第3話 おだやかな日々

 待ち合わせ場所まで渋々ついてくる由紀ちゃん。


「ひいらぎちゃんは、どうしてこんなの行くのぉ?」


 不満そうに私の袖を引っ張る由紀ちゃん。


「言ったよね。ゼミの情報とか聞きたいし」

「うーん。でも、まだ私達1年生だし……」

「だからこそよ。全く知らないから、少しずつでも情報を入れて、方向性を探りたいし」

「ほんっっと真面目なんだから」


 私の腕に由紀ちゃんがまとわりつく。


「由紀ちゃんは、気にならないの?」

「何が?」

「いや、将来の進路とか」

「だって、柊ちゃんの行くところについて行くだけだし」

「いや、そんな決め方良くないって」


 大学は専門的な知識を得るために来ている。え、私の常識間違っている??


 そうじゃないなら、みんな何を求めて大学行っているの?


「だって……寂しいじゃない」

「由紀ちゃんったら……」


 まぁ、これから先、由紀ちゃんにも取り組みたい分野ができれば変わるかな。

 私には、できれば目指したい職業がある。

 

 私は、できれば絵本の翻訳がやりたいのだ。だから、英文科に入った。

 私のささやかな夢。


「柊ちゃんの夢、叶うと良いね!」


 由紀ちゃんがニコリと笑う。

 いつも私の夢を応援してくれる由紀ちゃん。とっても嬉しい。


「てか、今日、由紀ちゃんがそんなに興味ないなら、来なくても良いのよ?」


 私に付き合わせて行きたくもない行事につき合わせるのは、やっぱり申し訳ない。


「ううん。柊ちゃんが行くなら参加する!」

「そう?」 


ーー柊ちゃんに悪い虫がついて、私との時間が減ったら困るし。柊ちゃんと別々の時間が増えたら私、耐えられないし……。あ、いっそ監禁? でも、それだと(ボソボソボソボソ……)


「ゆ、由紀ちゃん? 何やら不穏な心の声が漏れているよぉ」


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