第12話 スキルレベル10

 一週間くらいひたすらポーションを作りまくった。

 スライムを見つけては踏んづけて、薬草を見つけてはひっこ抜いた。そして30分おきに〈ポーションクリエイト〉でポーションを作る。ずっとこの繰り返しだ。

 もうこの作業には慣れてしまったし、ポーション作成の待ち時間がひどくもったいないと感じられるようになってしまった。


「うぷっ!」


 ちょっと油断したら私の顔面にスライムが飛びかかってきた。しかも、そのまま顔にひっついている。感触が気持ち悪い。

 私はスライムをがむしゃらに引っ張ってひっぺがした。


「いるんだよね。たまーに。反撃してくるスライムが……」


 まあでも、殺意は弱い。顔に体当たりをされても別に痛くないし、簡単にひっぺがせる。だから窒息とかはありえないし怖くはない。

 ひっぺがしたスライムを踏んづけて、出てきたマナの輝石を回収した。


「これで薬草とマナの輝石のストックが6個ずつ」


 今日はもうすることがないかも。明日の分の素材までゲットできてしまった。

 時間があるのならクエストをやればいいんだろうけど、私、ファイアーアントの討伐クエストのときに重傷を負っちゃったからなー。レベルがもう少し上がるまでは絶対にクエストはやりたくない。たとえ簡単なクエストでもだ。


 素材がある限りいつでもポーションを作ることができればいいのにな。〈ポーションクリエイト〉は一回あたり30分もかかってしまうのがちょっとね……。6セットだと180分もかかるから。


「だるいなー」

 売る時間まで考えると180分どころじゃないからなー。

「せめてスマホが使えればいいんだけど」

 ダンジョン内って電波が届かないんだよね。だからスマホで時間を潰すのは無理。


「どうしようかな……」

 ボーッとダンジョンの土を眺めながら、ひたすらポーションができるのを待って過ごすのはヒマすぎるよね。


「思い切ってクエストをやった方がいいのかな……」


 簡単そうなのを探せば私にもできるのがあると思うし。

 あ、メッセージウインドウが表示された。ポーションが一つ完成したみたい。


「そろそろレベルアップするはずだったけど」


 ステータスと念じてウインドウを表示させる。

 するとレベルアップを告げる文章が表示された。


「これでレベル17だ。手に入ったスキルポイントはもちろん〈ポーションクリエイト〉のスキルレベルアップに使って――」


 〈ポーションクリエイト〉のスキルレベルが10になった。

 またポーション一個あたりの回復量が上がるんだろうか。ってあれ、なんだか違う説明があったんだけど。


『ポーションの同時作成個数が2になりました』


 私は首を傾げた。〈ポーションクリエイト〉スキルレベル10の取得特典って回復量アップじゃないってこと?


「同時作成個数がアップ? つまり、〈ポーションクリエイト〉で2個のポーションを同時に作れるようになったってこと? そんなことってあるの?」


 どくん。心臓が高鳴った。それってすごいことなんじゃないだろうか。

 私は早足で広場へと戻った。

 この時間ならそろそろリルリルさんが露店を出しているはず。あ、いたいた。私ははやる気持ちを抑えながらリルリルさんのところへと向かった。

 ちょうどお客さんとのやりとりが終わったようだ。リルリルさんが私に気がついてくれて、にぱ~と明るい笑顔をくれた。


「紗雪さん、こんにちはー」

「こんにちは、リルリルさん。あのっ」

「あれ? どうかされました? ずいぶん興奮されていますが――」


 たしかに私は前のめりになっているかもしれない。でも、聞きたくて聞きたくてしょうがないんだよね。


「〈ポーションクリエイト〉がスキルレベル10になったんですけど」

「わあ、おめでとうございます!」

「そうしたら同時作成個数っていうのが増えたみたいで。これってつまり、これからはポーションを2個ずつ作れるってことですよねっ」


 リルリルさんの瞳がキラーンと光った。


「おおっ、ついにその域に達したのですね。さすがは紗雪さんです! おっしゃる通りですよ。これからはポーションを二つ同時に作れるようになります。つまり、ポーションの生産効率が大幅にアップするわけですね」

 やっぱりそうなんだ。嬉しい気持ちが爆発しそうだ。


「ポーションは在庫がすぐにはけてしまいますので、私としてもとても嬉しいです。ですが――」

「なにか注意点があるんですか?」

「はい。空き瓶がもう1個必要になりますから」


「あ、そうか。空き瓶がないとポーションを入れられないですもんね」

「その通りです。入手方法はご存知ですか?」

「いえ。買えるんですか?」


「ご購入もできますがお勧めはしませんよ。なにせめったに売りに出されることがないうえに、運良く見つけても1000万ポンとか超高額のお値段がついてしまいますから」

「い、1000万!」

「貴重なんです。空き瓶はダンジョン神が作るものですから。あと、地球人さん同士で売買ができないように規制がかかっていまして。本当に貴重で高価なものなんですよ」


 そこまで大事なものだとは知らなかった。神様が作ったものなら丁寧に扱わないとね。


「でも買えないとなると、どうやって空き瓶を手に入れればいいのか……」

「そこでクエストです」


 うぐっ。そういう話になるんだね。私がイヤそうな顔をしたのが伝わちゃったみたいだ。


「大丈夫です。今の紗雪さんのレベルなら簡単にクリアできますから」

「そうなんですか?」

「はい。他の地球人のみなさんも簡単にクリアしているクエストですよ」


 私もみんなと同じクエストを攻略すれば空き瓶が1個手に入る。それなら――。


「やるっきゃないですね」

「ですね。紗雪さんファイトです。応援してますよ」


 というわけで、私は空き瓶をゲットするクエストに挑むことにした。

 それを攻略できたらポーションを作るペースが倍になるのかと思うと、今から嬉しくてたまらなかった。


ステータス

■レベル17

・HP 55

・攻撃 18

・防御 19

・敏捷 25

・魔法 17

・技術 40

■スキル

 〈ポーションクリエイト〉 レベル10



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