第15話 ポーション同時作成

 無事にウォーキングウィードの討伐クエストを達成することができた。

 報酬の空き瓶はどうやってもらえるんだろうか。って思ったんだけど、手渡しとかじゃなくてアイテム空間に直接入れてくれる感じだった。


 アイテム空間を開いたついでにちょっと整理をする。

 新しい空き瓶のアイコンをタップして、以前から持っていた方の空き瓶の隣にスーッと持っていく。これで二つの空き瓶が並んだ。


「ふふふ、ふふふふふ」


 空き瓶が2個だよ、2個。嬉しいな。これで〈ポーションクリエイト〉がますますはかどるよ。


「さっそくポーションの同時作成を試してみよう」

 と思ったけど、片方の空き瓶にポーションが入っている状態だから同時作成はまだできなかった。1個だけなら作れるけど。


「じゃあ、リルリルさんのところでポーションを売ってからだね」


 帰るまで時間がかかるし、新しい空き瓶でポーションを1個だけ作りながら帰ろうっと。そうしたらポーションを2個売れるしウハウハだ。

 私は帰り道をスキップするような気分で歩いて行った。

 いつもよりもかなりニコニコしていると思う。


「楽しいな。楽しいな♪」


 空き瓶をゲットしただけで、まさかこんなにも気持ちが弾むとは思わなかったな。ダンジョンの冒険って楽しい。これは私の中で新しい趣味に昇格しちゃったかも。

 元々そんなに趣味が多い方じゃなかったし、これはすごく嬉しいことだ。

 るんるん気分で歩いていたら、もう少しで広場につくところまであっという間に戻って来られた。


 でも、ポーションはまだできそうになかった。思ったよりも早歩きをしていたみたい。

 じゃあちょっと寄り道でもして、薬草を探したりスライムを踏んづけたりしようかな。

 少し遠回りをしてポーションの素材を集めることにした。


「あれー? なんだかいつもよりも薬草をたくさん見つけるし、マナの輝石のドロップ率がいいんだけど」


 明るい気持ちでニコニコしているからだろうか。いつもみたいに暗い顔をしているよりは運が良くなりそうだし。

 そのニコニコな状態のまま、私は広場のリルリルさんのところへと戻った。


「紗雪さん、おかえりなさいー」

「ただいまですー」

「わあ、なんだか嬉しそうですねー。何か良いことがあったんですか?」


 私はカニさんみたいに両手でピースを作った。


「はいっ。良いことありましたよー」

「ということは空き瓶をゲットできたんですか?」

「ゲットできちゃいましたー」

「わー、おめでとうございますー!」


 リルリルさんが拍手をしてくれた。すっごく嬉しい。

 私はますますニコニコしてしまった。こんなに明るい表情を誰かに見せたのは小学生の頃以来かもしれない。


 とりあえず、空き瓶に入っているポーションをリルリルさんに売ることにした。

 今の私のポーションは、スキルレベルがアップしているおかげでHPが90回復するようになっている。けっこうな高い性能のポーションだと思う。

 その性能向上のおかげで、売るときの単価が上がってきてるんだよね。


「では、ポーション二つで660ポンですー」

「はーい、ありがとうございます」


 売買成立だ。すごく嬉しい。円換算で660円だ。

 もう少しスキルレベルが上がれば、一回の売買で売り値が1000円を超えるかも。


 これは笑いが止まらない。

 女子高生がやるような普通のアルバイトよりも、ゆくゆくはずっと効率よくお金を稼ぐことができるようになっていくかも。しかも、ダンジョン攻略を楽しみながらっていう素晴らしさ。こんなに楽しいことって他にないよね。


「さあ、いよいよポーションの同時作成をやってみます」

「紗雪さん、ウキウキしてますねー」

「楽しくてしょうがないんですよ」


 〈ポーションクリエイト〉を使ってみる。

 すると、『何個作成しますか?』という質問が来た。きたー。これが同時作成だ。作りたい個数を指定できるようになってるんだね。もちろん二つ同時に作成するよ。


「2個作成っと。えいっ」


 これでポーションが2個できるはず。アイテム空間にある空き瓶を見てみると、二つとも調合中と表示されていた。


「うふふ。うふふふふ」

「紗雪さん、とっても嬉しそうですー」

「はいっ。幸せですっ」


 いいなあ、〈ポーションクリエイト〉。すごく楽しい。

 これがハズレスキルって言ってたのは誰だったかな。クラスメイトの……もう名前を覚えてないや。イヤな人たちだったし。

 あの人たちって、きっと今でも〈ポーションクリエイト〉がハズレスキルだって思っているよね。本当はこんなにも楽しい気持ちになれるスキルなのになぁ。〈ポーションクリエイト〉は私にとっては大当たりだったよ。




 30分後、ポーションが二つ同時に作成されるまで、ウキウキ気分で私は待った。やがて、ポーションが二つ同時にできあがると私は大喜びした。

 そして私はまたリルリルさんにポーションを売りに行くのだった。



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