第6話 クラスメイトの3人組

 お出かけした次の日のこと。

 わたしは、学校の屋上にいた。なぜなら、クラスメイトの3人の女の子に呼ばれたから。

「あんた、ぶりっ子だよね」

「ウザイ」

「らんと、キャラかぶってるんですけど」

 この三人は、セリフ順に紹介すると……

 1人目、中野なかの美空みそらさん。

 2人目、谷山たにやま千秋ちあきさん。

 3人目、山瀬やませらんさん。

 転入したての頃に、鈴那ちゃんから教えてもらったの。

 3人は、クラスみんなから嫌われている――悪い言い方をすると、いじめっ子なんだって。

 いつも3人で行動してて、人の悪口を言うの。

 それで、どうしてわたしがここに呼ばれたのか……それは、わたしにもわからない。

 何かしたっけ。

 どんなに考えても、わからない。

 ただ、縮こまることしかできない。

「なんなの? その『ふえ』って」

 口癖です。小さい頃から直らないの。

 できれば直したい……と思っている時期があったんだけど、直らないから個性だと考えることにしたんだ。

「何語?」

 この国の言葉です……。

 逆に聞くけど、みんなはこの国の言語以外に話せるものがあるの? ないなら、わたしと会話できている時点で、同じ言語だと思うよ。

「らんちゃん、こわぁい」

 どういうことだろう……?

「あんた、そんなに『かわいい』って言われたい?」

 美空さんが言った。

 もちろん、かわいいって言われたいよ。

 だって女の子だもん。

「かわいくないのに」

 わたし、前の学校ではモテてました。

 ごめんなさい、事実なんです。

 絶対に、みんなには教えないけどね。

「らんちゃんは、かわいい♡」

 どうぞ、ご自由に。

 ――なんて、今までハキハキ答えていたのは、頭の中でだけ。

 本当は声を出していない。その場で震えて動けないだけ。もっと勇気があったら、逃げ出すこともできたのにな……。

「何か言いなさいよ」

 もしかして――わたし、いじめられてる?

 ううん。勘違いだよ。たまたま。

 だって、いじめられるようなことしてないもん。

「バーカ」

 らんさんが、最後にそう言った。

 わたしは何も言えないまま、うつむいた。

「ほんと、ロボットみたい」

「生まれたての子鹿じゃない?」

「あははっ、笑えるー」

 3人は大笑いして、屋上から出ていく。

 美空さんの手に、屋上の鍵があることに気がついた。

「待って!」

 閉められちゃう!

 けれど、3人は無慈悲にも屋上から出ると鍵をかけてしまった。

 信じられない。どういう気持ちで、あんなことができるの? 楽しんでいるの? 弱い者いじめして、何がそんなに楽しいの?

 頭の中で、ぐるぐるとそんなことを考える。

 わたしは、地面にへたり込んだ。

「わけわかんないよ……」

 その時、ガチャリと音がした。

「――かおる!」

 あ……れんくん……。

 れんくんの顔を見ると、鼻の奥がツンとした。

「大丈夫……じゃないよな。けど、もう平気だ」

 彼は、わたしに笑いかけてくれた。

「どうして、ここがわかったの? 鍵もかけられてたし……」

「あー、それ? 女子3人が、笑いながら階段おりててさ、何かやったなと思って。そのくらい、評判わりーから。ほぼ無理やりだけど、聞き出した」

 そっか……、それで……。

 良かった。このまま、ずっと一人かもって……。

 わたしの視界が、滲み出す。

「え!? 泣くなよ、平気って言ったろ? 大丈夫だって」

 れんくんは、あわてふためきながら、わたしを元気づけてくれたのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る