第26話 同時作成個数アップ
毎日毎日、こりもせずにダンジョン通いを続けている。やっていることはポーション作りばっかりだ。
フレアリザードを倒してから二週間は経ったかなー。
どんどん経験値がたまっていくし、お金だって稼げている。
「ポーションを同時に2個作成できるおかげだよねー」
すごく効率が良いんだよね。だからなおのこと楽しい。
そうそう、マルタさんに預けていたブレザーとブラウスだけど、本当に綺麗に元通りになったよ。新品にしか見えないくらいだった。
「ダンジョンフォークの技術力はすごいものがあるね」
ダンジョンフォーク専門のスキルでもあるのか、あるいは魔法のたぐいなのか、そもそもお裁縫が得意な種族なのか。
「何も分からないけど、とにかくすごい」
これでダンジョン攻略で服の心配は何もいらなくなった。学校帰りに制服でダンジョンに来ても何も問題ない。
ちなみに、本気でダンジョン攻略をやっている女子生徒は動きやすい格好に着替えたり、防御力がアップする服をダンジョンフォークから買っていたりする。
「私は制服でじゅうぶんだけどね」
だって、やってることはだいたいポーション作りばっかりだから、制服が破れたり切れたりするのは珍しいからね。
「あ、ポーションができた」
二つ同時に作っていたから二つ同時に完成した。きっちり25分で作成完了だ。
「あ、レベルがアップした。これでレベル40だ」
スキルポイントを〈ポーションクリエイト〉の強化に割り振った。すると、見慣れない文章がポップした。
『ポーションの同時作成個数が3になりました』
え――。
もう一度確認した。
『ポーションの同時作成個数が3になりました』
見間違いじゃない。そんなことってあるの。
「2個でもすごかったのに。3個もいいの? 本当に?」
ドキドキしてきた。自然に口もとがにやけだした。けっこうきもい表情になっちゃってるかも。でも、にやにやせずにはいられない。
私は駆け出した。駆けて広場へと突入する。そして、リルリルさんの露店へと向かった。
リルリルさんはだいぶ早いタイミングで私に気がついて笑顔を見せてくれた。
「紗雪さん、おかえりなさいー」
「ただいまです。あのっ、あのっ」
けっこうな勢いで露店に来たからリルリルさんがちょっと驚いている。
「ど、どうかされましたか」
私の表情を見て何か察したようだ。
「嬉しいことがあったんですね」
「はいっ。実はポーションの同時作成個数が3になったみたいなんです」
「わっ、すごいことですね。おめでとうございます」
「ありがとうございます。すごいことですよね」
「ええ、もちろんです。順調に成長されているようでなによりですよ。でも、ポーションを3個同時に作れるようになったということは――」
あ、そうか。うっかりしてた。
「なるほど。空き瓶が必要ってことですね」
「そういうことになりますね」
空き瓶はこの世界ではかなりレアだ。ダンジョン神が用意してくれるものだからね。たとえ地球のお店で適当な空き瓶を買ってきたりしても、ここでは使えないんだよね。
「どうやって空き瓶をゲットしたらいいんでしょう」
「そうですねー。やっぱり、クエストをやるしかないと思います。ただ、空き瓶をゲットできるクエストが都合よくあるかどうかは……」
「なるほど。ちょっと見てきますね。あ、ポーションは買い取ってもらえますか」
「もちろんですよ。いつも助かります」
ポーションを二つ売った。ポーションの売却額が私に入ってくる。
そして私の所持している瓶がすべて空き瓶に戻り、リルリルさんの所持している空き瓶に私のポーションが移動する。
すかさず私は次のポーションを作り始めた。
「では、空き瓶探しに行ってきます」
「ご武運を~。無理だけはしないでくださいねー」
「はーい!」
広場の中央奥に向かう。相変わらずここはいつも賑わってるね。近場の学校の学生が女子も男子もたくさんいるし、大人だってたくさんいる。
私は人があまりいないあたりに行って石版をチェックした。じっくり一個ずつ確認していく。
「これはダメ。報酬はお金だけだから。こっちはお金といくつかの素材か――。あ、これはスキルポイントがもらえるんだ。後でやろうかな」
いくつか調べたけど、空き瓶をゲットできるクエストはなかった。
「やっぱりそう簡単にゲットできるものじゃないみたい」
女子高生たちが楽しそうに2番通路に向かって行くのが見えた。たぶん、一つ上の先輩たちかな。きゃいきゃい言ってて本当に楽しそうだ。
「特別クエストがあるなんてラッキーだったねー」
「うん、空き瓶ってかなりレアだから絶対にゲットしよー」
ていう会話が聞こえてきた。今、空き瓶ってはっきり言ってたね。どのクエストだろう。
さっきの女子高生たちの見ていた石版は……。
一番人が多い場所だった。さっそく読んでみる。
『は~あい。あたし、ダンジョン神。2番通路のずっと先にさー、長い川があるじゃない? そこにザリガニがいるんだけどねー、そいつがけっこう美味しいのよ。でさー、からあげとか塩ゆでにして友達にふるまいたいんだけどー、自分でとりに行くのめんどいからさ、悪いんだけどちょっと狩ってきてくれな~い? よろぴくね~☆ あ、そうそう。そんなに多く狩られても困るから20組様限定ね☆ 本日限定だヨ!』
ずこー。相変わらずノリが軽くて気合が入らない文面だこと。
『攻略推奨レベル:35。間違っても初心者は受注しちゃダメだよ☆』
そして、肝心の報酬が――。
『報酬:空き瓶(大奮発だゼ☆)』
「これは絶対にやるっきゃない」
喉から手が出るほどに欲しい空き瓶ゲットクエストだから。
他の人たちもこのクエストを見て悩んでいるみたいだ。ネックになっているのは攻略推奨レベルみたい。20も足りないとか、30も足りないとか。みんなけっこうレベルが低いみたいだね。
それでも数の暴力でいけないかみたいな相談をしている。
みんなが悩んでいるうちに、私はクエストを受注した。すると定員オーバーになったみたいでクエストの石版が地面に沈んでいった。
「ギリギリセーフだったんだね」
あーっと悲しそうな声が周囲からたくさん出た。悩んでないで受注しておけばよかったーって声ばっかりだ。
「フフフ、こういうのは早いもの勝ちだよ」
私はいちおうリルリルさんに報告した。
クエストの舞台である小川はダンジョンの危険地帯であるレッドゾーンからずーっと流れてきているんだって。だからあまり川を辿りすぎてダンジョンの奥に行かないようにってアドバイスをもらった。
私は「はーい」と返事をして2番通路へと向かった。
ステータス
■レベル40
・HP 115
・攻撃 52
・防御 54
・敏捷 71
・魔法 38
・技術 101
■スキル
〈ポーションクリエイト〉 レベル20
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