第14話
その13
朝少し寒くなったと思いつつ外に出てみたら、山の上の方が白くなっていた。
冬本番になったらこの辺にも雪が積もるのだろうか?ならば今のうちに適当な斜面を探しておいて、スキーをするのも楽しいかもしれない。
何も木剣振り回したり、重い石のローラーをゴロゴロ引っ張たりするだけが体力づくりではあるまい。
”楽しんで何が悪い!”
もともと引きこもりのいじめられっ子キャラの私は、そろそろなけなしの根性が売り切れてしまいそうで、はっきり言って、悲鳴を上げたい気分なのだ。
ま、体力が必要なのはわかりますよ、特にこの前オークとやりあって、あの長大な剣をかいくぐって間合いを詰めるとなると、とんでもなく瞬発力が必要だと思い知らされたばかりだし。
これから先、オークはともかく体高が3mにも及ぶオーガとやりあうとなると、身体の強化はまだまだ必須、とは言え、これから先体力が無限に増えるわけでもなく、せいぜい身長で10㎝、筋肉で30%増えれば頭打ちになる。
ならばその先どうする?この先出てくるより強力な魔物にどうすれば対応できるか?と言う事である。
距離が取れている場合ならば魔法で倒すのが順当と思うが、接近されたらもう終わりではどうしようもない。
と言う事で、この先やるべき事、取りあえず洗い出してみる。
1、体力の強化。
めんどくさいし、時間はかかるし、面白くもないが基本中の基本で王道、先が見えているとは言え外すわけにはいかないのがつらい。
2、体術。
いくら体力強化をしても私がオークほどの筋力と骨格を持つことは考えられない。あとは持久力とか瞬発力とか、体力、筋力をより有効に使う技術の習得を考えるべきと思う。前世のテレビ番組で、座った状態の細身優男の合気道家をラクビーの選手が押し倒そうとして、動かせないどころか逆に押し返された映像を見たことが有る。何でも下腹から動き出すことによって、相手の力を地面に流すそうな。相手は合気道家を介して地面を押すことになるので動かないのだとか。発動条件はかなり限定されそうではあるが、逆に相手をこの条件に誘い込む事が出来れば、俺でもオーククラスの魔物とタイマンが張れるかもしれない。
3、魔術の強化。
魔力操作と魔術発動のイメージの鮮明化、それらのスピードアップ、これも王道、絶対条件。理想を言えば接近戦で相手の攻撃をかわしながらでも魔術を発動できること。しかし、たぶん無理。
4、魔道具、あるいは魔法陣。
この世界には通常の魔法のほかに、魔道具や魔方陣によって魔術を発動する事が出来るらしい。タブレットを私の脳にリンクして、魔術のイメージをフラッシュさせるとか、記録して有るイメージに魔力を流すとかして、タブレットを魔道具として使う事はできないか?これはレディーに相談してみよう。これが出来れば接近戦で、片手で刀、片手で魔法を操ることも夢ではない、かもしれない。
5、武術の強化。
剣筋を通す。刀を振るスピードを少しでも速くする。踏み込む速度を上げる。この辺は基本。それから魔物の群れと対応するため、一人対多数の戦闘法の習得。それともうひとつ、”燕返し”対策も考えておきたい。この前のオークは大剣を扱い切れていなかったので踏み込めたが、これがオーガならば体格から考えて”燕返し”なみの速さで切り返しが返ってくるはず、うかつに飛び込めば格好の餌食になってしまう。
と、まあ、こんな所か。
最近は体力づくりの筋トレでへばると、ゆっくりと剣術の型をすることにしている。
イメージは前世中国のジイさんバーさんが公園でラジオ体操代わりにやっていた太極拳。
地面に倒れこんで肩で息をゼーゼーしたくなるが、へたり込むよりむしろ、ゆっくりでも動いた方が疲れが取れやすい事に気が付いた。
どうせ動くならば剣術の型をやった方がいいし、ついでに呼吸法も取り入れ、さらについでに気をめぐらす感覚で、魔力も体中に巡らせてみる。
最近では体中はもとより、指先を通り越して刀にまで魔力が通じているような気がする。
本当に刀にまで魔力が通じて、切れ味が増すとか、強度が上がるとかすると超ラッキー、魔力をまとわせて日本刀を振り回すなど、異世界転生物語の王道である。
これが決まればやっと引き篭もりのいじめられっ子キャラから脱出できるかも?
*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます