菜乃葉のお話

第16話 菜乃葉の夏休み

「ふわぁ〜」

 わたし――菜乃葉は、部屋のカーテンを開ける。

 もうすっかり夏だ。

 夏休みは、支度をゆっくりできるからいいなぁ。

 さて、お着替えして朝ごはんを食べに行きましょう。

「おはようございます、お母様」

 わたしは着替えを済ませると、リビングに行って、お母様に挨拶をする。

「おはよう、菜乃葉。今、朝ごはんを作っていますからね。座って待ってて」

「はい」

 わたしは、テーブルに座った。

 しばらくして、お母様が朝食を持ってきた。

「食パンと目玉焼き。それから、サラダね。しっかり食べなさい」

「はい! いただきます」

 わたしは、パンをひとくち。

「私も……いただきます」

 お母様も、一緒に食べる。

 ここには、お父様だけいらっしゃらない。

 しょうがないです。

 お父様は、国王なので。

 一緒にご飯を食べる時間なんて、ありません。

「――ごちそうさまでした」

 わたしは食事を終えると、食器を片付けてから、部屋に戻った。

 部屋の窓から、外を見る。

「……美しい街並み……ですね」

 わたしがいる家は、実家ではない。

 もともと、ここへ来たのは、王都の空気が汚れているから。

 わたしには、汚れた空気は合わないようなのです。

 体調が悪くなってしまう。

 でも、ここへ来てから、わたしは健康になった。

 鈴那、絆、夢叶、ななみ、かおるちゃんとも出会えた。

 ずっと、ここにいたいな……。

「菜乃葉ー」

 お母様が、呼んでる。

「はーい」

 お母様は、玄関で靴を履いていた。

「今から、お買い物に行ってくるわ。留守番しててね」

「うん」

 お母様を見送ると、わたしは家の鍵を閉めて、また部屋に戻る。

「何しとこう……」

 そうだ、おととい、ななみから漫画を借りたんだった。

 ななみが好きな、少女漫画らしい。

 ななみからは、少女漫画が好きそうな感じしないけれど。

 でも、やっぱり女の子ですよね。

 興味があるんだな……。

「読んでみよっと」

 わたしは、漫画を読んでみる。

「……」

 こ、これは……よくわかりません……。

 男の子は、イケメンさんですね。

 女の子も可愛いです。

 どこが地味女子なのでしょうか?

 例えるならば、絆と鈴那。

 あの二人は双子ですが、二人とも、すごく顔が整っているから、例えにはピッタリ。

「恋は、難しいのですね……」

 わたしは漫画を閉じた。

 そのとき、外から音がした。

「なんの音――」

 窓から外を覗くと、キラリと光る何か。

 それはだんだん大きくなって……。

「え……」

 あれ……矢?

 わたしの頭は、真っ白になった。

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