第13話 空き瓶ゲットのクエスト

 広場の中央奥に歩いて行く。地面からたくさんの石板が出ている場所だ。その一つ一つの石版にはそれぞれ別の内容のクエストが掘られているんだよね。

 そんな石版の中で、私は報酬に空き瓶があるクエストを探している。


 私は人だかりが苦手だから、空いているところから順番にチェックしていく。

 石板を10個ほど確認すると、ようやく求めているクエストを見つけることができた。依頼内容をしっかりと読んでみる。


『は~あい。みんな元気~? あたし、ダンジョン神。このクエストは攻略必須級だから絶対に見逃さずにチェックしてね☆ 6番通路をずっと歩いた先にねー、草が生い茂ってるところがあるじゃなーい? そこにさー、歩く雑草みたいなモンスターがいるから、そいつを五匹倒してくんなーい? あいつねー、定期的に湧いてマジうざいんだよねー。あいつがいると花が咲かないから大迷惑なんよ。というわけで、退治よろぴこ☆ 報酬:空き瓶(※これ、必須級だヨ!)』


 ずこー。ダンジョン神さん、相変わらずのテンションだ。ダンジョンは薄暗いところだから逆に明るい性格になっちゃったんだろうか。


「このクエストの攻略推奨レベルは5かー」


 5ってファイアーアントの攻略推奨レベルと同じだよね。怖いな。けど、今の私はあのときよりかなりレベルが上がってるし、きっと大丈夫なはず。

 私はクエストを受注した。


 ちょうど空き瓶が空の状態だし、念のためにも今のうちから〈ポーションクリエイト〉でポーションを作り始めておく。いざとなったらポーションを飲んで回復できたら安心だからね。

 でもできれば、ポーションを使うようなことにはなって欲しくないけど――。

 そう思いながら、てくてく歩いて6番通路へと入っていく。


「よーし、絶対に空き瓶をゲットするぞー」

 こぶしにグッと力を入れて通路の奥へと歩いて行った。




 20分くらい通路を歩いて行くと、草が生い茂ってる場所に着いた。土ばかりのダンジョンなのに、ここは膝丈の草がいっぱいだね。

 あの草の中に入って行かないといけないのか……。


「そうか。ジャージっていう手があるのか」


 女子高生が四人いて、みんなスカートの下にジャージを穿いている。

 スカートの下にジャージってあんまり可愛いくないから私はイヤだけど、こんなに草が生えてる場所だと正解だと思う。


「ねえー、モンスター見つけたー?」

「まだー」


 女子高生たちは雑草を握っては引っこ抜こうとしている。あれでもしも反応があったら雑草モンスターってことなんだろうか。

 少し、観察してみよう。

 女子高生四人はバラバラになって前かがみで雑草モンスターを探している。制服がピカピカだから、たぶんみんな私と同じ一年生だと思う。


「あ、こっちにいたよ!」


 うわ、一人の女子高生の足元から草が急激に伸び上がったよ。いったいなんだと思ったら、それがモンスターだったみたい。

 土の中から丸い根っこがぴょんと跳び出てきた。その根っこには可愛らしい目が二つあった。

 そしてさらに伸びている二本の根っこが足になってるんだね。長い緑の草がもの凄く長い髪みたいに見えるかも。


「うぐっ!」

「ちょ、大丈夫?」


 こ、こわっ。緑の草が伸びてきて一人の女子高生の首を締めてきた。

 さすがダンジョンだ。しっかり命のやりとりがある。


「キャーーーーーーーーーーーーー! どうしようどうしよう。痛い? 痛い?」

「ちょっと。今さら悲鳴をあげてる場合じゃないでしょ。早く助けてあげないと」


 伸びた草に首を締められてしまった女子高生は、目をギュッとして耐えている。助けを待っている状態だ。

 すぐに他の三人が駆けつけた。


 手にはそれぞれサバイバルナイフ。こわっ――。

 女子高生たちはサバイバルナイフで草を切り、根っこを串刺しにして、三人がかりで雑草モンスターをめった斬りにしていた。女子高生、こわっ――。


 雑草モンスターは力つきたようだ。バタリと倒れていた。

 助けられた女子高生は大げさな感じにむせていた。見た目よりもきつく首を締められていたのかもしれない。


「げ、げほっ、げほっ、げほっ……。あー、死ぬかと思った」

「大丈夫? 私たちレベル三だし、やっぱりまだ早かったかな」

「んー……、いや、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。そのモンスターって解体できるの?」


 なんか怖いことを言い始めたぞ。目だって暗くて怖い。


「たしか丸い根っこの中に、ごくまれにマナの輝石があるって攻略サイトで見たよ。他は特に良いものないし、食べるところもないみたい」

「食べる気だったのかよー」

「見た目的に、煮たら美味しいんじゃない?」

「感想、教えてね」

「お前も食えよー」


 あははは、と笑い声が起きた。

 一人の女子高生がかがんだ。そして、サバイバルナイフを包丁みたいに使って根っこを真っ二つにしていた。なんかえぐかった。


「マナの輝石、ないね」

「まー、いらないでしょ。売ってもあんまりお金にならないし」

「それもそっか。いくらでもとれるし」

「次のモンスターを探そうー」


 女子高生たちは楽しそうに会話をしながら、雑草モンスター探しの続きに取りかかった。

 なんだか楽しそうだ……。一人で頑張っている私とは大違いだね。

 私も仲間に入れて欲しいな――。なんてね。言わないよ。言える性格なら何年もぼっちをやってないよ。


「さて、私も雑草モンスターを探そうっと」



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