第36話 炎舞終局

『消炎…』


 レオナは二本の立てた指を振りかざし、地表の炎を消した。


『妥当な判断や…出しててもウチの養分になるだけやからな』


『さぁ…来なよ…リン!

今の君の実力を私に見せてくれ!』


『行くで!レオナ!』


 リンはレオナに向かって爆発を利用した踏み込みで襲いかかる。


『レッドクロー!』


 リンは赤い巨大な爪を顕現させレオナを切り裂こうとする。


噴火アオスブルフ!』


ブワァ!


 レオナは即座に詠唱し事前に仕掛けておいた魔法陣から高出力な火柱を生成した。


(リンが私の魔力を取り込んでいる間にこっちだって色々準備してるのさ…)


 火柱によってリンの攻撃は阻止される。レオナの攻撃を受けたリンは一切の反応を示さず、火傷ひとつ負っていない。


ニヤ…


 しかし、攻撃を受けたリンを見たレオナは不敵な笑みを浮かべる。


『今更そないな攻撃効かへんで!

 ……ガハッ…』


 手に攻撃を受けた腹部に強い衝撃が走り、吐血し吹き飛ばされた。


『なんや!この魔法陣は!』

(あん時か!ウチを殴った時に仕込んだんやな!)


『さぁ?何だろうね〜』

(リン…さっきの一撃で正直君を殺すことはできた…けど…そんな事をしても私に不利益しかない…とは言っても…負ける気もない…

 魔法の威力を下げる事を誓約として君には術式を刻ませて貰ったよ…

 発動条件は私の魔法を受ける事、その魔力がトリガー及び動力として威力を抑えられた分の殴りの威力を引き出させる…

 つまり君は私の魔力を取り込めないし、取り込んだら返ってそれが仇となる…

 攻撃しようにも私の攻撃に擦りでもしたら衝撃が発動して阻害され、それで傷を負って魔力で回復しようにも外から魔力を取り込めず魔力切れで負け…

 リン…最初から最後まで君は私の手のひらの上だったんだよ…)


『リン〜その魔法陣を剥がしたかったら〜

取り込んだ私の魔力を全部吐き出すしかないよ〜

 けど〜そんな事したらどうなるかはリンが一番よくわかってるよね〜?』


『くっ…』

(ウチの見立てが甘かった…出来上がったらワンチャンあるかと思ってたその思考そのものが間違ってた…

 全解放のせいで残り魔力は少ないのに…加えて魔力は取り込めへん…

 レオナから得た魔力を全吐きした一撃を繰り出そうにもそんな隙は生まれへんし…

 そもそも、それをしたところでレオナが対抗策を持ってないわけがない…

 そもそもレオナから取り込んだ魔力にレオナ自身に耐性がないわけがないからなぁ…)


『あー!無理!ウチの負けや!こーさんや!』


『ここでリン選手サレンダー!二試合目第一試合これにて決着ゥウゥッ!』


ワー!ワー!

キャー!キャー!

ざわ…ざわ…


『うぉー!めっちゃ派手サイコーだったぜ!』


『特級三位の名は伊達じゃねぇな!

軍人の姉ちゃんも凄かったぜ!』


『けど…何だかなぁ…新形態なってこれからって感じだったのに…もやっとするなぁ…』


『まぁ…俺らが理解できない上級者のやり取りがあったんだろ…』


『リン選手まだ戦えそうでしたが…マホオタ氏解説お願いします…』


クイ…


 解説のマホオタは眼鏡に手を当てた後、解説に入った。


『あくまで…私の見立てですが…レオナ選手の一撃が炸裂した時既に勝負は付いてました…』


『…と申しますと…?』


『皆さんも見たでしょう、リン選手に刻まれた魔法陣をレオナは選手は一撃を与えると同時に自身の魔法をトリガーとして発動する衝撃を魔法陣に組み込んだのです…

 つまりレオナ選手の魔法を受ける度、衝撃がリン選手の動きを阻害する…これじゃ試合になりません…それを察したリン選手はサレンダーを選んだのでしょう…』


『なるほど!そんなことが!マホオタ氏分かりやすい解説いつも有難うございます!

 第二試合は二時間後開始だ!それまで皆んなゆっくりしててくれー!』


 場面は医務室へと移る。


『終わったな…蓋を開けてみれば終始レオナの手のひらの上だったな…』


『…流石としか言えないね…』


 蓮とレオンは試合の感想を語っていた。


『レオナは魔法及び…戦闘センスは俺より高ぇよ…

 正直言って負ける可能性を感じる程度にはな…』

 

『それに随分と余力を残してたわね…底知れないわ…』


 アレンとカノンが続いて語る。


(レオナは自身とリンの損傷を最小限に留め…試合を終わらせた…賊の襲来を意識してだろうか…)


 アイリスは下を向き考えている。


『やーやー!皆の者!お疲れさーん!

あ、リン!試合で刻んだ魔法陣、魔力に変換しとくね〜

 暫くは火猫ちゃん状態が続くかな〜』


 試合を終えたレオナとリンが医務室に入ってきた。


『時間が経てば取り込んだ魔力は新しい魔力に入れ替わっていずれ無くなる…

 所詮外部から取り込んだ魔力や、あんまし保存に適してない、とは言っても無理に吐き出しても魔力欠乏なるだけやし暫くはこのまんまやろな…

 出てる火くらいは抑えれるけど…』


 リンは炎でできた耳と尻尾を引っ込めた。


『リン〜魔力カツカツでまだ傷癒えてないでしょ?魔力流したげるからじっとしてて』


『何か妙に親切やなぁ…まぁええわありがとさん』


 レオナはリンに魔力を流し込みリンはそれを取り込み自身の傷の再生と魔力回復に利用した。


『お…通達が来たぜリリィ…準備はできてるか?』


『そんなものとっくに出来てるよ…時使いも音使いも…

 とっ捕まえて拷問して!エリちゃんのことを吐かせる!』


 ゴンザレスとリリィは街のはずれに待機しており、何者から通達を魔道具で受け取った。


 暫く時間が経ち、第一試合終了から二時間が経過し、第二試合が始まろうとしていた。


『さぁ!お待ちかね!一回戦の試合はこれでラスト!二日目、第二試合の対戦カードは

レン=キサラギィイイィイ!

そして!フォルス=ヴェーレンッ!』


 実況のサングラの声と共に蓮と対戦相手のフォルスが入場する。


『蓮!ヤッタレー!』


『蓮君!君の実力を見せてくれ!』


『蓮!君なら勝てると信じてる!』


『蓮ー!私と騒は勝ち上がってるぞー!一人だけ負けるってことはなしだぞー!』


『…蓮…頑張って…』


 蓮の同行人の音村、アイリス、レオン、レオナ、シエルは蓮に声援を送る。


『…君が噂の大型ルーキーか…どれ少し占ってやろう…』


 フォルスはそう告げた後、懐からカードを取り出した。


『これはタロットカードと言ってね…異世界から伝わったものだが…僕はこれをとても気に入っていてね…

 ふむ…太陽の逆位置か…君の希望はいずれ絶望へと転じる…今、陽光に照らされ希望に満ちているとしてもその陽は落ち絶望となる…

 この試合にこの結果が影響するかは分からないが…気に留めておくことをお勧めするよ』


『あー…占い好きが昔ちらほらいたけど俺には理解できなかったな…そんなものバカバカしいお遊びに過ぎないさ…

 茶番は結構だ、俺はいつ始めても構わないぞ』


 フォルスの占いの結果に蓮は関心を示さず遊びだと言い放った。


『そうか…結果をどう受け止めるかは受け手次第…君が茶番と言ったものは終いだ…

 さぁ!血湧き肉躍るデュエルを始めよう!』

 

 フォルスは腰のケースからカードの束を取り出した。


『両者!準備はいいか!二日目!第二試合開始ィイイィイ!』

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