お姉さんの卒業
都茉莉
お姉さんの卒業
3月。お姉さん達が続々卒業していった。
勝手に好意を抱き、一方的に頼りしていた人も、何も伝えることもできぬまま去っていった。
そのなかに、いっとう親しくなりたかったお姉さんがいた。「お姉さん」などと内心では勝手に呼んでいるけれど、実のところ同い年だし、アルバイトを始めた時期も半年ほどしか変わらない。
密かに憧れて、それを示すこともなく、ただ時は過ぎていった。向いていないと自覚しながらこの仕事を辞めていないことすら、その過半は彼女への好意が理由だった。
気づけば私よりずっと後に入った隣の職種の後輩は、名前で呼ぶことを許されていた。皆から呼ばれているあだ名で呼ぶことすらできなかった私には過ぎた望みだった。羨望と未練とが、重く腹に残っていた。
控室に貼られた来月のシフト表。修正テープが引かれたその下には、彼女の名前が書かれている。思い立ってグループラインから彼女のアカウントを探し出しひっそり友達登録した。一方的でしかないが彼女と縁を結べた気がした。
彼女の投稿は、一つもなかった。
お姉さんの卒業 都茉莉 @miyana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます