第37話 熱き決闘者 凍てつく戦場
フォルスの右横にカードの束が白い球形の魔力を帯び浮遊しており、フォルスが右手を水平に振ると右手に5枚のカードが加わった。その直後…
『アイスブラスト!』
バババッ!
蓮は複数の魔法陣を展開し、氷塊を連射した。
(カードマジック…事前情報によると…40枚のカードの束つまり試合前に生成、編成しデッキを作成する…
最大手札枚数は5枚でそれらを組み合わせ、戦う…ドロー1枚につき1秒間魔法の使用が制限される…奴は5枚引いた…5秒魔法が使えない!さぁどうする!)
『ディスカード!』
フォルスは自身の手札を3枚選び破棄し、破棄された3枚のカードは爆発し、蓮の攻撃を防ぐ。
(これは想定内…
確かにドロー後はカード能力宣言が一定時間できない制約がある…が今のはカードの魔力を炸裂させただけだから制約の対象外…
そろそろ5秒経ったかな…)
『ゴーレムの生成!発動!』
フォルスがカードを突き出し発動宣言を行うと岩でできた五体のゴーレムが生成された。
(このカードは消費した魔力に応じてゴーレムの数や強度を設定できる…)
『アイスブラスト!』
蓮は再度氷塊を飛ばし生成されたゴーレムに向けて発射する。
ボンッ!
二体のゴーレムが蓮の攻撃によって破壊され、その後自動的に山札からフォルスの手札に二枚のカードが加わった。
(ゴーレムを破壊したら奴の手札に二枚のカードが加わった…俗に言う破壊時能力というわけか…
不用意な攻撃は相手にリソースを与えかねない…しかも、カード効果によるドローはドローモーションを必要としていない…恐らく魔法の使用制限の対象外だろう…)
『
蓮の左眼は青白く光る。
(未来視の設定を最大の5秒設定…これで奴の行動に適応する…)
『エンチャントウィンドアーマー!発動!』
フォルスがカードを宣言すると三体のゴーレムは風の鎧を纏った。その後ゴーレム達は風の加速を利用し、蓮に距離を詰める。
『それは視えている!氷獄ノ棺!』
蓮は事前にゴーレムの通過する座標に魔法陣を設置しており蓮の詠唱と共にゴーレムは瞬時に凍てつき氷に閉ざされた。
(破壊していないからドロー効果も発動しない…)
『そう来たか!だが!
場のゴーレム三体を生贄に暴食ノゴーレムを召喚!ゴーレムの破壊時効果で三枚ドロー!
更に暴食ノゴーレムの特殊能力!生贄にしたゴーレムのエンチャント効果を継承!』
『グォォオォォ!』
三体の氷漬けになったゴーレムは爆散し、黒い体表で赤い目をした5m程の巨大なゴーレムが現れ、直後風の鎧を纏った。
『更に暴食ノゴーレムのもう一つの特殊能力!属性を一つ宣言し、自身の山札から宣言した属性のカードをランダムに10枚破棄する!
僕が宣言するのは火属性だ!破棄した火のカードの魔力は暴食ノゴーレムに還元される!
喰らえ!そして纏え!灼熱の業火を!』
『させるか!氷輪変形!アイスライフル!』
蓮が装着している指輪である
『凍死弾!』
バンッ!
蓮はライフルから圧縮した冷気を勢いよく放った。
『くっ…!』
(これ程の高出力の魔力を即撃ちできるはずがない…ましてはC級が…事前にイメージを固め、魔力を込めていると仮定しよう…さっきから攻撃が読まれているようにも感じるし…
何か、カラクリがあるに違いない…何はともあれ、氷弾を対処せねば…)
『業火ノ握撃!』
(これはゴーレムを介することで発動するカード宣言不要な魔法…)
フォルスは暴食ノゴーレムの右手に火の魔力を集約させ、氷弾を受け止める。
バキバキバキッ!
(くっ…やはり相殺に時間が掛かる…
彼の攻撃に備えねば…手札は4枚さて…どうするか…)
『
シュッ…
蓮は氷弾を相殺する為立ち止まった暴食ノゴーレムを時の魔力を用いた三倍速移動で通過し、フォルスに距離を詰める。
(…やはり的確に僕の行動を読み、先手を打ってくる…あの青白く光る眼によるものか…?
恐らくあれは魔眼…心…或いは少し先の未来を見ているのかも知れない…
厄介だが、目の負担と魔力消費等で相応のリスクは負っているはず…恐らく長くは持たないだろう…攻めても対応され隙を突かれる…不本意だが、此処は後手に回って消耗を抑えよう…)
『エンチャントウィンドアーマー!発動!
対象は僕自身だ!』
フォルスはカード宣言を行い、自身に風の鎧を纏った。
シュッ…
フォルスは身に纏った風を操り敏捷性を向上させ、後退し蓮との距離を離す。
バンッ!
蓮は氷のライフルから氷弾を再度放った。
(やはり…この後退も読まれてる…それに彼の敏捷性も向上している…魔眼による先読み…敏捷性の向上…
まさか!時の別枠魔法か!?
世界法則すら変えうるとんでも魔力持ちと相みまえるとはね…)
ピョン…
フォルスは蓮の攻撃を跳躍し躱す。
『アイスショット!』
バンッ!
それを予見した蓮は跳躍するフォルスに合わせ、詠唱込みの氷弾を放った。
(無詠唱の弾丸は陽動か!?
いや…僕が後退する未来を見た後、跳躍する未来を見たのだろう…
僕の行動は彼になぞり書きを行うが如く対応される…)
『ディスカード!』
フォルスは二枚のカードを破棄し、破棄したカードが起こした爆風によって跳躍の軌道を変更した。
『荒ブル竜巻!発動!』
ヒョオォォ…
カードの爆発によって軌道を変え氷弾を躱したフォルスはカード宣言による魔法で大きく激しい竜巻を発生させた。
(この魔法は使用後十秒間の魔法使用制限状態となる…
魔力消費が激しい分効果は絶大…竜巻の中心にいる僕に彼は干渉できないだろう…)
『5枚ドロー!』
(最大ドローによって五秒間の魔法制限の制約が掛かるけど…荒ブル台風の使用制限の十秒間がそれを相殺する…)
(出たか、竜巻…事前に魔力は高めてるがどうするか…)
(そろそろ右眼も限界だな…
とはいえ、相手の手の内を完全に暴いたわけじゃない…未来視を解くのはリスクだな…
それにライフルを持ったままなのは機動力の悪化に繋がる…指輪の形に戻したはいいものの、前やった実験によると再度変形を行う為には今の俺では最低でも一時間を要する…
竜巻の発生までは読めている…が氷輪はもう使えない…となれば全魔力解放と
『全魔力解放!スパイラルブリザード!』
蓮はフォルスの竜巻を事前に予見し全魔力解放を行い体表に青白い魔力の光が発現した。
その後風と氷の魔力を同時出力による詠唱魔法の発動し、自身の体表に氷の礫を含んだ螺旋に吹き荒れる風を発生させフォルスの竜巻を突破した。
魔眼の力を右眼に発言させていた蓮は右眼の消耗の為左眼に切り替え蓮の左眼は青白く光る。
『ははは…』
(未来予知による完全対話拒否の強ムーブ押し付けか…
今の僕は魔法の行使はできない、圧倒的理不尽の押し付けによって生じた絶対的なピンチ…)
ニヤ…
『それを覆してこその"
(ピンチとチャンスは表裏一体!彼は全魔力解放をしたつまりもう後がないということ…
やはり…未来視と度重なる氷魔法の使用が響いたみたいだね)
『ディスカード!』
フォルスは接近する蓮から遠ざかるべく、カード破棄によって生じる爆発の勢いで後退する。
『喰らえぇ!』
ビュン!
フォルスの動きを先読みした蓮は腰に携えた剣をフォルスに向かって投げつけた。投げつけられた剣は蓮の身に纏われた螺旋の風と氷の魔法を宿し高速でフォルスへ向かう。
『やはり…ね』
スゥ…
フォルスはカード破棄によって後退し、自身が発生させた竜巻に巻き込まれる形で蓮が投げた剣を交わした。
(彼は僕が後ろに下がる未来を見たが、竜巻が縮小していたことは想定していなかった…
今までの流れ的に僕の行動に合わせ、飛び道具を放ってくることは予想してたさ…
リアルタイムの視界と数秒先の未来を並列処理するのは至難の業…未来視の対象はある程度制限される…僕の行動を読む彼の行動を読み対処する…強い行動や魔法はメタられるんだよ…)
※メタ=対策
『…対応され始めてるな』
(リアルタイムの視界と未来視の情報を処理し、実行するのは高い集中力を要するのに加え対処できる対象にも限界がある…
そこを突かれたか…こうなった以上未来視を続けるのは視力、魔力、集中力の維持の観点から見てリスクが大きい…致し方ない…)
『
蓮は
(目の輝きが失われた…未来視を中断したようだね…彼との距離を離すために4枚のカードを破棄し残りの手札は1枚となった…
だがこれでイーブン!そして十秒間の縛りから解放された!)
『全魔力解放!カード宣言!マジックホール!僕が出力した魔力を全て回収する!』
竜巻に巻き込まれた後、宙に舞ったフォルスは右手を掲げカード宣言を行った。
その後掲げられた右手のカードから白く輝く渦が発生し、フォルスが戦いで中で出した魔法である、荒ブル竜巻、蓮の氷弾を受け右手が破損し、行動を止めていた暴食ノゴーレム、蓮の攻撃及び召喚の生贄となったゴーレムの破片その全てが白い光を発し分解されフォルスの右手に集まる。
『更にマジックホールの追加効果発動!自身の山札を全て魔力に変換し究極魔法の宣言を行う!僕の魔力とカード全てをこの魔法に賭ける!
さぁ!フィナーレだ!終末ノ
(レン=キサラギ君はこの魔法の発動を許した…その時点でもう終わったのさ…)
フォルスが詠唱すると、フォルスの頭上から豪風と業火を纏った巨大な隕石が出現した。
(今回僕が組んだデッキは君の氷魔法を意識した火風土のゴーレムミッドレンジ…
序盤のテンポを意識し且つ、ゴーレムの破壊時効果でリソース供給ができる継戦力に優れた万能デッキ…更に一撃で敵を沈める魔法をも組み込んでいる…
この隕石はデッキの火風土の魔力を全て喰らっている…カード宣言は当然もうできない…最後にして究極の魔法…
君が未来視をやめたからこそ発動を決めた…そして君は発動を阻止できなかった…)
『降りろ!流星!全てを燃やし!終末へと導くがいい!終わりダァア!レン=キサラギィイイィイ!』
(君との
『……詰んだか…』
(流石はSランク冒険者だな…あの攻撃を返す術はないし、あの攻撃を受けたら間違いなく死ぬだろう…
でも不思議と怖くない…この戦いで全てを出し切って戦ったからだろうか…爽快感すらある…)
『最高に燃えたよ…フォルス=ヴェーレンお前のことは死んでも忘れない、最後に最高の試合をありがとう』
『あんの!カード野郎やりやがった!レンという奴死ぬぞ!
てか!レンの奴何清々しい顔してやがんだよ!』
(フォルスの縛りガッチガチカード魔法の奥の手…究極魔法…俺でもあれは無理だ…)
医務室で中継を見ていたアレンはフォルスの魔法を見て声を上げる。
『蓮!』
タタタ…
シエルは勢いよく走り出し、医務室から出た。
『シエルん…皆んな行くよ!』
『う、うん!』
『おう!』
レオナの言葉にレオンと音村が答えシエルに続いて三人は医務室から駆け出た。
『蓮君っ!』
(不味い…これは不味いぞ…だがどうする…外部からの干渉はご法度…)
観客席で蓮の様子を見ていたアイリスは状況に戸惑っていた。
『蓮ンッ!負けないでー!』
シエルは泣き目になりながら蓮に大声で声援を送る。
『シエルん…』
(いつも大人しいしシエルんがここまで感情を剥き出しにするのは初めて見るね…)
『そうだぞー!蓮!負けたら前のメイド服みたいに着せ替え人形の刑だからねー!』
『蓮ー!音村が勝ってるのに君は諦めて負けるのかー!一生の恥を晒すことになるぞー!』
『兄が託した男がこの程度な訳がない!蓮君!私を失望させないでくれ!』
『ふっ…"拡声"…
れーーーん!皆んなお前のかっこいいところ見たがってんぜ!もちろん俺もだけど!!』
シエルの声援にレオナ、レオン、アイリス、音村が続き音村は拡声の魔法によって蓮に声を届ける。
チラ…
(シエルのあんな姿初めて見たな…
不思議な感覚だ…俺はもう諦めて立ち尽くしているのに…そんな俺の勝利を期待し、物凄い熱量で声援を送る…この声を聞いてしまっては諦める気にはなれないな…
魔力はまだある!これが今の俺の最大魔法だ!)
蓮は氷で弓を作り構えた。
『はぁぁ…』
蓮は目を瞑り集中し弓に魔力を集める。
(氷輪の魔力…に加え…フィールドに放った俺の魔法の冷気…
そこに更に風と時の魔力を込める…今の俺じゃ二属性同時出力が限界…だからこそ、氷の魔力の媒体は氷輪と場の冷気に任せる…
それらが魔力暴走しない塩梅で上手く掛け合わせる…
全魔力解放分の全魔力をこの矢に圧縮する!)
ヒョォオ…
蓮の造形した弓に圧縮された魔力でできた矢が重なり、強い冷気を含んだ風が矢を中心にして広がる。
(魔力圧縮が臨界点に達した…!放つなら今だ!このままだと自爆しかねない…!)
『これが全てを込めた俺の一撃!
蓮の弓から放たれた氷の矢は時の加速と風の勢いでフォルスが放った流星に迫る。
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