第27話 争いの星

「どうして、アイザード星に残ってもらったのですか?」

 わたしは、シュウヤくんに問いかける。

「あの部隊が、俺達のことを本部に伝えたら、どうなるかわからないから、見張ってもらうんだ」

 ――今わたし達がいるのは、争いの星。

 アイザード星に、キキくん、ななみ、夢叶、鈴那、絆を置いてきた。

 ここにいるのは、シュウヤくん、キララちゃん、ユウハちゃん、ミライくん、かおるちゃん、そしてわたし。

 向こうにいるメンバーの中で術を持つのは、キキくんだけ。

 キキくん1人で、みんなを守れるのでしょうか……。

「心配いらないよ。あいつは、アニマル星で一番強いんだ」

 ミライくんが、答えてくれた。

 それなら、大丈夫かな……。

「それに、他のみんなだって、俺の想像以上だった」

「そうですか……。うん。そうですね。心配するのは、やめます」

「それがいい」

 ミライくんは、優しくほほ笑んだ。


 ☆


 誰もいない。

 ユウハちゃんを先頭に、争いの星の本部の中を進んでいるのに、誰も見かけない。

 ここは、無人なのか――そう思わせるほどに。

 入口も、警備員がいなかった。

 一体、どうして……。

「……ついたな、心臓に」

 わたし達は、足を止めた。

 ここまで来るのに、試練は無かった。

 信じられないほど、すんなり進んだ。

 何か、罠があるのかな。

 それとも、たまたま……?

 わたしは、周辺への注意を、一瞬忘れた。

「菜乃葉っ!!」

 ミライくんの、切羽詰まった声が聞こえ、はっとする。

 ――わたしの左側から、矢が飛んできていた。

「え……」

 わたしは思い出す。

 あの日――ユウハちゃんが、『ユウト先輩』として、わたしの家にやってきた日。

 わたしに向かって、矢が飛んできた。

 あれ……おかしな方向から飛んできたよね?

 今考えたら『おかしい』って、すぐにわかる。

 空から、飛んでくるわけないもの。

 何もないところから、突然――。

「菜乃葉、逃げろー!」

 無理……無理だよ、ミライくん。

 身体が動かない。

 どこに行けばいいか、わからない。

 今になって、絆の言葉が思い起こされる。

『怖いよ』

『先輩の話を思い返して、考えちゃったんだ。「殺されるかもしれない」って。お父さんもお母さんも、みんなが知らないところで死んじゃって、そのまま、地球に帰れなかったら――』

『本気? 死にに行くようなもんだよ?』

 わかってた。

 そんなこと、わかってた。

 絆の感情は、普通だった。

 おかしくなんてなかった。

 わたしは、どこで間違えた?

 あのとき、絆に賛成していればよかった?

 そうしたら、今こうして考えなくてよかった?

 わからない。

 わからないよ。

 ねえ、絆。

 答えを教えて。

 絆しか、わからない。

 人一倍臆病で、なんでも一人きりで考えてしまう君にしか、わからないよ。

 わたしは、幼馴染に頼るしかないよ……。

「菜乃葉ーーーっ!!!」

 ミライくんの悲痛な叫びが、わたしの胸に突き刺さった。

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