第10話 クエスト達成!

「あ~~~~……、あ~~~~……、あ~~~~……。いーーーたーーーいーーー」


 ファイアーアントを倒して安心したとたんに、噛まれた足首の痛みが百倍くらいになってしまった。


「救急車ー、包帯ー、痛み止めー……、ダンジョンだから何もないよー……」


 ずるずると右足をひきずるようにして来た道を戻る。片足がボロボロだと一歩だけ進むのすら重労働だ。

 私、よく泣かずにいるよね。超えらい。

 ……あれ、なにか忘れている気がする。ここには救急車は来ないけど、私は困ったときに使えるなにかがあったはずだ。


「あ、そうだ」

 私はアイテム空間を開いた。アイテムを収納しているウインドウが私の目の前に現れた。

「ポーションがあるじゃーん。って、うおー?」


 ポーションを飲もうとしたら、アイテム空間のウインドウにかぶさるようにしてメッセージが表示された。そのメッセージが邪魔でアイテム空間にあるポーションを取り出せない。まったくもう。先に読むしかないね。


『クエストを達成しました! 次の報酬を獲得しました』

「1000ポンとスキルポイントが5はいりましたと――。って、そんなの今はいいよ」


 ウインドウをタップしたら消えてくれた。今はポーションだよ、ポーション。

 しかし、またもメッセージが表示されるのだった。ああもうなに? 足首からどんどん血が流れてるんだけど。


『周囲にはまだファイアーアントがたくさんいるようです。続けて挑戦しますか? 報酬:二匹あたり100ポン』

「するわけないでしょ。あんな強いのともう一回戦ったら私ぜったいに死んじゃうよ」


 選択肢があったので『いいえ』を選んだ。

 そして、ようやくアイテム空間からポーションの入った瓶を取り出すことができた。長かった。

 考えてみたらポーションを飲むのは初めての経験だったっけ。今まではポーションを作ってもぜんぶ売っていたからね。ちょっとドキドキする。どんな味がするんだろうか。


 ごくっ、ごくっ、ごくっ。

 うあー、こういう感じかー。美味しくて甘い天然水って感じー。あと頭がスッキリする良い感じの爽快感がある。

 飲めば飲むほど身体中を癒やしの力が駆け巡っていく感じがするね。特に私の右足首に強く治癒の力が働いている感じがする。


「足首がすっごく熱いー」


 どんどん肉とか皮とかが治癒されていく。熱い熱い熱い。熱がすっごい。

 ポーションを飲みながら私のステータスを見てみた。HPの数字がどんどん上がっていくね。


 気分はふらふらだったけど、いちおう生命力は半分以上残ってたんだね。

 ポーションをぜんぶ飲みきった。HPは完全回復。負傷した右の足首も完全に治った。


「ポーションって凄いな」


 地球の現代医療をはるかに越えた力があると思う。

 それに――。私は腕をぐるんぐるんした。身体が軽い。気分もすっきり。完全回復どころか自分が一番調子の良いときの身体になってる感じがする。これ、試験勉強のときに飲めば効率よく勉強できるかも。


 ただ、ダンジョンの外ではアイテム空間を開けないから、ポーションを何か別の瓶に移してから持って帰らないといけないけどね。


「さて、帰ろっか」


 私は一度振り返った。少し離れたところに、私が倒したファイアーアントが土の中から上半身だけを出してぐったりしている。


「〈解体〉のスキルがあれば素材を取れるんだけど……」


 そのスキルがないと、ファイアーアントのどの部位が売り物になるのか分からないし、解体用の道具を用意して苦労して素材を取らないといけない。

 私は取得可能スキル一覧を見た。


「〈解体〉をゲットするには、スキルポイントが100も必要」


 しかも、そこからスキルレベルを上げないといけない。初期に付与されたスキルじゃないから、スキルレベルを上げるためのポイントが多く必要になるのもしんどい。


「〈解体〉を取るのはちょっと現実的じゃないよね……」

 あのファイアーアントの素材は諦めるしかない。

「私に友達がたくさんいればなー……」


 スキル〈解体〉を持っている友達が一人くらいはいたりするのかもしれないけど。でも、私はぼっちだから友達ができる日なんて永遠にこないよね……。

 私は広場に戻るための小道に入った。一人がようやく通れるくらいの細い小道だ。


「あ、スライムだ」


 ぴょんぴょん跳んでこっちに向かってくる。のんきな顔だね。これから私に踏んづけられるとも知らないで。


「えいっ」


 私はいつものようにスライムを踏んづけた。

 簡単に倒せたし、マナの輝石をドロップしてくれた。嬉しい。


「ちょうど切らしていたからラッキーだ」


 歩きながらポーションを作る。

 馴染みの道に入ってからは薬草とスライムを探しながら帰った。けっこう見つかったかな。

 広場に戻ってきたときに、ちょうどポーションの作成が完了した。これを売ってから家に帰ろうっと。リルリルさんはまだ露店を出しているし。

 あれ、メッセージウインドウが出てきたよ。


『レベルアップしました。ステータスポイントが上昇し、スキルポイントを獲得しました』


 やった。〈ポーションクリエイト〉のレベルを上げようっと。

 苦労したかいはあったかな。でも、戦うクエストは危険なことが分かったから、しばらくはやらない。地道にレベルを上げていこうと思う。

 リルリルさんが私に気がついてくれた。


「おかえりなさいー。どうでしたー?」

「死ぬかと思いましたよー」


 クエストのことを語れる相手がいるっていいね。リルリルさんと仲良くなれた気がする。会話がけっこう盛り上がったよ。


ステータス

■レベル11

・HP 41

・攻撃 10

・防御 12

・敏捷 16

・魔法 11

・技術 25

■スキル

 〈ポーションクリエイト〉 レベル7



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