いけいけ勇者様58

最上司叉

第1話

ちび勇者の修行1日目が始まった。


「ちと弱すぎるのう」


ドラゴンの女が言った。


「はぁはぁ」


ちび勇者は疲れ果て倒れている。


「もう一度お願いします」


ちび勇者は気力で立ち上がりドラゴンの女に言った。


「今日はもうやめるかの」


「!!」


「ご飯じゃの」


ドラゴンの女はルンルンしながらリビングへ向かう。


「…」


「どうしたのう?こないのかの?」


ちび勇者は無言のままドラゴンの女について行く。


そして席についた。


「ちび勇者くんいっぱい食べてね」


女はちび勇者に言った。


「…」


ちび勇者は無言のまま食べ始めた。


「どうしたの?」


魔王がちび勇者に聞いた。


「…」


ちび勇者は何も答えない。


「魔王様が聞いているのだぞ」


ちび勇者の腰の喋る剣が怒っている。


「…ご馳走様でした」


ちび勇者はそう言うと席を立ってどこかに出かけて行こうとした。


「もういいの?まだ全然食べてないじゃない」


「…」


それを見ていたドラゴンの女がちび勇者に言った。


「食べるのも修行のうちなのだがのう」


「…」


突然ちび勇者は泣き出してしまった。


全然強くなれない自分に嫌気がさしているからだ。


「焦ることないんじゃがのう」


「今すぐに魔王を倒したいんだ!」


「…」


ちび勇者のそのひと言に皆黙り込む。


勇者が口を開いた。


「なんのために魔王を倒したいんだ?」


「それは…」


ちび勇者は答えられなかった。


魔王は悪い生き物だと子供の頃から聞かされてきたからだ。


まぁ今も子供なのだが。


でも魔王と会い楽しく過ごすうちに考えが変わってきていた。


なんの目的もないままひたすら強くなろうとしてもなれない。


勇者は魔王を守りたいというその一心で強くなった。


ではちび勇者はどうなのか。


「まぁ気長にみつけることじゃのう」


「…」


ちび勇者はどこかに出かけて行ってしまった。


「大丈夫かな?」


「大丈夫だろ」


皆ちび勇者を心配していた。


その頃ちび勇者は近くの河原に座りながら考えていた。


自分はどうして強くなりたいのか?どうして今のままじゃダメなのか?


自分も皆と同じように戦いたい。


子供だからといって守られたくない。


自分も戦えるんだと証明したい。


すくっとちび勇者は立ち上がり勇者たちの住む家に帰る。


【ガチャ】


「修行してください!」


「なんじゃの、いきなりだのう」


ちび勇者はドラゴンの女の手を引っ張り外に出ていく。


「随分やる気じゃのう」


「はい!!」


「いい顔になったのう」


そしてちび勇者の修行は再開されたのだ。

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