第31話 ザリガニを納品
あ、ザリガニを倒したことで感情がすっかりめちゃくちゃになっていた。
私の目の前にメッセージウインドウが表示されていたんだね。
『ワイルドクレイフィッシュを納品しますか?』
倒したら自動納品じゃないんだ。私は『はい』を選択した。
ザリガニの身体がフッと消えた。ダンジョン神が持っていったんだね。
「ダンジョン神さん、どうか美味しく食べてください」
『どうもありがとう~っ♪ 美味しく頂いちゃうぜっ☆』
うわ、びっくりした。返事のメッセージが出るとは思わなかった。ダンジョンってシステムとかがたまーに私の言葉を聞いてることがあるよね。唐突に返事がくるとちょっとびっくりする。しかも、今回はダンジョン神だし。あ~、びっくりした~。
って、あ――。
出る――。出る――。出る――。
「くっちゅ!」
あ……今の……変な声ですけど……私のくしゃみです……。
なんか私って、ぶえっくしょーんみたいにならないんだよね。教室でやるとみんなにくしゃみとして認識してもらえなくて、みんなから不思議そうにされることがよくある。
うわ、身体が少し震えてきた。あ、鳥肌がたってる。
「そうだった。私、ずぶ濡れだった」
ずっとこんなところにいたら風邪をひいてしまう。まだまだ夏は遠いんだし、小川に入るような季節じゃなかったね。
水をじゃぶじゃぶ言わせながら土の地面に向かって歩いて行く。
さっきまで水に濡れながら元気に泳いだり走ったりしていたのに、いっきに動くのが億劫になってきてしまった。
身体が冷えを感じるとともに、私のテンションも下がっていってるみたい。
「ううう……寒い……」
水からあがりつつ自分のHPを確認してみる。
「あれ……。あんなに痛かったのにHP的には10しか減ってないんだね」
残りのHPは105だ。数字だけ見るとすごく元気がありあまってそう。私としては頭蓋骨にヒビが入ってるんじゃないかってくらいに痛いんだけどな。
仮病がバレたみたいな気分になってしまった。本当に痛いのに。
「とりあえずポーションを飲んでおこうっと」
ポーションの入った瓶を取り出した。
左手を腰に当てて右手に瓶を持つ。そして、ぐびっ、ぐびっ、ぐびっと一気飲みをする。
味は甘くて美味しい天然水みたいな感じ。
豪快に飲んでいるから口の端からポーションがどんどんこぼれているけど気にしない。
あー、きたきたきた。身体中がリフレッシュしていくような爽快感ー。
うあー、顔が熱い熱い熱い。あと、お尻も熱いー。攻撃を受けたところがどんどん治癒されていくー。
目の端でHPを確認してみたらもう完全回復していた。でも、最後まで飲み切るよ。中途半端に余らせても売り物にはならないから捨てるだけだし。
「ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ、ぷはーっ。あー、気分すっきり。たまらなーい!」
私の身体が絶好調時の状態になった。
身体が軽い軽い軽い。意味もなく走り出したい気分だ。身体が元気すぎると大きな声を出して歌ったり、遠くに「やっほー」とか言いたくなってしまう。
「私、ポーション好きだなー。コンビニとか自販機で普通に売ってればいいのに」
でも、現実では難しいっぽい。ポーションはダンジョンでしか作れないし、保存するにはダンジョン神が作った空き瓶が必要になってくるからだ。
「科学力が発展して、ポーションが冷蔵保存できるようになるといいな」
きっと頭の良い人がいつかできるようにしてくれるはず。そうしたら私は大喜びだ。ポーションを売る商売だって繁盛しそう。そういう時代がすぐにきますように。
さて、これで人心地ついた。
「残る問題は――」
私は自分の胸の膨らみを見た。ブラウスがバストラインにそうようにして張り付いている。片足を上げてみるとスカートが太ももに巻き付くみたいにして張り付いていた。かなり重い。
「このびしょ濡れの状態をどうしようか……」
下着までぐっしょりだ。とても人前には出られない。私は腐っても花の女子高生だから、おしゃれじゃない状態でダンジョンや街を歩くなんて絶対にムリ。特にブラジャーがばっちり透けているのが大問題だ。恥ずかしいどころじゃないよ。
「ふう……、着替えないとね……」
気は重いけど、いつまでも濡れねずみみたいな状態ではいられない。私は着替えられそうな場所を探すことにした。
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