第24話 不自由と我が儘
『その指輪…アドニスっていう人から貰っ…いや託されたか?』
(アドニスと特徴が類似してる…もしかしたら親族か…
指輪に反応したってことは恐らく…結晶の魔力を感じ取ったことになる…)
『…確かに私は彼にこの指輪を託されました…貴方は彼の親族ですか?』
『申し遅れた…私の名はアイリス=フリーデン…
アドニス=フリーデンは私の兄に当たる…立ち話も何だし少し場所を移そう…』
『お〜い、蓮〜劇は終わったから買い物と昼食買って此処を離れるよ〜ってあれ…?
どちら様で?』
蓮とアイリスが話している中、レオナが現れた。
『アイリスさん…
彼女が居たら不味いか?一応俺の身内だ』
『これは驚いた…あのレオナ嬢と身内とはね…まぁ彼女ならいいだろう…』
アイリスは蓮達に自身のこと、一族のことを話した。
『え〜と、つまりアドニスって人が劇の魔力結晶の後継者に選ばれて…
ご両親はもう既に結晶に魔力を込めてお亡くなりになって…
アイリスさんはせめて平和の意志を世に広めるべく商人の護衛をしつつ魔道芸術団を結成したと…ふむふむ』
『…兄の容体が心配になって、メグミ村に向かうつもりだったかが…
もう姿を変えてしまっていたとはな…
もう少し早く会っていたら何か言葉を交わせたかもしれないが…』
『多分言い残すことをなくして…
動いてたんだろ…あの人からはそれだけの覚悟を感じた…』
『私は…世の中に平和の意志を広め希望を齎したいと考えている…蓮君がその象徴になってはくれないか?
いや…なってもらわなければ困る…君にはその義務がある何故なら君は私たち一族の命と意志を託されたのだから…勿論、同志も募り君を全力でサポートする』
『おい待て…それってお宅らの都合でしょ?
蓮がそれに準ずる必要はないでしょ…
蓮の人生は蓮のためにあるべきだ、そこに誰かの強制力が働いていいわけがない』
アイリスの話を落ち着いて聞いていたレオナだったが急に顔が引き締まりアイリスに詰め寄った。
『レオナ嬢…犠牲無くして平和は得られないのだよ…犠牲が要らなかったら第一次侵攻で誰も死んでないし、私の一族は結晶になってない…
帝国が動き出してきてる…一刻を争う事態なんだ!』
『ふざけんな!勝手に平和を願って勝手に託しただけじゃない!
そうやって一族単位で生き方を縛り付けて!思想を植え付けて!それに留まらず蓮にまでそれを強いてる!
私は不自由がこの世で一番嫌いなの!人の自由を奪う奴は許せない!』
『自由?我が儘の間違いじゃないか?
こっちも何代も引き継がれた意思と魔力を正しく行使してもらわなくては困る!
そうでなければ私の家族がなんで死んだか分からない!』
『結局それもあんたの我が儘じゃない?
何?一族がそうしてきたから絶対にそうしなきゃ行けないの?周りがそうあるべきと言ったから自分の生き方を変えなきゃ行けないの?バッカじゃない!
いい!?他人から強制されて生きるってそれ死んでるのと一緒!死にたい奴は勝手に死ねば良いけどそれを人に強いるな!
あんたの提案は全て蓮の返事で決まる!人の自由を奪うんだ!お前もそれ相応の対価を支払え!それで納得させろ!私が我が儘を通す時はいつだってそうしてる!』
『……』
ガチャ…
『これは…?』
『隷属の首輪…主人が奴隷に首輪を着け魔力を込めると主従関係が成立する…
主人の意向次第でいつでも奴隷の首を締め付けられる様になる…禁忌の魔道具さ…』
『………ハァ…呆れた…あんたらの一族ってポイポイ命投げ出して、躊躇いなく奴隷になろうだなんてホンット終わってるね…
哀れ過ぎてなんか冷めたわ…こんなどうしようもない奴に付き合うだけ時間の無駄…蓮、撤収よ』
『……取り消しなさい…』
『は?』
『私のことは何と言ってもいい…
ただ意志を託し散っていった者達を愚弄することは許せない…』
『そ、別に許さなくてもいいよ…んで何?
私と喧嘩したいの?もしそうだとしたら辞めておいた方が身のためよ』
『二人ともその辺にしとけ、アイリスさん俺の身内が失礼な事を言ったな…
申し訳ない…』
蓮はアイリスに謝罪し頭を下げた。
『アイリスさん…俺も急にアドニスから託されて気持ちの整理とか色々出来てないんだ…
それに俺は飛びっきりの世間知らずだ…
今回は社会勉強を兼ねた観光をしててな…多分言われるがままその平和の象徴とやらになっても失敗する…
そこに俺の強い意志はないからな…
とは言ってもアドニス達の死を無駄にする気はないよ、使命に縛られる気はないが彼の意思を尊重し生きていくつもりだ、それに俺は貴方の自由を奪う気は無い…』
『分かった…それが君の意思なんだね…
ただ…これだけは認識して欲しい…君は何人もの命が繋いだ終着点だ…
兄が…いや一族が紡いだ希望の終点である君を私は見届け命を賭して守りたい…君と生き、君の支えとなりたい…
勿論君の生き方を強制なんかしない…だからせめて…一緒にいさせてはくれないか?』
『分かった、同行を許可するよ』
(……はぁ…下手に断っても意味なさそうだし…
なんか拗れて面倒臭い事になるのも避けたい…)
『……それがあんたの我が儘ってわけね…
蓮がそれを受け入れたのなら特に私から何か言うつもりは無いわ…
とっととお世話になった商人さんにお礼言って来なさい』
『あぁ…分かった』
アイリスは世話になった商人に別れを告げ、レオナ達はシエル達と合流し買い物を済ませ車を止めてある場所へ戻った。
その後アイリスは一同と合流した。アイリスは軽く自己紹介し同行する理由を音村とシエル、レオンに説明した。
『ふ〜ん、そんなことがあったんだ…』
『何はともあれ!アイリスさん宜しくな!』
『まさか劇の一族が実在してたとはね…』
理由を聞いた三人は三者三様それぞれの反応を示した。その後6人は車に乗り込んだ。
『三列目には俺とアイリスさんで座るよ…』
(レオナとアイリスさんが隣同士だと絶対空気悪くなるしな…)
『そう…分かったわ…』
レオナは蓮に言葉を返し、車は動き出し、王都のすぐ近くまで到達した。
『そろそろ昼食どきだけど…一旦王都で済ませようと思うけどどうかな?』
(姉さん…やけに静かだな…アイリスさんと多分、何かあったんだろうな…)
『そうね…そうしましょう』
『どんたん?先生ぇ〜らしく無ねぇぜ…?』
『…私がヨシヨシしてあげる…』
シエルは隣に座るレオナの頭を撫でた。
『はぁ〜!最高!ありがとうシエルんっ!元気貰えた!』
レオナは元気を取り戻しシエルに抱きついた。
『折角の蓮と騒を交えた初めての観光だから私がこんなんじゃ空気良く無いよね!』
『おう!先生はやっぱこうでなくちゃな!』
4人は元気を取り戻したレオナと楽しげに会話をしている。
『賑やかだね…』
『ん?まぁほとんど約二名の影響だろうけどな…』
一同は王都に到着した。
『日没までには港に着きたいから、昼食だけ済ませて出発したいと思う…
前回の賊の襲撃もあったし…複数人で行動した方ががいいよねぇ…』
レオンが場を仕切っている。
『クジで2人1組作ろうぜ!あれこれ考える時間がもったいないし!ドキドキして楽しいしさ!』
『分かった、んじゃクジで決めようか…』
6人はクジを引いてペアを決めた。
『僕と蓮、音村とシエル、姉さんと…アイリスさんだね…
まぁみんな楽しんできてくれ13時までに駐車場に集合で』
(姉さんとアイリスさんか…何も起きなきゃ行けど…)
一同はペアを組みそれぞれを昼食をとりに動いた。
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