第7話 ポーションを作る日々

 私、毎日ダンジョンに来てポーションを作っている。

 ポーションを作ると経験値が入るから、簡単にレベルが上がっていくんだよね。それで入るスキルポイントはすべて〈ポーションクリエイト〉のレベルアップに使用した。


 今、私のレベルは10で〈ポーションクリエイト〉のスキルレベルは6だ。ここのところ一回のレベルアップでスキルレベルが一緒には上がらない感じかな。

 ということを、ダンジョンフォークのリルリルさんに相談してみた。


「そういう場合はですね、クエストを攻略するといいですよ」


 広場で露店を出しているリルリルさんが座ったままの姿勢で提案してくれた。

 リルリルさんは広場の端っこでいつも地球人を相手に商売をしているんだよね。ちなみに商材は、ダンジョンで使う様々な種類のアイテムや武器だ。広げた布の上にそれらが綺麗に並べられている。


「クエスト? ってなんですか?」

「クエストというのは、ダンジョン神が冒険者のみなさんにお願いするお仕事のことですね」


 リルリルさんが広場の中央の奥あたりに手を向けた。自然にその手の先に視線が向く。人がたくさん集まっている場所だね。


「あちらの真ん中の奥の壁あたり、そこに地面から石版がにょきにょきと出ていますよね」

「みんなが見ているやつですね」


 いろんな人たちが楽しそうにキャイキャイ言いながら石版を見ている。あれはなんだろうなとは思っていた。


「そうです。あの石版に書かれているのがクエストですね。そこに書かれている内容を達成することで報酬が手に入るんですよ」

「その報酬の中にスキルポイントがあるんですか?」

「はい。クエストによってはスキルポイントが入ります。ただ、戦う系のクエストが多いですけどね」


「じゃあ、ムリかもです……」

「そんなことありませんよ。紗雪さんはレベルが10もおありですから、もうかなりお強いですよ?」

「そうなんですか?」


「はい。紗雪さんと同じタイミングでダンジョンの冒険を始めた人たちで、もうレベルが10もある人はぜんぜんいないはずです。紗雪さんは誰よりも効率よくレベルを上げていますから」

 そうだったんだ。自覚がなかったよ。


「じゃあ、やってみようかな」

「まあ、とはいえ女の子ですから心細いこともあるでしょう。ということで、こちらは大人である私からの餞別ということで。売れ残りですが武器をお譲りしましょう。紗雪さん、どちらが欲しいですか?」

「え、くれるんですか?」


 リルリルさんが肯定してくれた。本当に武器をくれるらしい。

 リルリルさんの手には、西洋人が使ってそうな大きな剣と、とても柄の長い金属製のハンマーがある。

 普通だったら剣なんだろうなーって思いながらも私はハンマーを選んだ。


「こっちでいいですか?」

「はい、よろしいですよ。即決で剣だと思いましたが。ちょっと意外ではありますね」

「刃物はちょっと」

「なるほど。お優しい人柄ですものね」


「ハンマーだとやっぱり弱いんですか?」

「いえ、こう見えて攻撃力はこの剣と同じです。耐久性まで考えるとこのハンマーの方が高いですよ」


 リルリルさんがハンマーを手渡してくれた。ありがたく頂く。


「ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

「ポーションができたらまたすぐに売りに来ますね」

「ご贔屓に。あ、クエストで珍しい素材がとれましたら、うちで買い取りますので」


「あー……、解体は、ちょっとムリかもです……」

「普通はそうですよね……。いつか解体スキルを取得してみるといいかもしれませんね」

「〈ポーションクリエイト〉を極めたら検討してみます」

「楽しみにしております。では、紗雪さんの健闘を祈ってますね」


 もう一度お礼を言ってから、私は手を振って露店をあとにした。

 ハンマーをリュックに入れる。でもさすがに、長すぎてリュックには入り切らなかったから斜めに飛び出ている。正面から見ると剣を背負っている勇者みたいに見えるかも。


「ちょっとだけ強くなった気分。フフフ……」

 私は嬉しい気持ちになりながら、広場中央奥にある石版へと向かった。



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