第27話 二人だけの景色 二人だけの時間
『よし、日の出前だな…釣りに行くか…』
蓮は早朝に起床し、レオンと共に海岸釣りへと向かった。
『日が昇りきってない海岸で涼しい潮風を浴びながらのんびり釣りをする…
いいものだな』
『うんうん…僕はこういうのが良かったんだ、命の危険を感じながらバレーなんかするよりもね!』
ひょい
そう言って、レオンは竿を投げた。
『ハハッ…相当根に持ってるようだな…
おっ!かかったか!
それっ!』
『おお!これは高級な白身魚じゃないか!サイズも中々だね!
お!僕の方もかかった!』
二人はしばらく釣りを楽しんだ。
『ふぅ、結構釣れたな』
『大漁だね、昼は皆でバーベキューしてもいいかもね』
『それはいい案だな、俺が魚を締めるから、レオンは血抜きを頼むその後、遅延付与凍結で鮮度維持の処理を行う』
『了解』
二人は魚の処理を終え、釣り場から去ろうとしたその時
『おや、先約がいたのか…』
『あんたは…山田?』
一人の顎髭を生やした壮年男性が近づいてきた。
『ん?蓮の知り合い?』
『料理屋で少し話しただけだ』
『へぇ〜お兄ちゃん、蓮君って言うんだ』
『もう日が登るし、多分あんまり釣れないぜ』
山田は蓮達を一瞥した。
『……"運"が良いねぇ〜』
山田はそう発言した後その場を後にした。
『運?まぁ良いや、ホテルに戻って朝食にしようぜ』
『そうだね』
蓮達はホテルへ戻った。
『昨日はあんまり海で遊べなかったから、午前海で遊んだ後、僕達が釣った魚と各々買った食材でバーベキューなんてどうかな?』
『うんうん!良いね!それで行こう!』
レオナはレオンの提案を受け入れた後、一行は海へと向かった。
『アハハハッ!それ!』
バシャ!
『やったな〜』
バシャ!
『うぉおぉぉ!久々の全力クロールだぜ!』
レオナとアイリスは水のかけ合いをし、音村は全力で泳いでいる。
『蓮のお陰で涼しいよ〜、にしてもみんな元気だなぁ〜』
『ふっ、そうだな俺たちはのんびりさせてもらうか』
蓮とレオンはパラソルの下で蓮が発した冷気を浴びながらジュースを飲み寛いでいた。
その隣でシエルが砂遊びをしている。一同は海を満喫した後、買い出しに出かけ各々食べたいものを買い海へ戻った。
『うぉ!うめぇ!蓮が釣った魚うめぇな!』
『ちゃんと野菜も食えよ』
蓮は音村の皿に野菜を盛る。
『へいへい』
ぐびぐびぐび…
『クァ〜!焼けた肉をラムネで流し込むの最高〜』
『レオナ達は明日大会があるし、今が英気の養いどころだな』
『そうねぇ〜明日の大会楽しみだな〜
そういや、明日正午から開会式で午後から試合なんだけど…
朝の間に参加者の追加はできないけど辞退はできるのね、その時参加者を確認して無理そうだったら抜ける的な。
此処で結構な人数が辞退すると思うから多分思ったより参加者は少なくなりそうだね、
その時に参加者確認できるからどんな強者が参加してるか早く見たいなぁ〜』
『なるほど、参加者の厳選と確認ができるのか…それは私も見に行きたいな』
『んじゃ、アイリス明日見に行こ!』
『あぁ!』
一同は楽しく食事をし完食した。
『ふぅ〜食った、食った
もう動けねぇぜぇ〜』
『美味しかったね!よし!こっからは自由行動だ!それぞれ別れて楽しんでくれ!』
レオナとレオン、シエルと蓮、アイリスと音村に分かれて別行動で街へ向かった。
『ラギーどこ行く?』
(レオナから色々立ち回り方は教わったからそれを生かしたいな…この場合は俺の案が求められている…質問を質問で返すのは良くない…)
『ん〜、そうだな船着場の方に行ってみないか?
どうやら彼処には異国の人や物が数多く見られると聞いた…もしかしたら珍しい物があるかもしれないしな』
『うん、分かった行こ』
蓮とシエルは船着場に向かった。
(えぇと…適度に気遣いをした方が良いんだったな)
『シエル暑くないか?』
『ん?大丈夫…ラギーのおかげで涼しいよ』
『そうか、それは良かった
ん…?少しここに寄って良いか?』
『ん?いいよ』
蓮は道中の店に寄った。
『待たせたな、とりあえず飲み物2つと…後これ買ったんだが』
蓮は冷えたラムネと水色の帯が付いた麦わら帽子を買ってきた。
『熱気は防げても日光は防げないからな…』
『ふふ…ラギーありがとう、大切にするね』
『ふっ…どういたしまして』
(シエルが笑うのは珍しいな…他人に何か施すのも悪くないな…)
蓮とシエルは暫く歩き船着場に着いた。
ワイワイ…ガヤガヤ…
『凄い人集りだな…』
(和服の人もいるな…異国には日本文化が浸透してるのか…?ん?あの顔どこかで…)
『うん…』
『折角だし色々周ってみるか』
『…離れ離れにならないように手繋ご?』
『あ、あぁ』
(昔妹と似たようなことがあったが…
暫く一人だったし、少し緊張するな…)
『へいへい!そこの美男美女のお若いカップルさんよ〜、一着どうだい?
これはな〜東の国のヤマトの伝統的な服の浴衣ってやつだ!花火大会が今夜あるからよ〜ペアルックでこれ着て今夜二人で花火見るってのは青春してて最高なんじゃないかぁ!?』
テンションが高い若い男の店主が蓮達に声をかけた。
『ん?俺たちのことか?』
『ったりめぇよ!お手て繋いで熱々じゃんか〜他に誰がいるってんだい?』
『はぁ…』
(着物か…悪くないな、この前の収入に加えアリシア邸からの支援…
それにさっき無理やりレオナから渡された金もあるしな…)
『シエルはどの柄が好みだ?俺もそれと一緒の柄を買うよ』
『私はあの紺色の花柄か、水色の水玉やつがいいかも…蓮はどっちが似合うと思う…?』
(でた、この手の質問…レオナが言うにはどっちも似合うなんていう安パイは一番寒いらしい…
此処は正直に俺の所感を述べるか…)
『ん〜そうだな…俺的には紺色の浴衣がいいと思うぞ』
『ふ〜ん…それがラギーの好みなんだ…』
『…まぁな』
『分かったそれにする』
『だそうだ…店主その柄の浴衣を男女一着ずつと…それに合う髪飾りと下駄を彼女に見繕ってくれないか?』
『待って…髪飾りと下駄…ラギーに選んで欲しい…』
『ん?そうか、分かった』
蓮は下駄と髪飾りを選んだ。
『よし…店主これで会計を頼む
あと…そうだ女性店員はいるか?
彼女は多分浴衣を着るのに慣れてない補助してくれると助かるのだが…』
『おう!お安い御用よ!ハナちゃん聞いたか?そこの可愛い嬢ちゃんを更に可愛く仕上げてくれや!』
『あい!てんちょ!お任せあれ!
お嬢さん…こっち来て〜』
シエルはテンションが高い女性店員と店の着替え室へ向かった。
『兄ちゃん!立ち回り完璧じゃねぇかよ!
しっかり乙女心分かってねぇとできねぇ立ち回りだぜ!』
『は、はぁ…』
(まぁ、徹底的に刷り込まれたしな…)
『あの嬢ちゃん、間違いなく兄ちゃんに気ぃ寄せてるぜ?大切にしてやんな!』
『あ、あぁ…?』
『ら…ラギーどう?』
着替え終えたシエルが蓮の前に現れた。
『……』
蓮はシエルの浴衣に魅入っていた。
『彼氏さ〜ん、彼女さんが感想聞いてますよ〜?』
女性店員が蓮に声をかける。
『あ…あぁ…!すっげぇ似合ってる』
(俺の好みが反映されたってのもあるがここまで魅入ってしまうのは中々ないな…)
『お嬢さんよかったね!彼氏さん!完全に見惚れてましたよ!』
『……』
蓮もシエルも頬を赤くし、黙って下を向いた。
『あ、暑くなってきたな…何処か飲食店に行って涼まないか?
それと…店主と店員さんありがとう…いい買い物ができたよ』
(冷静さを欠いてるせいか、冷却魔法の効力が弱まってるのか…?なんか暑いな)
『ヒュー!ヒュー!熱中症には気をつけろよな!』
『末長くお幸せに〜!』
蓮達は服屋の二人に見送られその場を後にした。蓮も浴衣に着替え二人で飲食店に向かい、座敷に座った。
『流石は船着場周辺の店だな…日本食の店があるとはな…』
『そのにほん?って国が確かラギーやイズナ達の故郷だったんだっけ?』
『あぁ、日本食は鮮度の良い生の魚を使うことが多いからなこの港町とは相性が良い』
『な…生の魚…』
ゴクリ…
『まぁ、無理しなくてもいい食文化の違いもあるしな』
『…ラギーは生魚好き?』
『あぁ、好きだぞ獲れたては特に美味い』
『そ…そう、じゃあ私も食べる』
『ふっ…口煩い師匠も何事も挑戦って言ってたしな…すみません、刺身定食2つお願いします』
『承知致しました』
暫くすると、注文の品が届いた。
『お待たせ致しました、こちら刺身定食となります…ごゆっくりお楽しみくださいませ』
『お、来たな…』
(タイっぽい白身魚と…マグロっぽい赤身魚と…これは醤油とワサビか?
炊き込みご飯と茶碗蒸しに…白身魚が入った白味噌の味噌汁か…中々のクオリティだな…)
『いただきます…』
『シエル、刺身は醤油って言うそこの小皿の液体に付けて食べるのが一般的だ、偶にアクセントとしてワサビという黄緑のペースト状のものを付けてもいいな…
ただ付けすぎには気を付けてくれ』
『…付けすぎるとどうなるの?』
『めっちゃツーンってする』
『……ピンとこない…』
シエルは始めに白身魚を醤油に付けて食した。
もぐもぐ…
『コリコリしてて、美味しい…』
『だろ?ワサビも付けると一味違った楽しみ方ができるぞ』
『う…うん付けてみる…』
シエルは二切れ目にワサビを付けて食そうとした。
『あ、待って、それ付けす…』
パク…
ツーン!
『ケホ…ケホ…』
『シエル…水で流し込もう…』
蓮は咽せるシエルに水を差し出した。
コク…コク…
『ぷはぁ…やばいね…これ』
シエルは目に涙を浮かべながら水を飲んだ。
『シエル…すまなかった、先に俺が食べて適量を教えるべきだったな…』
『ラギー気にしないで、私がわざと多めに付けたから、好奇心で…心配してくれてありがとう』
『そうだったのか…あぁ心配したよ、ほら涙拭きな?』
蓮はシエルにハンカチを渡した。
『う、うん…ありがと』
蓮達は定食を食べ終え店を出た。
『ワサビも少しだけ付けて食べるなら、美味しいね。
他の料理も美味しかったラギーありがとう…』
『楽しめたようで良かったよ…
どうやら見た感じ夏祭り期間のようだな…花火まで色々周ってみるか?』
『うん…』
蓮とシエルは射的やヨーヨー掬いと言った娯楽の他に綿菓子や焼きそば等の出店の食事を楽しんだ。
『そろそろ…花火が打ち上がるな』
『ラギーどこで見る?』
『確か余り人が居なさそうな砂浜があったな、そこに行こう』
『う、うん…でもそこから花火見れるかな』
『そこに関しては心配無用だな』
蓮達は人気のない砂浜へ向かった。
『
蓮は地面から氷の塔を生成した。
『此処からならよく見えるはずだ』
『凄い…ふふっ…二人だけの特等席…』
ヒュ〜…バンッ!
『おぉ〜中々の規模だな…
シエルよく見えるか?』
『……』
ぎゅ…
シエルは蓮の手を強く握り、花火に魅入っていた。
『……綺麗…』
『ふっ…あぁ、ほんとにな…』
数万発の花火に海と氷の塔は照らされ、その中で二人は同じ景色を共有した。
『ラギー…今日はありがとう…凄い楽しかった、これは一生の思い出になる』
『そうか、それは良かった。
俺も楽しめたよ』
『ラギー…無理してない?大丈夫?』
『まぁ…色々助言こそは貰ったが全部俺がやりたかったからやった…
無理はしていない全力で楽しんだ、それだけさ…』
『ふふっ…なら良かった…
ラギー…私疲れた…眠たい…』
『そうか、色々周ったもんな…帰ろう、俺がおぶって送るよ』
『…ありがと…』
蓮はシエルをおぶってホテルへ向かった。
(日々の鍛錬にに加えて、肉体補強の甲斐もあってか長距離のおんぶも苦じゃないな…)
『むにゃ…むにゃ…"蓮"…す…き…』
『…え?』
蓮は顔を赤らめながらも、シエルをホテルまで送り届けた。
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