第23話 菜乃葉たちの決意
「頼む。僕らの星を、助けて」
ユウハ先輩は、そういった。
ユウハ先輩達の星を、助ける……。
そんなこと、わたしたちなんかに、できるのでしょうか。
ユウハ先輩達は、きっと、わたし達を信じてくれている。
だから、わたし達に故郷の未来を託すようなことを……。
その期待には、答えなければ。
でも、どうしたらいい?
「わかった!」
ななみが、声を上げた。
わたし達は、ななみを見る。
それは「本気なの?」と訴える目だ。
でも、ななみは言った。
「友達が困ってるのに、見過ごせない!」
ななみは、わたし達を見回しながら演説する。
「あたしはこんなの、ほっとけない。ユウハ先輩達は、異星人だってこと、術を持っていること――他の人にバラされるかもしれないのに、全部話してくれた。そのくらい、アイザード星を救いたいんだよ」
珍しいななみの熱演に、わたし達は驚く。
ななみの言うことは、正しいと思う。
でも……。
「――怖いよ」
絆が言った。
パーカーの裾を握りしめて、うつむいている。
その様子は、わたし達の気持ちを、形にしたように見えた。
「先輩の話を思い返して、考えちゃったんだ。『殺されるかもしれない』って。お父さんもお母さんも、みんなが知らないところで死んじゃって、そのまま、地球に帰れなかったら――」
「そんなこと言わないで!!」
絆の言葉をさえぎって、ななみが叫んだ。
「あたしだって、そのくらいわかってる! 絆からしたら、あたしは馬鹿だろうけど、でも、でも……!」
ななみの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「苦しんでる人を放ってしまったら、悪い人と同じになっちゃう……! みんなが頼った人が、悪い人になっちゃうよっ……」
そう、ですよね。
やるしか、ないんだ。
できる、できないじゃない。
やるか、やらないか。
ななみが言っているのは、そういうことだ。
「わたしも、やります」
「菜乃葉……!」
わたしの言葉に、ななみは嬉しそうに笑った。
「俺も。ななみは1人だと、危なっかしいからな」
「あたしも! 格闘技でぶっ飛ばしちゃうんだから」
「わっ、わたしも、やるよ!」
続けて、夢叶、鈴那、かおるちゃんが、ななみについていく。
残るは、絆だけだ。
「え、えぇ……? 本気? 死にに行くようなもんだよ?」
『本気』
全員で、絆にこたえる。
「〜〜〜〜っ、帰れなくなったら、みんなのせいだから!!」
それって、つまり……!
「僕も――僕も、行くよ」
わあっ!
わたし達は、大喜び。
絆がいれば怖くない。
友達が、そろったんだから。
「良かった……。来てくれるか」
ユウハ先輩は、ほほ笑んだ。
「あと……これからは、先輩って言わなくていい。呼び捨てでも、なんでも呼んで。」
ユウハ先輩――ユウハちゃんは、初めて、よくわかるほどに表情を変えた。
「友達、だから」
☆
さて、ここからどうするのでしょうか。
異星人の5人が、何やら話し込んでいます。
「――それで、決まりだな」
ミライくんが、わたし達に手招きした。
みんなで、ミライくん達の近くに行く。
「今みんなの家族に、『友達同士でキャンプに行く』と伝えた。怒られる――みたいなことは、心配いらない」
「ありがとうございます」
わたしは、ミライくんにお礼を言う。
「いや……普通のことだ」
ミライくんは、ほっぺを赤くした。
照れてるのでしょうか?
こんな表情、初めて見た。
「行くぞ、みんな」
シュウヤくんが、わたし達に言う。
「宇宙船に乗るのっ?」
かおるちゃんが、ワクワクしながら聞いた。
「いいや。さあ、みんな、手を繋ぐんだ。それから、目をつむって」
宇宙船じゃないなら、どうやって他の星へ?
疑問に思いながら、言われた通り、みんなで手を繋ぐ。
そして、目をつむった。
「んじゃ、アニマル星へ!」
全身を、風が通り抜けるような感覚がした。
一体、何があったのでしょうか。
恐る恐る目を開けると、そこには、一面が緑豊かな世界だった。
「ここは……」
「アニマル星だよぉ! ボクの星っ!」
キキくんが生まれた星だったのか。
って、あれ?
キキくん、頭にウサギの耳が生えていますよ?
「これ? ああ、言ってなかったね。ボクは、アニマル星人――本名は、光族ピン耳科ウサギ目・キキ・アンダークだよ!」
……へ?
「光族ピン耳科ウサギ目・キキ・アンダークだよ!」
……わからなくなった。
「キキ・アンダークだよ!」
それは覚えやすいです。
キキくんのままで、いいのでしょうか。
「いいよ! それじゃ、菜乃葉ちゃんと、かおるちゃんは、こっちに来て!」
わたしと、かおるちゃん?
どうして?
わたし達は、キキくんについていく。
「術を扱う練習をしよう」
そう言って、キキくんは、わたし達を的がたくさんある広場に案内した。
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