第2話 転校生がやって来た

 朝の会のあと、わたしたちは体育館に整列して体操座りしていた。

「えーただいまより、1学期始業式を始めます」

 開式の挨拶のあと、校長先生のお話、新しく赴任した先生の紹介があり、とてつもなく眠い。

「それでは、転校生の紹介に移りたいと思います」

 その一言で、わたし達の目が覚めた。

 全校生徒みんなが前のめりになるのが見える。

 ステージに、5人上がった。

 今年の転校生は、5人もいるみたいですね。

「自己紹介をお願いします」

 司会をしていた先生が、一番背の高い男の子に、マイクを渡す。

 すらっとしていて、すごくスタイルがいい。本当に小学生なの?

みなもとシュウヤだ。よろしくな」

 彼は、オッドアイを持っていた。

 オッドアイは、左右で目の色が異なること。

 彼は、赤と紫。

 わたしは、こんな人がいるんだ――と、心底驚いた。

 けれど、それだけではなかったんだ。

 次に自己紹介をしたのは、

「源キララでーす! よろしくね」

 緑と青の目を持つ女の子。緑色のワンピースに、灰色のカーディガンを着てる。

 さらにさらに、

「源ユウトだよ〜。よろしく」

 青と赤の目をした男の子。水色のパーカーが、ブカブカで、萌え袖になっている。

 この3人、顔がそっくり……。服装は全然違うけれど、髪の色と顔つきが似ている。

「今自己紹介した3人、三つ子なんだよ! シュウヤが上で、キララが真ん中、僕が末っ子なんだ」

 源ユウトくんが、にこにこ笑顔で言った。

 ええっ、三つ子だったんだ!

 それでソックリなんですね。

「次はボクの番〜! やっほー、みんなぁ! ボクは、願和ねがわキキでーす! たーくさん遊んでー!」

 赤毛の……たぶん、男の子かな?

 目が真ん丸……で、この子は黄色い目だ。

 ひええ、今年の転校生は、すごいなぁ……。

 わたしは驚きながら、次の子を見た。

 最後の1人。

 彼に、わたしの目は釘付けになった。胸がドキドキして、目が離せない。

 これは――一目惚れってものなの?

 どこに惹かれたのか、どうして目が離せないのか、まったくわからない。

 でも、とにかく……カッコいいんだ。

 紫の目が、夜みたいに深く暗い。目に浮かぶ光は、月のように見える。

平野へいのミライです。三つ子のいとこ。よろしくお願いします」

 ミライくんって、言うんだ……いい名前だなぁ。

 わたしは、彼らの自己紹介に大きな拍手をした。



 全校集会は終わって、中休みになった。

「いいなぁ〜」

 ななみが、机に寝そべって言う。

 なぜか? それは、もちろん――

「ミライくん、さっそく人気者じゃん」

 転校生の、平野ミライくんのこと。

 普段は、みんなに囲まれるななみだけど、さすがに今はミライくんに人気を取られてしまっているみたい。

「……ごめん、ちょっと」

 ミライくんは周りの子たちに一言断ると、ななみの方へやって来た。

「転校生のミライくん!」

 ななみは、ガタッと立ち上がる。髪の毛の先まで、カチコチに固まっている。

「君は……ななみ、だっけ」

「う……うん! そう、ななみ!」

 ミライくんは、もうななみのことを覚えていたみたい。

 いいなあ、名前を呼ばれるなんてうらやましい。

「オレと、勝負しない?」

「しょーぶ?」

 ななみは首をかしげる。

「グラウンドを半周、競争だ」

 ミライくんは、小さくほほ笑む。

 ななみはシーンとだまりこんだ。いつも騒がしいのに、珍しい。ポク、ポク、ポク……と考え込んで、

「やる!」

 と大きな声でうなずいた。

 すると、教室がざわめき始めた。

「ななみと競争だってよ!?」

「学年で一番足が速いのは、ななみちゃんだよね?」

「すっごく気になる!」

 学年と言っても、13人――ミライくんが来て14人に増えたところだけど――しかいませんけどね。

「よぉーし、グラウンドに行くぞーっ!」

「わっ、ちょっと待って」

 ななみは、ミライくんの右手首をつかむと、勢いよく教室を飛び出した。

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