第1章 春と誓い
澪夏は、腕を彼女に回して歩く彼に向け、淡々とこう言っていた。
「秀、重いんだけど。それにここではやめて」
「いいじゃん。俺達、学校一の公認カップルだろ?」
「そんなの始めて聞いたわ」
「俺も言われたことはないけど、自分ではずっとそう思ってる」
「思ってるだけじゃん」
2人のやり取りを横から見ていて、自然と笑顔が溢れた。
私にも、好きな人はいる。私も好きな人と、恋人っぽい会話をしてみたいという願望はあるのだが、それは叶わない。私の恋は、私の片思いにしか過ぎないのだから。
私は、高校2年生の春に彼に告白をした。彼から返ってきた言葉は「ごめん」と、たったの3文字だけだった。
ちょうどあの日は金曜日で、次の日学校は休みだが部活動はあった。しかし、次の日の部活動は、体調が悪いと言って休むことにしたのだった。あの時は、家族には心配をかけまいといつも通りを装っていたが、部屋では一人落ち込んでいた。
澪夏と秀君が部活動が終わった後に様子を見に来てくれたのだったが、私は2人と話しているうちに、2人の前で声を出して泣いていた。泣いてすっきりしたおかげもあり、気持ちを落ち着かせることもできた。
そして振られはしたものの、私は彼のことを諦めることはできずに、今でも好きなままだった。
そして私は、もう一度だけ彼に告白をしようと考えている。来年の3月に、もう一度だけ。
その前に私達は受験生なので、合格に向けて頑張らないといけない。
私が通う学校は進学校で、2年生の時に文系と理系でクラスが分かれ、2年生と3年生ではクラスが変わらない。私と彼と澪夏と秀君の4人は、全員文系でクラスも同じ。1年生の時も同じだったために、3年間同じクラスということになる。
学年集会で、学年主任の先生が「遊びや恋愛にうつつを抜かしすぎないように」と、言っていた。確かにその通りなのだが、例え私が周りからうつつを抜かしすぎだと言われてしまったとしても、彼への気持ちを消すことは絶対にできない。
私は、彼への想いがあることで日々頑張れることも多い。澪夏達はもちろん、彼のおかげで学校生活を楽しく過ごせている。気分的に学校に行きたくない日だって、彼に会えると思えばいけたし、長期休みが明ける時だって、彼に会えるのが楽しみで明けるのが嫌ではなかった。
長期休みといえば、去年の冬休み明けに私が課題を1つ忘れてしまっていて、放課後に残らないといけない時、私が冗談で「助けて」と言ったら、彼は一緒に残ってくれた。彼は、「教室で勉強していくついでだ」と言っていたけれど。
彼の優しさは、私がよく知っている。私は彼からの優しさをもらう度に、心が温かくなる。
実は、前に他の男子生徒に告白をされたこともあったのだったが、私は彼のことしか考えられないために、告白を断ったこともあった。告白を断られる側の気持ちも私は知っているので、振ってしまったことを気にもしていたのだったが、その2週間後に他の子と付き合ったというのをクラスメイトから聞くことになった。
告白を断ったのは私だが、私から見れば腑に落ちないところもあり、それを聞いた澪夏が、「そういう人も普通にいるでしょ。彩葉が一途なだけ」と言っていた。
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