第8話 夢叶とななみ
「本当に遊んでやがる……」
俺は公園に出て、あきれた。
ななみは、鉄棒でグルグルと連続逆上がりをしている。
なんであんなに回れるんだよ。
勉強も、料理も、音楽もできないのに、運動だけは人並み外れている。
俺はあいつとずっと一緒だから、よく知ってる。
「ななみ」
俺は、ななみを呼んだ。
「夢叶!」
ななみは、ぱっと笑顔になると、俺のところへ飛んできた。
「さっきね、犬がいたんだよっ! すっっごく可愛かったぁ!」
無邪気に笑うななみにつられて、俺もほほ笑む。
「あたしも、犬飼いたいなぁ……。うちのマンション、動物飼っちゃダメだよね。あーあ、残念」
そんなに残念か。
周りに人魂が見えるぞ。
どんよりしすぎだろ。
「しょうがないよ。俺も飼ってみてーけどさ」
一軒家の特権だな。
……それに、犬もななみに育てられるのは、ちょっと嫌かも……。
なんか、連れ回されそうなんだよな。
下手すれば、散歩で町を一周させられるかも。
「……夢叶? なんであたしを見て、そんなに苦笑いしてるの?」
ななみが、不思議そうに首をかしげる。
「ああ、いや……。なんでもない」
これだけは言い切れる。
言ったら、すねる。絶対そう。
「わかった。聞かないことにする」
よし。
俺は、心の中でガッツポーズする。
そこで、ふと考えつく。
「ついでに忘れてくれない?」
ななみなら、たぶん「いいよー!」って、言ってくれるはず。
俺は、ななみの返答を待つ。
……めっちゃ考え込んでる。
珍しいな。
「それならさぁ……」
ななみは、にやりと意味深に笑う。
俺の背筋が、ゾワッとした。
良くないこと考えてるだろ……。
しかも、それは俺にとっての話。
ななみにとっては、大儲けだろう。
一体、どんな考えが……。
「夢叶が最近してること、教えて?」
「……は?」
なんだ、そういう系か……。
深読みしすぎた。
「まー、パソコン関係だろうけどね!」
うぐっ。当たってるんだが。
ななみは、直感が鋭いところがあるんだよな……。
ななみの直感は、100%中99.9%当たると言っても、過言ではない。
俺が身体をはって証明してもいいくらいだ。
「そんなに、俺のすることが気になるのか?」
わざと、笑いながら言ってみる。
冗談だろう? と。
「うん!」
なにもそんな、くもり1つない眼で見つめてくれなくても……。
俺がしかめっ面していると、ななみが両手を合わせて拝むようなポーズをした。
「おねがーいっ!」
ううっ……言いたくないけど、言わないと嫌われるかもしれない……。でも言いたくない。
私生活は公開しない主義だ。
あぁでも、ななみは結構知ってるしなぁ……。
俺の頭で、思考が巡る。
そして、結論を出した。
「わかったよ……」
「やったぁーーーーー!!」
俺は、ななみに負けたのだった。
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