第14話 意見交換
1学期終了間近の日の昼休み、あたしは絆と一緒に話していた。
「宇宙人って、いるよね?」
「どちらとも言えません」
宇宙人はいる、と考えるあたしに対して、絆は「どちらとも言えません」と答える。
「えー、決めようよー」
「無理だよ。太陽系の惑星では、地球以外に生物が確認されている星はないでしょ? 今のところ、地球以外に生き物は住めない」
それは、たしかにそうだけど……。
地球以外で、いるかもしれないじゃん!
「太陽から一定の距離にあって、生物が住むことのできる範囲を、『ハビタブルゾーン』というんだ」
うん……? また、難しい話に……。
「生物が生きていくためには、3つの条件があると考えられているよ。1つ、『適度な温度』。1つ、『気体の酸素の存在』。1つ、『液体の水の存在』」
絆は、1つ1つ、指折りで数える。
「ねえ、どうして『気体』とか『液体』とか言うの?」
「『状態変化』っていうんだけど……。ほとんどの物質は、状態変化するんだ」
状態変化って何?
「温度や圧力を変化させることで、物質が『固体』『液体』『気体』のいずれかの状態に変化することだよ」
どゆこと?
あたしが首をかしげるのを見て、絆は説明を始めた。
「例えば、水。冷凍庫で冷やすと、水は凍るね? そうしたら、水は『氷』と呼ばれる。このときの水の状態が『固体』」
たしかに!
冷凍庫を開いたら、氷がたくさんある。
そっかー、固体っていうんだ。
「ここで問題。水を鍋に入れて、加熱しました。しばらくして、水は沸騰します。このとき、水はどうなったでしょう」
ええ、いきなりクイズ!?
ええと……あっ。
「湯気が出てる」
でも、「水がどうなったか」はわからない。
「いい線いってるね。水は、沸騰すると『水蒸気』になる。このときの水は、『気体』と呼ばれる」
湯気って、水だったの?
「そうだよ。湯気は、水が温まらないと出てこないでしょ? 水が『水蒸気』に変化して、外の空気に触れたことで、細かい水滴になって、目に見えるようになったものなんだ」
「へー、そうなんだ。それで、その話が宇宙人に、どう関係があるの?」
つながりが、よくわからないんだけど。
「それじゃあ、まずはこの話からしようか。物質が状態変化するには、温度の変化が必要って言ったよね」
あたしは、コクリとうなずく。
「水は、0℃を下回ると『固体』、100℃を超えると『気体』になる。地球の平均気温は14℃前後と言われているんだ。だから、水は『液体』で存在できる」
ふむふむ。
「でも、他の惑星だと、水は液体で存在できない」
えっ、どうして?
「理由は簡単。地球のとなりの、金星を例にあげて考えてみよう。金星は、地球の内側をまわっている。平均気温は470℃で、水は水蒸気になって、大気中にただよい続ける」
そういえば、そうだ。
さっきの話を踏まえると、そういう考えになる。
「つまり地球は、他の惑星とは異なって、水が液体で存在できる惑星。生物が生きていくために必要な要素の1つに、『液体の水の存在』があったでしょ?」
うん! そっか、だから生き物がいるんだ。
あっ、でも酸素は?
「酸素も、他の星ではあるにはある。でも、大気中の二酸化炭素の割合のほうが大きい――こういうことがあって、生物が住めないんだ。でも、だからって宇宙人がいないとは言い切れない。そういう環境に適した身体に進化したものもいるかもしれないからね。二酸化炭素が、酸素のかわりとか、水は必要ないとか……。今は話しきれないから、帰ったら話してあげる」
あっ……えんりょします。
もう頭がパンパンだよ。
よく、そんなにたくさん知識が入るね。
「楽しいから……」
「いいんじゃない? 楽しいなら」
好きでやってるんでしょ?
こうやって話すときも、すごく楽しそうだし。
そういう絆を見ていると、あたしも嬉しい。
「みんなには引かれるけど、僕は楽しいから、別にいいかな」
絆は、小さくほほ笑んだ。
そうだよね……。
みんなが、話しかけてくれないのは嫌だよね。
でも、絆はかっこいいから、勝手に人は寄ってくるよ。
「寄ってこなくていいんだけど……」
「あはは、たしかにー……」
絆とあたしは、苦笑いした。
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