第14話 VS雑草モンスター

 草が生い茂っている中に入って行く。

 他の女子高生たちがスカートの下にジャージを穿いているのはやっぱり正解だと思う。草が脚を攻撃してくる感じがすごい。

 私は黒タイツを穿いてるけど脚を守り切れるかどうか……。黒タイツが切れたり、脚に小さい傷がついてかゆくなったりとかしちゃうかも。


 私はなるべく大股になって草を上から踏みつけるようにして歩いた。そうすると脚への負担がだいぶ減る。

 私だっていちおう女子高生だし、脚はあんまり傷つけたくないんだよね。でも、この歩き方はけっこう疲れるかも。


「ん? なんか踏んだぞ?」


 生命体を踏んづけたような感触があったんだけど。どう見ても踏んづけたのはただの草なのに、どういうわけか生命の温もりを足の裏に感じる。


「うわ、うわわわっ」


 踏んづけた草があっという間に伸びてきて、私の左脚の太もものあたりにぐるぐると絡みついてきた。これ、雑草モンスターだ。他の草とまったく区別がつかなかった。


「きもちわるっ」


 でも、巻き付かれたのが首じゃなくてよかった。首だったら動転して私は窮地に陥ってたかも。

 さっきの女子高生たちの攻撃を思い出すに、根っこの丸い部分を攻撃すればこの雑草モンスターは倒せるはず。

 あれ、メッセージウインドウが出てきたよ。


『ウォーキングウィードが現れた』

「いや、遅いし。もう攻撃されちゃってるし」


 とりあえず根っこを地上に引っ張り出さないとね。

 私は草に絡みつかれている左脚をひっぱりあげた。するとかなり簡単にウォーキングウィードをスポッと地面から引っこ抜くことができた。


 リュックに差していたハンマーを手に取って、ウォーキングウィードにガツンと一発いいのを与えてあげた。

 そうしたら一発で絶命したみたい。ウォーキングウィードはくたっと地面に倒れて生命力を発しなくなった。

 私の左脚の太ももに絡みついていた草がゆっくりとほどけていく。


「あれ、こんなもんなんだ」


 なんだかたいしたことなかったな。女子高生四人がかりで必死に戦うほどではないと思う。これならファイアーアントの方が強かったんじゃないかな。


「ギャーーーーーッ。死ぬっ、死ぬっ、死ぬーーーーーーーっ」

「いま助けるよー!」


 さっきの女子高生たちがギャーギャー騒ぎながら戦ってる。

 一人の女子高生の腕とか胴体とか脚とかに数匹のウォーキングウィードの草が絡みついてるみたいだ

 それを二人がかりでどうにか救出しようとしている。

 そして残るもう一人は――。


「痛いっ。痛いっ。痛いっ。雑草ってこんなにパワーがあるの?」


 一匹のウォーキングウィードと対峙していた。

 根っこから伸びてくる数本の草が往復ビンタをしている。そして女子高生は鼻血をダバダバ流していた。ちょっと可愛い顔だったのに台無しだ。


「大変そう……」


 あ、私の左腕に絡みついてくる草があった。別に踏んづけてないのに、ウォーキングウィードの方から攻撃をしかけてくることもあるんだね。

 私は草を持って根っこをひっこぬいた。

 たぶん、パンチでいける気がする。


「せーの!」


 ひっこぬいて空中を踊っているウォーキングウィードの丸い根っこに右手パンチをお見舞いした。

 やっぱりパンチでいけた。私のよわよわ猫パンチみたいなので倒せちゃった。


「楽勝~♪」

 苦戦している女子高生たちの声が聞こえてくる。


「ちょ、誰か助けてよ~~~~~~」

「あはははは、ひどい顔になってる」

「あとで行くから待っててー」


 草にビンタされてる女子高生がどんどんボロボロになっていく。むかついたのか爪をぎらつかせて根っこに反撃していた。野性味あふれるね。でも返り討ちにあっていた。

 ……。……あの女子高生たち、ボロボロだけど楽しそうだ。私もキャーキャー言って怖がりながら戦う方が女子高生らしいんだろうか。


 ……いやーでも、そういうのは私のキャラじゃないよね。

 私は地道に仕事をこなしていこうっと。

 おっと、次のウォーキングウィードを踏んづけたぞ。草が私に向かって伸びてきたから、腕を出して絡みつかせてから根っこをひっこぬいた。

 そして、根っこを踏んづけてあげた。


「もしも今の根っこがドMだったら、すっごく喜んでくれそうな倒した方をしてしまった」

 踏んだ感触はなかなか良かった。

「ドMな雑草ってなんだよ。ふふふふふふ……」


 一人でボケて一人でつっこんだ。むなしいけど楽しい。

 つっこんでくれる相方が欲しいな。そんな相方が私にできるとは思えないけど。ああ、それもまたむなしい。


 さて、残りの二匹も倒しますか。

 一匹はお尻を叩いてきたからサッカーみたいに蹴飛ばして反撃した。もう一匹は私が攻撃を避けきれなかったせいで、伸びた草がスカートを大きくめくってしまった。

 私は赤面も赤面をしてしまった。誰に見られたわけでもないのに。


「ひゃあっ、今日のはあんまり自信がないやつだったのに」

 

 恥ずかしかったから、オーバーキル気味にハンマーでどかんどかん叩き付けてあげた。

 ふう、なんとか終わったぞ。クエスト達成だ。


 女子高生たちはまだギャーギャー楽しそうに頑張っていた。あんなに苦戦する相手じゃないと思うんだけどな。

 お手伝いしましょうか、なんてね。そんなことが言えるのなら私はぼっちはやってないんだよね。



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