電車で二時間半。近くはないが、遠くもないところに一葉の地元はある。織原さんとは、駅近の喫茶店で待ち合わせをした。


「びっくりしました。一葉が急にいなくなっただなんて」


「俺もです。場所の心当たりとか、ありませんか?」


「それは、私より城西さんの方があるんじゃないかなあ。一葉と会ったの、この間が一年ぶりだったんですよ」


「そうですか……」


 織原さんは、化粧のためか高校時代の写真よりも垢抜けていて、随分印象が変わっている。


「日曜日のことですよね」


「はい」


「一葉には、占いに付き合ってもらったんですよ」


「占い?」


「はい。よく当たると評判の占い師がいて。これです」


 スマホで検索した画面を、織原さんは俺に見せてくれる。そういうものを全く信じない俺には、胡散臭いとしか思えない内容で埋め尽くされた画面だった。


「ここの、星詠先生が本当に人気で、なかなか予約も取れないんですよ。今回は三か月前から予約してどうにか取れたんですけど、一人で行くのは怖くって。私はすぐ占い信じちゃうから、変なことを言われたときのために、しっかり者の一葉についてきてもらったんです」


「一葉も占ってもらったんですか?」


「もちろん。予約は二人分取ってたので」


「えーと」


 俺の知る限り、一葉も占いやらそういうものを信じる方ではない。だが念のため聞いておくことにした。


「一葉は何を言われたんですか?」


「あ、それは分からないんですよ。一人ずつ個室で占ってもらうので」


「じゃあ、占いの後様子がおかしかったりとかは?」


「全然。あ、でも、彼氏とはあんまり相性良くないって言われたって言ってました」


 そこまで言ってから、織原さんははっと息を飲んだ。


「あっ、ごめんなさい、もしかして一葉が城西さんを振ったのって、占いのせいなのかな」


 この人、悪気はないんだろうけど、多分天然なんだろうな。思わず滲んだ苦笑を手で隠して、俺はゆっくり首を振った。


「俺はまだ振られてませんよ。占いのことは分かったので、それ以外に何をしたか教えてくれますか?」


 一時間くらいかけて丁寧に聞いてみたが、その後はランチと買い物をしたくらいで、占い以外に変わったことはなさそうだった。俺は次の目的地を占いの館とやらに決めて、織原さんには情報料としてコーヒーとケーキをご馳走しておいた。

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