第五章 希望の港(大波乱!夏の祭り編)
第23話 平和の意思を繋ぎし一族
『異世界初の夏の港町!
どんな発見があるか気になり過ぎてどうにかなりそうだぜ!』
『さぁ皆んな荷物を車に乗せてね。
運転手は僕が務めるよ』
『いいや!ここは姉である私が運転をしようではないか!
ちょうどこの早朝の美しい田舎町を疾走したくなったからね!』
『……姉さん…
…頼むから運転だけは勘弁して欲しい…』
『……レオナが運転したらムーラは100パー吐く…』
(うわぁ…ひどい言われようだな…
…レオナには運転してもらわない方が身のためだな)
蓮はレオナの運転を阻止すべく、一歩踏み出した。
『俺も運転手はレオンでいいと思う…
頼りになる師匠の両手が塞がってちゃいざというときに困るからな』
『そっか〜…だよねぇ〜!うん!蓮の言う通りだ!
もしものことがあったら私が何とかするから諸君!
大船に乗ったつもりでいてくれ!ハッハッハッ!
それにしても!頼りになる師匠か!蓮も言うようになったじゃないか!』
バシバシ!
『いってぇ!おいやめろ!』
気分が昂まったレオナは蓮の背中を叩いた。
グッ…
(蓮ナイス!)
(ラギー…ナイス…)
…?
レオンとシエルはレオナの運転を阻止した蓮にグッドサインをし、それを見た蓮は少し戸惑った。
『まぁ誰でもいいや!さっさと乗ろうぜ!
もう俺待ちきれないよ〜』
5人は車に乗り込んだ。運転席にはレオン、助席には音村、二列目の真ん中にレオナ、右にシエル、左に蓮が乗っている。
『蓮、俺一番前でいいの?』
『ホントか嘘かは知らないが前の座席の方が酔わないみたいなことを聞いたことがあってな、単なるリスク軽減さ…
それにいざとなればレオンの液体操作で吐瀉物を対処する時隣の方が都合がいいだろう…
俺は別に酔わないから後ろで本でも読んでゆっくりしとくよ』
『ハハッ…それじゃ出発するね』
レオンは車を発進し、村の近くの田舎道を通っていた。
『山からずっと伸びてんのか〜
この川デケェよなぁ〜』
『この命の川は村を抜け、王都を通り、今回の目的地でもあるアルズポートにまで続いていてね…
日常生活や物資の運搬には欠かせない賜り物なのさ』
『はぇ〜、そりゃすっごい!』
前の席では外を見てはしゃぐ音村をレオンが相手をしていた。
『シ〜エルんっ!クッキー持ってきたけど食べる〜?…っあれ…』
スー…スー…
シエルは早朝からの準備故か、ぐっすり眠っていた。
『は〜…可愛い〜、ギュッてしてあげたいけど…可哀想だから我慢せねば…
ん〜!このやり場のない気持ちをどうにかしないと…』
『蓮氏は何してんの〜』
『……読書…』
『何読んでんのかな〜?
…何々…第一次アバシリア侵攻とその後…あ〜有名な歴史書だね〜百数年前のことだから何とも実感は湧きづらいんだよね〜…
ずっと昔にアリシア様に興味本位で聞いたことあったけど…途端に凄く悲しそうな顔をして居たから聞くに聞けなかったな〜』
『そうか…知り過ぎているが故の苦悩もあるようだな…
対して俺はこの世界の事を知らな過ぎる…知らなきゃ何も見えてこない…』
『ん〜関心、関心…本でのお勉強もいいけど…
この世界を知るには実際に色んな物を見て聞いた方がいい!
…お!見て蓮!魔道芸術団が居るよ!』
王都の近くの原っぱで吟遊詩人や魔法、魔道具を用いて手品を披露している団体に多くの人が集まって居た。
『蓮あれはねぇ〜…魔道芸術団っていって音楽や手品とかの芸術を披露してお金を得ている人達のことを指すねぇ〜
…商業の傍ら情報集め兼副業としてやられるケースが殆どだね〜…
よし!折角だから見てみよう!レオン車止めて!』
『はいはい…』
(姉さん言い出しから聞かないから…
しょうがないか…)
『まぁ…気になりはするな…
なんせ見たことないし…』
『魔道芸術団!俺も見てみたい!』
『シエルん起きてぇ〜』
『ん〜…もう着いたの?』
『んにゃ!今から皆んなで芸術鑑賞会!』
『…そう…』
すや…
『シエルん〜?商人さんがいい物売ってたら何でも一個だけ買ってあげるぞ〜?
だから一緒に見よ〜?』
『ホント…?分かった…約束…』
『やった!よし皆んないこ!』
『…買収か…やり方に容赦がないな…』
『姉さんは一度決めたことはどんな手段を使ってもやり通すからね…』
『なーに言ってんだい!我が儘を通す為にお金があるんでしょ!
どんな我が儘でも額次第で殆どのことは通せるからね!便利便利〜!』
『…その何と言うか…流石だな…』
『姉さんには敵わないよ…ホント』
レオナはシエルを買収し、5人は魔道芸術団の元へと向かった。
『貴方も…戦いに行ってしまうのね…
誰も殺し合わなくても良い…そんな世の中にならないのかしら…』
『君達や…王国を守る為だ…
今はこんな世の中だけど…僕達の子に同じ思いはさせたくは無いな…もしかしたら僕は帰ってこないかもしれない…
だから君はこれからの世代の子達に平和を説き、実現して欲しい…
そして平和が壊れない様に何か手を打って欲しい…大変なことであることは重々承知だけど…
これは未来を生きる者にしか出来ない…
頼まれてくれるか…?』
『分かったわ…平和を願う意思と共に魔力を次世代に繋いでいきましょう…
魔力は意志を色濃く反映します…
きっと世が再度乱れた際の…一助となるでしょう…』
『こうして、男は国や家族を守る為戦い…戦死し…
女は平和を願い、意思と魔力を結晶化させ、次世代に繋いでいくのでした…
彼らの思想が今も平和の意思と魔力を繋いでいるのかもしれませんね…ご静聴ありがとうございました!』
パチパチパチパチ…
『魔王と勇者の戦いとか、アバシリア侵攻の劇は色々見てきたけど…これは初だな…』
『平和の意思を繋ぐ一族ねぇ…居るのやら居ないのやら…』
『まぁどっちでも良いけど、劇としては面白かったな。
国境の辺境伯の男と平民女性が結婚するとはね〜…
身分を超える愛の力がある分、意思力は強そうだよな〜…平和思想もその意思力故なのかもな…』
『何か…近頃帝国が不審な動きをしてるとかいう不穏な知らせもあるし…
今の平和が崩れそってのもあって色々考えさせられたなぁ〜』
『まぁ!そん時は平和の意思と魔力を継いだ!
現代の勇者様が助けれくれるかもな!ガハハハッ!』
『居たら…ですけどね』
観客は劇が終了した後感想を呟きながら退散した。
(ん…その指輪…)
『ちょっと…そこの君!』
『ん?俺のことか?』
劇のナレーションをしていた、見た目18歳前後の綺麗な青紫のボブで紫紺の瞳をしており、腰に刀を携えた冒険者風の見た目の女性が蓮を呼び止めた。
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