⑥
電車で二時間半。近くはないが、遠くもないところに一葉の地元はある。織原さんとは、駅近の喫茶店で待ち合わせをした。
「びっくりしました。一葉が急にいなくなっただなんて」
「俺もです。場所の心当たりとか、ありませんか?」
「それは、私より城西さんの方があるんじゃないかなあ。一葉と会ったの、この間が一年ぶりだったんですよ」
「そうですか……」
織原さんは、化粧のためか高校時代の写真よりも垢抜けていて、随分印象が変わっている。
「日曜日のことですよね」
「はい」
「一葉には、占いに付き合ってもらったんですよ」
「占い?」
「はい。よく当たると評判の占い師がいて。これです」
スマホで検索した画面を、織原さんは俺に見せてくれる。そういうものを全く信じない俺には、胡散臭いとしか思えない内容で埋め尽くされた画面だった。
「ここの、星詠先生が本当に人気で、なかなか予約も取れないんですよ。今回は三か月前から予約してどうにか取れたんですけど、一人で行くのは怖くって。私はすぐ占い信じちゃうから、変なことを言われたときのために、しっかり者の一葉についてきてもらったんです」
「一葉も占ってもらったんですか?」
「もちろん。予約は二人分取ってたので」
「えーと」
俺の知る限り、一葉も占いやらそういうものを信じる方ではない。だが念のため聞いておくことにした。
「一葉は何を言われたんですか?」
「あ、それは分からないんですよ。一人ずつ個室で占ってもらうので」
「じゃあ、占いの後様子がおかしかったりとかは?」
「全然。あ、でも、彼氏とはあんまり相性良くないって言われたって言ってました」
そこまで言ってから、織原さんははっと息を飲んだ。
「あっ、ごめんなさい、もしかして一葉が城西さんを振ったのって、占いのせいなのかな」
この人、悪気はないんだろうけど、多分天然なんだろうな。思わず滲んだ苦笑を手で隠して、俺はゆっくり首を振った。
「俺はまだ振られてませんよ。占いのことは分かったので、それ以外に何をしたか教えてくれますか?」
一時間くらいかけて丁寧に聞いてみたが、その後はランチと買い物をしたくらいで、占い以外に変わったことはなさそうだった。俺は次の目的地を占いの館とやらに決めて、織原さんには情報料としてコーヒーとケーキをご馳走しておいた。
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