第12話 七夕の告白

 夕方、あたしは公園で夢叶を待っていた。

 ついさっき、夢叶の家のポストに、手紙を入れておいた。

 さすがに、チャイムを押すのは無理でした。

 あたしの心臓が持たなかった。

 手紙を入れたから、大丈夫……なはず。

 お願い、来て……!

 そのとき。

 ザッと足音がした。

 もしかして……!

 そう思って振り返ると、やっぱり夢叶がいた。

「夢叶!」

 来てくれたんだ!

 なんだか、とてつもなく嬉しくなる。

「ななみ、急にどうしたんだ? 手紙で、『話したいことがあります。公園に来てください』なんて」

 夢叶は、首を傾げている。

 そうなるよね。

 いつもは、笑顔で明るくて元気で、全然かしこまったことなんてない幼馴染が、急に? って。

 しかたない。

 あたしが、そういう子だもん。

 でも、今日のあたしは違う。

 いつもとは、違うんだ。

「あのね、夢叶」

 思い切って、話しかける。

「何?」

 夢叶の顔を見ると、声が出なくなってしまう。

 もし――嫌われたら?

 告白したせいで、嫌われたらどうしよう。

 そんな不安が、グルグルと回る。

(大丈夫。大丈夫)

 深く、深く、深呼吸した。

 もう、大丈夫。

 言うんだ。

「好きなの」

「……!」

 夢叶が、目を大きく開いた。

「あたし、夢叶が好きなのっ」

「ぁ……そ、そっか……。そう、なのか……」

 夢叶は、うつむく。

 嫌われた……?

 急に不安が大きくなる。

 でも、違った。

 夢叶は、笑っていた。

 嬉しさを噛みしめるように。

「夢叶?」

「俺も……!」

 夢叶は、顔を上げる。

 言葉では表現しきれない笑顔だ。

「俺も、ななみが好きだ」

 その言葉が、あたしに響き渡った。

 夢叶は、あたしが好き?

 本当に?

 夢じゃ、ない?

 あたし、夢を見てるんじゃない?

 気のせい……かな。

 現実なのかな。

 あたしは、ほっぺをつねる。

「……痛い……」

 夢じゃないんだ。

 本当なんだ。

 あたし、夢叶と両想いなんだ。

「ふふっ……ふふふ……」

 嬉しすぎて、笑いが込み上げてきた。

「良かった……嬉しい……」

「俺もだよ」

 夢叶は、ポンとあたしの頭に手をおいた。

 なんか、変な感じだなあ。

 夢叶、あたしよりも背が低いのに。

 なのに、漫画で見るみたいに、自分よりも背が高い人と一緒にいるみたいだ。

 なでられてるからかな?

 ――もしかして、『幸せ』って、こういうことを言うのかな?

 そっか、幸せ……か。

 あたしたちは、顔いっぱい笑顔になったのでした。

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