おかしい……、足がしっかり地面につかなかったんだけど――。
足の裏が斜めに接地しちゃっている。なんで――。
この感触――。ちょうど大きめの石の上に足が乗っかってしまったみたいだった。
「嘘っ」
綿毛花に隠れて石なんて見えていなかったよ。
私は真っ青になってしまった。これ、絶対に死ぬやつだ。
振り下ろされた鎌が私の眼前に迫っている。
「くっ――」
どうにか身体をひねる。けれど――。
「ああああああああああああっ!」
痛みに備えて先に悲鳴みたいな声を出してしまった。その後を追ってくるかのように、鎌がスパッと私の肌を斬り裂いていた。感じたことがないような冷たい痛みだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます