第50話 新たなクエスト
広場に戻ってくると、私はいつもお世話になっている露店に顔を出した。ダンジョンフォークのリルリルさんのお店だね。
この露店では回復アイテムから武器防具、冒険のサポートグッズまでいろいろな物を取り扱っている。ちなみに私が作ったポーションはいつもこのお店に卸していて、透明な瓶に入れられて販売されているよ。大好評みたいでいつも飛ぶように売れてるんだって。
ちなみにダンジョンフォークってこのダンジョンに住む種族の名称だ。四頭身くらいの背の高さで見た目はとても可愛いんだよね。服は民族衣装を着ている。
リルリルさんは子供みたいに見えるけど、しっかり成人済みだそうだ。髪型は二つ結びでとても可愛らしい女性なんだよね。
リルリルさんは私を見つけると、ニコッと大きな笑顔を見せてくれた。
「紗雪さん、お帰りなさいー」
「リルリルさん、ただいまです。マルタさんとお話してたんですか?」
リルリルさんの露店にダンジョンフォークのマルタさんが来ていた。三つ編みおさげの女性だね。
マルタさんはとても凄い人で、服の修繕の達人だ。たとえどんなに服がボロボロになっていたとしても布切れが少しでも残ってさえいれば、ダンジョンフォークの伝統技術で完全に修繕してくれるんだよね。それがあまりにも凄い技術なものだから私はいつもお世話になっているよ。
私はマルタさんに会釈する。
「マルタさん、こんにちは」
「こんにちはー。紗雪さん、今日はお願いがありましてー」
「え、お願いですか? 私にですか?」
「はい、紗雪さんにです」
「な、なんでしょうか」
ちょっとドキドキする。マルタさんとは、まだ何かを頼ってもらえるほどには仲良くなっていたとは思っていなかったから。
「紗雪さんは、
「綿毛花? いえ、初耳です」
「そうでしたかー。綿毛花はその名の通り、たくさんの綿が咲き誇る花なんです。
「植物採取ってことですか? あ、ということはクエストですか?」
以前、リルリルさんが私にクエストを発行してくれたことがあったのを思い出した。ダンジョンの住人であるダンジョンフォークは、信頼している人にクエストをお願いすることがあるんだよね。今回もそういうことだと思う。
「はい。紗雪さんならとても信頼できる冒険者だから一回相談をしてみては、とリルリルからの強い推薦がありまして。クエストでの依頼になりますね」
おおおー、いやー、なんだか照れちゃうな。いつの間にか推薦してもらえるくらいに私ってリルリルさんから信頼されていたんだね。
その信頼に応えるためにも、このクエストは受けたいなって思う。
リルリルさんが補足をくれるようだ。
「紗雪さん、綿毛花はレッドゾーンの中でも比較的安全なところに生えていますから、採取するだけならそれほど危険はないと思いますよ」
マルタさんが更に説明を足してくれる。
「嬉しいことに、ここのところダンジョンに来る地球人さんがますます増えてきたんですよ。でもその関係でどうしても服の修繕が多くなり……、うちで保管している素材のストックが怪しくなってきてしまったんです。ですので、クエストのお仕事をどうかお願いできないでしょうか」
なるほど綿毛を紡いで服の修繕に使っていたのかな。でも需要が高すぎて綿毛の在庫が心許なくなっちゃったと。それで在庫補充のために採取クエストで取ってきて欲しいってことだね。
もしも服の修繕に使う素材が足りなくなってしまったら、私としてもとても困るよ。よくブレザーとかブラウスをマルタさんに修復してもらっているし。素材がなくて修繕できないなんて言われてしまったら学校に行くときに困ってしまうよね。
こういうときはお互い様だよね。クエストを引き受けてマルタさんの助けてになってあげたいって思う。
「分かりました。その綿毛花っていうのを私がいっぱい取ってきますね」
リルリルさんとマルタさんが喜んでくれた。あ、でも、とマルタさんが慌てたように言う。
「今日はもう遅い時間ですので――」
2、3日以内にやってくれればいいらしい。
それは良かった。今日はもう帰ろうって思っていたからね。とてもじゃないけど今からレッドゾーンになんて行けなかったよ。
マルタさんが何やら画面を操作し始めた。
「それでは、私の方からクエストを発行させてもらいますね」
クエストを発行してくれたようだ。そのクエストを私が受注する。
クエストのタイトルは『綿毛花をゲットしよう!』だ。報酬は2万5千ポン。かなり奮発してくれたと思う。マルタさんの期待に応えられるように、しっかりと仕事をしないとね。
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