第28話 ザリガニを探そう!

 小川の水がゆっくりと流れている。

 この水はレッドゾーンと呼ばれる危険地帯からずっと流れてきてるんだよね。この小川の上流の方へずっと歩いて行くと強いモンスターがうじゃうじゃいるはずだ。


 私がこれから戦うのは、その危険地帯の一歩手前にいるザリガニモンスターだ。絶対に強いに決まってる。

 私がダンジョン攻略者として一歩先へと進むために、絶対に乗り越えないといけない試練みたいなものかもね。ここを乗り越えることができれば、いずれはレッドゾーンに行っても大丈夫なはず。


「さて、どうしようかな」


 レッドゾーンの方まで続いている小川を見渡してみるけど、ザリガニはぜんぜん見当たらない。

 振り返ってみると、たくさんのダンジョン攻略者たちが小川の中へと入っている。あまり深いところまでは行っていないにせよ、しっかりと水には入っているね。

 すぐそばの岸には彼ら彼女らの靴と靴下がいっぱい並んでいた。


「水に濡れるのはイヤだなー……」

 でも、ザリガニを倒すには水に入らないとダメみたいだ。気は進まないけど、報酬の空き瓶をゲットするためなら私は頑張るよ。


「あんまり生脚には自信がないんだけど」

 モデルさんみたいに綺麗じゃないから。

 私はスカートの中に手を入れた。そして、黒タイツに指を入れてゆっくりと脱いでいく。


「ううう、やっぱりちょっと恥ずかしい」


 せめて岩陰とかに入って脱ぐべきだったかも。

 こんな少し先に人がたくさんいる場所で黒タイツを脱ぐなんて、露出願望でもある変態みたいに見られるかもしれない。


 黒タイツを太ももの下までおろした。

 露わになった生肌がかなりスースーする。

 黒タイツが膝を通っていく。もう後戻りできない。覚悟を決めて黒タイツをどんどん下げていく。


 ついに、足首を通り過ぎた。スカートの中が見えないように注意しながら片足ずつあげる。なるべく可愛い感じに内股気味で右足から脱いだ。次に左足だ。もちろん靴も脱いでるよ。

 これで私のスカートから下は完全に生脚状態だ。


「じゃーん。私の制服姿の生脚、初公開ー。って、誰も待望してないよね。別に綺麗な生脚でもないし。私、なに言ってるんだろう」


 女子高生だからって誰の生脚でも価値があるわけじゃないよね……。私は黒タイツ補正がないと他の女の子たちの隣には並べないようなタイプなんだ。


「はあ……、美脚になりたい人生だった……」


 美脚になってもっとスカートを短かくしてみたかった。

 いやでも、私は寒いのが苦手だし、けっきょく美脚になっても黒タイツは穿いている気がする。それはそれで需要はあるんだろうか。はあ~あ……、なんにしろ美脚にはなりたかったな。

 地面に裸足で立った。ダンジョンの地面はひんやりしていた。


「裸足で地面に立つのって何歳以来かな」


 小学生の低学年以来とかかも。懐かしい感じ。

 邪魔になりそうだから、背負っていたサメのリュックを靴の隣に下ろした。ただでさえ動きづらい小川の中でリュックなんて背負っていられないからね。ついでにブレザーも脱いだ。だって、濡れたらイヤだから。


「さあ、水の中に入ろう」


 ハンマーを手に取って小川に向かう。まずは右足の親指をそーっと水に当ててみた。


「うひっ。冷たっ」


 まだまだ春だし、水遊びをするような季節じゃないんだよね。

 そういえば、今日は別に濡れるつもりがなかったからタオルを持ってきてなかったな。モンスターを倒したあと水に濡れた生脚をどうしようか。

 考えたけど良い案は思いつかなかった。まあいいや。どうにかなるでしょ。思い切って右足を足首まで水につけた。


「ううう~~~~~っ」


 水の中の地面の感触がちょっとイヤだった。

 でも、すぐに慣れた。左足も水の中に入れる。これでもう後戻りできない気持ちになった。

 水がけっこう冷たいから太もものあたりに鳥肌みたいなのがたってるかも。まあでも、気にしない。他のダンジョン攻略者は私に注目してないし。みんな自分たちの戦いでいっぱいいっぱいで他の人なんて見てる余裕はないでしょ。


「ザリガニを探そうっと」


 私は水をじゃぶじゃぶ言わせながら小川の真ん中に向かって歩いていった。

 ザリガニ、どこにいるんだろう。

 歩けば歩くほど、小川は深くなっていく。もう膝下くらいまで水がきてる。ううう、これ以上、濡れるのはちょっとつらい。あと膝の上まで水がくると俊敏な動きができなくなりそうで不安だ。


 でも、ザリガニがいないんだからしょうがない。もう少しだけ先へと歩いて行こう。

 けっきょく、太ももくらいまで水に濡れてしまった。スカートを指先で持ち上げる。

 かなりのサービスポーズになっている気がしないでもない。


「まあ、私のサービスなんて需要ないか……」

 自虐の言葉が自分に刺さる。痛ててててて。

「それにしてもザリガニ、いないなあ。もしかして、水に顔をつけてみないと分からない?」


 私は前かがみになった。

 顔を水につけるのはイヤだけど、近づければ水の中はちゃんと見える。わりと透明度の高い綺麗な水だと思うよ。


「ん~~~~~~っ」

 よく分からない。さらに前かがみになる。真後ろに誰かがいたらスカートの中が見えてしまっているかも。

 まあ、誰もいないから大丈夫だよね。

 そう思ったときだった。


「うっひゃあああああああん!」


 後方の水の中から何かが発射された。そしてそれは私のスカートの中のお尻に痛烈にヒットした。

 冷たいし、痛い!

 ものすごい衝撃だった。私は大きくバランスを崩してあっさりと――。


「ぶほあああああああああああああああああああっ!」


 顔から小川の中につっこんでしまった。



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