第12話
その11
「和雄様、今日は森に行きますよ~。」
いつもと違うモーニングコールを聞いたのは初めて、多分半年ぶりぐらいですかね。
この世界の季節がどうなっているのか気にした事もなかったし、人里に行った事もないので、暦がどうなっているのか知らないので、あくまで気分的に半年と言うだけですが。
今日は晴れて魔物征伐の日です。まあ、食料用の小型の魔物、ホーンラビットなどは毎日捕まえていましたが、本格的に森の中に入るのは今日が初めて、やっと一歩だけ前に進めた気分です。
ひょっと見るとレディーの雰囲気が違う。まづ服装がいつものメイド服ではなくアウトドア向けの動きやすそうな7分丈のパンツにロングブーツ、チェックの厚手のシャツに皮のベスト、腰まであった髪は肩まで短くなって、やっぱりツインテールにしている。さすがに森の中に入るのにメイド服はあきらめたらしい。俺と目が合うと、くるっと1回転してみせる。
「どうですか~?可愛いでしょ。」
自分で言うか!とは思ったが可愛いのは可愛い。突っ込みを入れたい所だがぐっとこらえて、
「なかなかキュートで良いな。」と褒めると、
「可愛いからと言って、変な気を起こしちゃだめよ。オ・ト・オ・サ・マ!」
「フン!遺伝子繋がってないんだからな!名前だけのくせに!」と言うと、
「あら残念、お父様をからかう時はちょっとエッチな格好をしないとダメみたいね。」
と、のたまう。レディーの奴、俺の事オモチャにしやがって、わかってしまった。よ~ォォくわかってしまった。レディーの奴は鬼じゃなくて悪魔だ!
今日は探索用にカラスもつれていく。しかし、考えてみれば俺、カラスに名前を付けてなかった。
スパコンの名前が”あずみ”で”あずみ”が使っているアバターも”あずみ”と呼んでいるから本来ならばカラスも”あずみ”?・・・そりゃないよな、カラスを“あずみ”と呼んでも大問題になりそうだが、これでもう一つのアバターのネズミまで”あずみ”と呼んだら血の雨が降る。
安直に”クロ”とでも呼ぶかな?・・・それとなく”レディー”の様子をうかがうと何か意識的に知らん顔しているような気がするので、名前は付けづにカラスのままにした。
まあ色々あったけれど外に出る。何となくいつもより気温が低く感じて、ひょっとするとこれから秋になるのかな?所でこの世界に四季はあるのだろうか?いまさらである。なぜ今まで考えなかったのか?こういう変に抜けたところは引きこもり生んだ悪癖かもしれない。
「レディー、この世界に四季はあるのか?」
今更ながらではあるが知らないわけにはいかないので恐る恐る聞いてみる。
「ええ、もちろん有ります。もうすぐ秋ですね。」
「んー、そろそろ冬に備えて、食料集めとか考えた方がいいですかね。春までの食料を貯めるとなると、それなりの貯蔵庫も考えなければならないし。」
「カラスにでも頼んで、食用になる野草とか果物とかある場所も探してもらうか。」
割とのんびりした会話をしながら森の中を歩いていく。
うっそうとした森の中と言うのは日差しが入らないせいか下草が少なく、歩きやすい。これなら魔物に出会っても戦いやすそうなので安心した。
レディーが持っているのは短めの刀、”篭手切り江”の完全コピー、使いやすそうな長さと言う事で選んだそうだ。
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