第3話
カナリアは今日も歌います。
病弱な少女の為に。
カナリアの為に。
少女は突然、咳をしました。
いつもことだとカナリアは思いました。
この少女はよく咳をします。
でも、いつもすぐに止まるはず咳は全く止まることがありません。
むしろ、どんどんひどくなっていきます。
カナリアは歌うの止めました。
その時、部屋のドアが開き人が入ってきました。
そして、その後はあっという間でした。
人がたくさん入ってきて少女の様子を見ると慌ただしく少女を連れ出してしまいました。
籠の中のカナリアを残して。
それから数日。
カナリアは家の人に忘れ去られていました。
ご飯もなく、籠の中は汚れていきます。
「…お腹…減った……」
カナリアは寂しく悲しい思いながら籠の中でひたすら待っていました。
そうすることしかできないからです。
ああ、鴉の言っていた通りだ。
僕には待つしか選択肢がない…。
カナリアは鴉の言葉を思い出しながら小さく笑いました。
それから擦れた、以前のような美しい歌声ではない声で歌いました。
早く少女が戻ってくるように。
そしてまた誉めてもらえるように。
祈りを込めて。
ドアが開きました。
そこには家のお手伝いさんがいました。
「ぁ…かえってきたのかな……」
カナリアは嬉しくなりました。
ようやく気付いてくれたことに。
少女が帰ってくることに。
でも、お手伝いさんは真っ直ぐにカナリアの籠に向かってくるとその籠を乱暴に掴みました。
中のカナリアは籠に身体を打ち付けました。
「いたっ…」
カナリアのことなど考えず……むしろ、中に何も入っていないかのような扱いをしながらお手伝いさんは部屋を出ていきました。
その日
カナリアの甲高い声が響き
そして――途切れました。
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