異星を大冒険

第24話 アニマル星で、一休み

「菜乃葉達、いなくなっちゃったね」

「本当。キキについていったわよ」

 あたし――鈴那は、絆と周りをキョロキョロ。

 菜乃葉とかおる、大丈夫かな?

「大丈夫ですよ」

「「わあっ!」」

 あたしと絆の声が、ピッタリ重なった。

 後ろを振り返ると、白髪のウサギの耳が生えた女の子が立っていた。

 可愛い……。

 こんなに可愛い子、いたんだ。

 世界って、広いなあ。

「キキくん、何も考えていないように見えるけど、本当は色々と考えているんです」

 女の子は、おしとやかに話す。

 全ての仕草がおしとやかだ。

「わたし、サキといいます」

 にっこりほほ笑むと、あたし達の手を取った。

「どうぞ、こちらへ。家に案内します」

 あたし達は、サキに手を引かれるまま、歩いていく。

 後ろには、ユウハ達がついてくるのが見えた。


 ☆


「どうぞ。喉が渇いているでしょう? このお茶、とてもおいしいんです」

 サキは、あたし達を家にあがらせると、お茶をいれてくれた。

「ありがとう」

「どうも……」

 絆は、小さくお礼を言う。

「いい匂い……」

「だな」

 ななみと夢叶は、お茶の香りが気に入ったみたいだ。

「サキちゃん、助かるわ」

「いいえ。みなさんのためなら、いくらでも働きます」

 キララが感謝すると、サキはグッと拳を握った。

 この仕草は可愛い子がすると、さらに可愛くなる。

 ユウハ、シュウヤ、ミライは、黙ってお茶を飲んでいる。

 何か、考えているみたい。

 そこで、ユウハが小さく息をつく。

「菜乃葉ちゃんと、かおるちゃんが戻ってきたら、作戦を話す。今のうちに、身体を休めておいてくれ」

 空気が、ピリッと肌を刺す。

 そうだ。

 今のうちに、しっかり休んどかなきゃ。

「……あっ、あの、気になることがあるんだけど……」

 絆が、口を開いた。

「気になること?」

「どうして、ユウハちゃんは『ユウト』だって嘘をついていたのかなって……」

 たしかに。

 嘘をつく理由は何なのかな。

「それか……。それは、僕の体内で作られる術の量が、半端ないからだ」

「ユウハ、半端ねえってぇ」

 どこかで聞いたことがあるような……。

 まあいいか、それは置いといて。

「術の量が、半端ない?」

「そうだな……。術の量って、人によって変わるんだ。ミライのが1000ml牛乳パック1本分としたら、僕のは5本分。使っておかないと、やつらに居場所がバレる」

 ……え、それ本当に?

 信じられない。

「昔は、7本分くらいあった。でも、争いの星のやつらに、奪われたんだ。僕だけじゃない。シュウヤも、キララも、ミライも。あいつらは、僕らの術をエネルギーにして、発展した」

 そんなことが。

 なかなか、難しい話だけど……。

「……絆くんは? わかったか?」

「あっ、はい」

 絆は、あわててうなずく。

「ほー……」

 ユウハは、感心した様子で、絆を見つめた。

「要するに、みんなは一度術を奪われ、経済成長に使用された。そして敵は、再度エネルギーとなる術を手に入れるため、ユウハちゃん達を探している……。ここからは憶測だけど、術はエネルギーが大きければ大きいほど、エネルギーを感知されやすく、敵はエネルギー感知をする機械をすでに開発している――と考えたんだけど、どうかな」

 絆は、ユウハの話を説明してみせた。

 これが合っているかは、別の問題だ。

「大正解だ。やっぱり、君は天才ってやつ……」

「あ、それは知りません」

「そうか……」

 絆、ユウハが困ってるから。

「それと、やつらは術を兵器に使用している。気をつけないと、やられる」

 あたし達は、息を呑んだ。

 もしかして、ユウハが親を殺しちゃったのって――。

「僕は、その兵器に利用されて、僕の術で親を殺した。人が死んだんだよ、僕の術で」

 ユウハは、服をギュッと握りしめる。

「これからは、そんな悲劇を起こさない」

 あたしは、喉がカラカラになったのに、一口もお茶を飲めなかった。

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