観察日記3
「今日も慎太郎かっこよかったなぁ……」
その日の夜。
彼女はまた恍惚とした表情を浮かべながら帰ってきた。
どうやら今日の俺もかっこよかったらしい。
良かった良かった。
……いやいや、待て待て。
学校に
ちょっと待て。
俺は昨日死んだはずだ。
だからこそ、俺はこの子の部屋にいるという訳の分からん状況になっている。
予定では、この「紗和」は俺の死を学校で知るはずだった。
……学校にいた俺は誰だ?
ここにいる俺は何?
頭が混乱する。
「今日も隠し撮り成功〜〜〜! よし、待ち受け待ち受け」
何が何だか分からない。
「はあぁぁぁぁぁぁぁん! バレーしてるのかっこいい〜〜〜! お尻をトスされたい!!」
俺は一体……。
「いや、レシーブ!? 優しく包み込んでほしいなぁ」
俺は………。
「やっぱりアタック!!!? アタックされちゃうのぉ!?私!!!! きゃぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!」
うるせぇ!!!!
なんだコイツ!
平常運転すぎるだろ!!
人が必死に考えているのに!
頭を悩ませている俺とは対照的に、紗和は1人で勝手に興奮している。
ちょっとマジで一瞬黙っててくれないだろうか。
普通にうるさい。
あと、うるさい。
身悶えているアホ(1匹)を横目に、もともと無い頭を必死に回転させる。
そもそも、バレーボールしている俺を隠し撮りって何だよ。
どこに需要があんだ?
あぁ、この子か。
いや待て待て。
そんなことはどうでもいいんだ。
考えろ。
何が起こっているんだ?
いやいや、ちょっ…。
あれ。
「……バレーボール………?」
ちょい待て。
最近、体育でバレーボールなんてやってなかったぞ……?
昨日、つまり俺が死んだ日、体育があったから覚えている。
今しがた体育でしている競技は『サッカー』だ。
バレーボールでは無い。
俺の記憶が確かならば……。
体育でバレーボールをしていたのは
「っ!!」
そうだ。
そうだよ。
バレーボールなんてやっていない。
ってことは。
紗和は
恐る恐る、彼女の机の上の時計を見る。
その時計はカレンダー機能付きの時計だった。
ディスプレイに表示されていた日付。
それは。
「5月…15日……?」
俺が死んだのは、昨日。
さすがに昨日の日付くらいは覚えている。
6月も終わり、一学期も終わりの見えてきた頃。
7月2日。
どういう事だ……?
「一体何が起こってんだよ……」
脳裏に浮かぶ、シンプルな1つの事実。
俺はどうやら。
霊となって、過去に来ているらしい。
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