第20話 波乱のCランク昇格試験
『君達、Fランクから一気にCランク昇格試験を受けるようだね…D以下の昇格試験は一発で合格する確率は高いけどCランクからはそう上手くはいかないものだよ…
まぁ…何事も経験だね、まずは筆記試験からだギルドの仕組みとか魔物の習性、地理や歴史、現代社会の情勢とかが問題として出てくる。
100点を上限として実技と合わせて計200点で評価を行う150点以上で合格だ』
ステラは三人に試験の詳細を説明した。
『おぇ〜、記憶詰め込みすぎて吐きそう…』
『ふっ…その様子だと、お前の合格は厳しそうだな』
『お兄ちゃんや蓮達とも一緒に勉強したし…きっと大丈夫…』
『回答用紙と問題用紙が届いたみたいだね…
それじゃ筆記試験開始だ制限時間は一時間だ健闘を祈るよ』
蓮達三人を含めたCランク昇格試験挑戦者達は一斉に筆記試験を開始した。各々の必死に問題を解き一時間が経過した。
『そこまで!採点が終了するまでの間を休憩時間とするね。
14時にまた此処に集まってくれそれでは解散!』
『ふぅ〜!やっと終わったぜぇ〜』
『まぁ割りかし解けたな…』
『私も結構解けた!みんなと一緒に勉強した甲斐があったよ!』
『お!リーリャちゃんそれは良かった!飯行こうぜ!飯!』
『へいへい…』
(こいつやけに元気だな…テスト前は吐きそうだったくせに…)
三人は昼食を済ませ、試験会場へと戻った。
『採点が終了したよ!これより答案用紙を返却する!50点未満のものは不合格が確定するからまた次の機会に挑戦してくれ!』
ステラはそう言い放ち答案用紙を受験者に返却した。
『ふぁー!49点かよ!ふざけんな!』
『おし!50点!ギリセーフ!』
『おいおい、お前それ実技100点じゃ無いと無理だぜ?』
試験の結果に受験者達は一喜一憂している。
『ふむ…95点手応えはあったが思った以上だな…』
『わぁ!蓮凄いね!私は86点!皆のおかげで結構いい点取れたよ!』
『音村お前はどうだった?』
『ん〜65点』
『中々厳しい点数だな…実技では85点以上が合格点となるか…』
『まぁなんとかなるっしょ!』
『24人中50点未満のものは9人で残りは15人だね…私はギルドの業務に戻るから…
後はギルドマスター補佐のアドニスに引き継ぐよ、後は任せたよアドニス』
『あ〜い』
気怠げな声を発しながら長身の青紫色の跳ねた髪と紫紺の眼を持つ冒険者風の洋服を着た男が試験会場へ入ってきた。
『あ゛〜おれぁアドニスってもんだ
ギルマスの頼みでしゃーなしお前らC級候補者の試験官を務めることになった〜
態々見てやるんだ感謝しろよ…
ふぁ〜寝み…おれぁ退屈なのは嫌ぇだ毎年毎年、可もなく不可もないような基準点に達しただけの奴らをC級に通してきたもんでな…正直お前りゃにぁ〜期待していない
とりま、試験の内容説明するわ面倒くさいから一回しか言わねぇぞ〜
お前りゃにぁ、魔物の討伐を行ってもらう、討伐したらその証として魔物の一部を回収して倒した魔物のランクと数に応じて点数が加点される…最大で100点までだ。
テメェら15人で3人を上限としてパーティを組め、勿論ソロでも構わねぇ
パーティの人数の分だけ得たポイントは等分される、そこら辺よく考えて組めよな。
んで懸念されるのがパーティ同士の衝突だんまぁ要するにライバルを蹴落とそうとしたり魔物を巡って喧嘩したり、ライバルの討伐の証を奪ったりしたりするやつな。
勿論それらは禁止事項だ破ったらギルド登録抹消するからなぁ〜
お前らの動きは後で装備してもらう首飾りで情報が筒抜けになる…つまりそういうことだ。
その首飾りを通して監視して良い立ち回りを見かけたらボーナスポイントの追加もある。
トータルポイント上位三名には報酬もあるから程々に励むと良いんじゃないか?
って事でパーティ組む時間として15分やるから適当に組んでろ、おれぁその間寝る
んじゃ、よーいスタート』
受験者達は一斉にパーティを組むべく話し合いを行った。
『まぁ俺達三人でいいんじゃねぇか?』
『それに関しては同意だお互いを理解し、連携もスムーズに取れるしそれで問題ないだろう』
(パーティで等分される仕組みでサポート役もしっかりとポイントが反映されるわけか…)
『うん!蓮!音村!よろしく!』
そうして15分が経過した。
ピピピピ…
『ふぁ〜そこまでだぁ〜
なるほどなぁ〜…やっぱ3パテ多いな、2パテやソロもちらほらいる感じか…
魔物のランクとポイント一覧表と首飾り配るぞ〜』
監視用の首飾りと魔物の一覧表が全員に行き渡った。
『この首飾りは試験が終わるまでは外せねぇ仕組みになってる、よしそれじゃ実技試験開始だ好きな場所で狩ってこい。
制限時間は18時までだそれまでに戻れなかった奴は強制的にポイント無しだ。
三人いるパーティでパテメンの誰か一人が遅れた場合遅れた奴のポイントは無しで三等分されたポイントが二人に入る感じだ。
お前らのことはめんどくせぇけど監視室で見張っといてやる仕事だからな。
それじゃ〜よーいスタート』
『え〜と…
ゴブリン,スライムFランク1ポイント
コボルト、グレムリンEランク3ポイント
ブラックウルフ、ポイズンスネークDランク5ポイント
オーク、ミノタウロス、ゴブリンキングCランク10ポイント
大体こんな感じか』
蓮は配られた魔物一覧表に目を通した。
『ふむふむ…Cランク昇格試験なだけあってしっかりCランクの魔物も討伐対象になってるね』
『うわぁ…私少し怖いかも…』
『まぁなんとかなるだろ、取り敢えずグラウンドマウンテン麓の方の森に行ってみるか…
この前行ったゴブリンの生息地の森は俺らが狩り尽くしたからな、知らずに我先に向かった奴らはお疲れ様だな』
蓮達三人はグランドマウンテン麓の森へと向かった。
『リーリャの身体強化のおかげで割と早く着いたな』
『さてさて、狩りまくりますかねぇ〜』
『うん、頑張ろ…』
『リーリャ!危ない』
ドン!
『キャッ!』
蓮は何かを確認したのかリーリャを押し倒した。
ドン!
『グギャァアァァ!』
直後リーリャが居た場所付近に巨大な白いワイバーンが現れた。
『うぉ!?デカッ!カッケー!』
『な…ホワイトワイバーンだと!?』
(討伐ランクAのバケモノがこんな時に…)
『一旦退避だ!討伐対象でもない強敵に時間と命を使う必要はない!』
『おいおい、蓮逃げるってどこによ?此奴に目ぇ付けられた時点で逃げ場はねぇよ…
森の奥に行ったって敵は増えるだけだし、後ろには村がある…腹括るしかねぇよこれは…』
『くっ…』
(音村の言う通りだ…しかし…どうする…俺たちだけで勝てるのか…?
いや確か…俺達は首飾りを通して監視されているはず…アドニスの応援に賭けて今は此奴を対処するしかないのか…
しかも俺達がいる麓の森はアリシア邸と逆側の森だ住人の協力は仰げない…)
『そうだな…これより俺達三人で此奴の対処を行う!
俺達は首飾りで監視されてる!応援が来る見込みは十分にある!それまで俺達が食い止めるぞ!』
『おう!そうこなくっちゃな!』
音村は蓮の指示に力強く同意した。
『わ…』
ガタガタガタ…
一方リーリャは恐怖で震えていた。
『リーリャ無理はしなくていい!
身体強化のバフを俺と音村に掛けて村へ行って少しでも協力者を募ってくれ!此奴は俺達が引きつける!』
(リーリャのサポートを十分に受けられないとなると…
応援が来る時間次第ではあるが俺と音村のどっちか…あるいは両方が死ぬ可能性もあるか…)
『あ…あぁ…』
ガタガタガタ…
蓮の声はリーリャには届いてはいなかった。
(ダメだ…声すら届いてない…)
『音村!ワイバーンを引きつけていてくれ!少し時間が欲しい!』
『おう!分かった!だが長くは持たねぇ…手早く済ませてくれよ!』
『あぁ手短に終わらせる』
蓮は音村にそう伝えたのちリーリャに近づいた。
パァン!
『え…』
蓮は思いっきりリーリャの頬を平手打ちした。リーリャはその衝撃で気が付いた。
『何もせずそのまま死ぬか、逃げて生き延びるか、俺達と戦うか選べ…
すまない音村!今すぐ加勢する!』
蓮はリーリャに告げたのち音村の加勢へ向かった。
『…』
(私…今、蓮に叩かれたんだ…
目の前にはワイバーンがいて怖くて何もできなくてただ立ち尽くして…
蓮達は必死なって戦ってる…ワイバーンに目をつけられた以上戦うしか無いよね…
私が此処で逃げたら、蓮達を見殺しにして生き長らえることになる…それは嫌だ!
二人は私が死なせない!私たちはパーティ三人で一つなんだ!)
『
蓮どう戦う!?』
『うぉ!バフが入ったぜ!リーリャちゃん!
サンキュー!』
『リーリャありがとう、俺達と戦ってくれて!
ワイバーンは変温動物だ広範囲の凍結魔法で奴の体温を下げて動きを鈍くする!その間音村はワイバーンを引きつけてくれ!できれば奴の目を潰して欲しい!その次耳と鼻だ!いつも通り五感を奪う!
リーリャは音村のサポートを頼む光弾で上手いこと揺さぶってくれ!
ワイバーンの鱗は硬い…俺じゃ火力不足だ、トドメは強化バフを集中させた音村の大魔法だ!できれば一撃で仕留めたい!
首を飛ばすか心臓を抉るかだ!急所を的確に潰すぞ!』
『よーし!引きつけは任せろ!
爆音!』
バーン!
音村は魔法で大きな音を生み出した。
『こっちだバケモノ!』
『グルル…』
ワイバーンは音村に注意を向ける。
『氷結ノ侵食!』
蓮はワイバーンの背中に飛び乗り、広範囲の凍結魔法を放った。
『グァアァ!』
バサッバサッ!
ワイバーンは蓮の攻撃を受け激しく動いた。
『くっ…』
(氷で張り付いてはいるが…すごい力だ…)
(蓮が上手く張り付けたけど…このままじゃ不味いね…とっとと眼潰しますか…)
『強化バフが乗った一撃でそのまま突っ込んでやるぜ!
『グギャァアァァ!』
音村の攻撃によりワイバーンの左眼が潰れた。
『二人とも目を閉じて!
フラッシュバースト!』
リーリャはワイバーンの右側に周り込み光弾を飛ばした。
『グギャァアァァ!』
『でかした!
リーリャ!左後ろ退避!
音村!目眩しが効いてるうちにもう片方の眼を潰せ!』
蓮は未来視を発動し的確な指示を試みる。
『うん!』
『おう!
音村は脚に風と音の魔力を用いた強烈な衝撃を放つ蹴りでワイバーンの右眼を潰した。
『!?ブレスが来るぞ!音村!
そのままワイバーンの鼻先に踵落としだ!』
『もういっちょ!
ボン!
『ガガァ…』
ワイバーンのブレスは口内で爆発し不発に終わった。
『グギャァアァァ!』
『おいおい…完全に怒ってるぜ此奴…』
『飛翔からの突進が来るぞ!
煙玉を発動して臭いをかき消せ!』
『分かった!』
ボンッ!
リーリャは煙玉を放った。
バサッ!
(飛んだ…だが動きは鈍いし…視覚と嗅覚を封じられている…
大魔法の詠唱を行い着地と同時に発動させる…
それで動きを止めて音村にトドメを任せる…あわよくば俺の魔法で仕留めたいところではあるが…)
『融けぬ氷塊…凍てつけ万物…悠久の時過ぎようと…
汝…唯其処に在れ…エターナルゼロ!』
ドン!
ピキピキピキ…
ワイバーンの着地と同時に蓮の大魔法が炸裂しワイバーンは一瞬にして凍りついた。
『あ〜…ワイバーン完全に身体機能停止してるよ…呼吸音も心音も無しよ…死んじゃってる…
なーにが!火力不足だ!俺っちの大魔法で倒す作戦とか言っといてこれだよ』
『眼も酷使しすぎた…俺はもう動けないし魔法も使えない…』
『蓮…立てる?肩貸すよ』
『リーリャ…すまない助かる』
『俺っちもリーリャちゃんもヘトヘトだし今回は昇格試験は諦めるしかないねぇ〜…
実に運が悪い』
『命があるだけ…運がいいよ…
私死ぬかと思ったし…』
『うむ…それはそう…とっとと村へ戻ろうぜ』
タッタッタッ…
『ハァ…ハァ…
リーリャ!蓮君!音村君!大丈夫か!今加勢にきたぞ!ワイバーンは何処だ!』
『お兄ちゃんワイバーンならそこで固まってるよ』
『な…お前たちが倒したのか…?
ただどう見てもお前達はボロボロだ…
俺が護衛してやるとっととギルドに戻るぞ!話しは後だ!…何より無事でよかった…』
ユリアスは三人を力強く抱きしめた後、ギルドへ帰るまで護衛した。
『あ゛〜戻ってきたかてめぇら〜
見てたぜてめぇらの戦い…てめぇら何もんだ?Aランクのワイバーンを倒すFランク冒険者なんざ前代未聞だぜ…
ありゃ見た感じ餌を求めて遠くから来た飢えたワイバーンだ…見境なしに目に付いた物を獲物にしてるのさ。
あんがとなてめぇらのお陰で村に被害は出なかった。後で解体屋を手配して討伐金と得られた素材の所持権を与える。
解体屋の手数料は天引きするのが定石だが…今回は村を救ってもらった礼もあるしケチ臭ぇことはなしだ。
てめぇらの今回の実技は100点満点だ今日からてめぇらはC級冒険者だその称号に恥じぬ活躍を期待してるぜ…
あ〜あと…てめぇら三人がポイント上位三人になったからその報酬も追加でな』
『取り敢えず、ホワイトワイバーンの討伐金200万ゼニを渡しておく、素材は明日回収に来な。
三位の風の小僧には村で使える食事クーポン10万ゼニ分だ。
二位のサポ役だった嬢ちゃんにはこの魔導書をくれてやる…光魔法や補助系の魔法に関しての記載もある…結構貴重だからしっかり活かせよな…
んで一位の氷のお前は……怪我治ったら後日ギルドに来い詳しいことはそん時話す、
とりまあんたら今日は帰んな元気になってからお祝いだのなんだのするこったな』
アドニスからゼニを貰い等分三人は其々の家へ帰り、暫しの休息を取った。
『んあ〜やっと自由に動けるようになったね〜、一人でこのお食事券使うのもなんだしリーリャちゃんも誘って飯行こうぜ!
お祝いがてらな!』
『まぁ〜…悪くない提案だが、アドニスに呼ばれてるしな、ユリアスさんでも誘って楽しんでてくれ』
『そしたら夕飯時にするぜ!俺たちもそろそろこの村を出るしね…お別れ会込みで最後にパーっとやりたいしね』
『ん〜アドニス次第だな…』
ガチャ…
蓮と音村はギルド入った。
『おぉ!待ってたぜ!蓮!』
蓮を見たアドニスは近付いてくる。
『俺への用件の前にワイバーンの解体の進捗を聞いてもいいか?』
『あぁ〜…あれか氷が融けねぇわ、壊れねぇわでどうしようもなくてよぉ…ギルマスが観光資源にするとかなんとか言って解体は中止になってな…
まぁ流石にお前らに何も渡さねぇほどギルマスはケチじゃねぇ融けない氷の中のワイバーン何ざ前代未聞だ珍しいもの見たさに観光客がわんさか来て村の収益が跳ね上がるとか言ってニヤニヤしてたぜ…
んでお前ら三人に200万ゼニ追加で渡そうって事になってな…
とりま受け取れ、リーリャとか言う嬢ちゃんにはもうすでに渡してある』
蓮と音村は200万ゼニをアドニスから受け取った。
『えぇ!マジ!けどお食事券霞むわ!
嬉しいからいいけど!』
『ここ最近で一気に金が入ってきたな…』
『俺は今から蓮について行って欲しいとこがある…
音村とか言ったか?夕方まで蓮を借りてくるぜ』
『了解〜んじゃそれまでの間リーリャちゃんとユリアスさん誘って時間潰しとく!
蓮またな!』
音村はそう言い残しギルドから去った。
『ちょっと面貸しな…』
蓮はアドニスについて行った。
『ここが俺んちだ…まぁ適当にくつろげや』
アドニスは蓮にそう言った後、上品なティーセットを用意した。
『やっと見つけたぜ…』
『は?』
『救世主をな…』
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