第19話 夏の村の青き春
『いや〜アリシア様からはまた無理しおって!とか言われてたけど騒の大魔法凄かったな〜』
レオナはアリシアに駄々をこねて記憶共有を行ってもらい、音村の大魔法の記憶を受け取っている。
『まぁ!大魔法のことは座学で知ってたし!詠唱も必殺技として考えてたから実践で出来てよかった!』
『実戦だからこそ出来たと思うよ…
練習じゃ本当の意味で本気になれないからね
とは言っても練習やんなくて自分の力量や限界を把握していない状態で大魔法なんてぶっ放したから怒られたんだけどね、今回もアリシア様の治癒のお世話になったし…
そこら辺の線引き難しいんだよね〜』
『取り敢えず今日はゆっくり休むがいいさ…
明日蓮はステラさんの調査の手伝いと報償金の受け取りを頼むよ…騒は一日お休みだ』
『分かった』
『ほーい』
蓮達は就寝し、後日蓮はリーリャとステラと共にゴブリンの巣穴の調査を行った。
『いや〜ほんとに巣穴壊滅させてたんだねぇ〜
巣穴壊滅のBランククエスト達成だね
報償金30万ゼニとギルドポイント600の付与に加えて、案内のお礼として5万ゼニ上乗せして…
昨日の分含めた合計で87万5000ゼニと2075ギルドポイントの付与になるね
三名でのクエスト達成だからギルドポイント三等分されて692の付与だねゼニの方は各々好きに分配してくれ』
蓮が持ってきた音村のギルドカードを含む三名のギルドカードに692ポイントが付与された。
数ヶ月前から薬草採取を受けていたリーリャのギルドポイントは789ポイントになった。
『リーリャさん…凄いなあとちょいでC級の試験を受けられるじゃないか』
『受かるかは別だけどね…それに蓮、私のことはリーリャでいいよ』
『分かった、取り敢えず…今回受け取ったゼニの3分の1をリーリャに渡すよ』
蓮はリーリャに29万5000ゼニを渡した。
『え!?私全然ゴブリン倒してないし…
殆ど二人の手柄なのに悪いよ!』
『廃墟に案内してもらわなきゃ危なかったしな…
それにリーリャのサポートは本当に助かったよ…これに関して音村も文句は言わないだろ』
『う、うん…それじゃありがたく…』
『俺もどっさり収入が入ってきたわけだし…村を色々周るとするよ…
また一緒にクエストを受けることがあったらその時はよろしく』
『わ…私も一緒に村を周ってもいい!?』
リーリャは緊張した様子で頬を熱らせ蓮に同行の可否を問うた。
『構わないが…俺は好き放題ぶらぶらするつもりだがそれでいいか?』
『構わないよ…それに蓮ってあんまりこの村詳しくないでしょ?最近この辺に移住してきたみたいだし…
私はこの村に詳しいから色々オススメな場所教えられると思うの…今回のことのお礼もしたいし…』
『…そういうことなら分かった
じゃよろしく…』
『うん!』
リーリャは嬉しそうに笑い蓮について行った。
『蓮の好きな食べ物って何?』
『強いて言うなら肉かな…特に塩味でさっぱりした肉料理が好みだ…
最近はアップルパイがなぜか食べたくなる時もあるが…』
『だったらうってつけの場所があるよ!
案内するね!』
『それは助かる』
『…にしても暑いね〜、日差しも強いし汗が出るよ…』
『ちょっと待っててくれ…冷風…氷傘』
蓮は詠唱を行い冷たい風を吹かし、氷の傘を生成した。
『涼しー!凄いね!蓮の魔法!』
『あとこれ…直射日光はこれで防げるだろ』
『凄い!氷の傘だ!綺麗〜…
冷たっ!』
『あー…済まない俺は寒さに耐性が有るからそのまま気付かずに渡してしまったな傘は俺が持つよ』
『う…うんありがと…』
(これって俗に言う相合い傘ってやつ…)
『これで熱くないだろさぁ案内してくれ
ん?顔が赤いなもうちょい冷やした方がいいか?』
『十分!十分!このままでいいよ!』
『お熱いですな〜』
『チッ…リア充め…』
蓮とリーリャが歩いていると周りから視線が集まった。
『何か…私達注目されてない?』
(ぱっと見カップルに見えてるのかな…)
『そうか?ここの道はどっちに曲がったらいい?』
『ごめん!そこ左』
蓮とリーリャは暫く歩いた。
『ここだよ…』
『メグミ食堂か…有名みたいだがさて…どんなものか』
蓮とリーリャはメグミ食堂の中に入った。
『はーい!いらっしゃい!あらリーリャちゃん!おや?そこの彼は彼氏かい?噂になってたよ!』
気のいい40代くらいの女性が蓮達を出迎えた。
『か…彼氏じゃないよ!』
『そう言うことにしとこうかね…注文決まったら呼んどくれ!』
蓮とリーリャはメニューを見て何を頼むか考えた。
『よし決めた…ツノウシの塩カルビ丼にデザートにアップルパイ、飲み物は…グランドピーチジュースで頼む』
『私は…夏メグミカレーと取れたてシロウシ牛乳にデザートに旬の果物パフェでお願い…』
『あいよ!』
暫くすると料理が出来上がり、蓮達は注文の品を食べた。
『美味いな…柔らかくて美味いしさっぱりしてて美味い』
『ふふ…蓮って意外にも食の感想の語彙力ないね〜』
『美味けりゃいいんだよ…俺は次の場所に行く』
蓮達は会計を済ませ店を出た。
その後蓮達は農場や魔道具店、武器屋等様々な場所を周った。時は経ち空は茜色に染まっていた。
『結構周ったし、風当たりの良い場所で寛ぎたいな…』
『そ…それなら良い場所があるよ付いてきて』
蓮はリーリャについて行った。
『凄いな…ここから村を一望できるのか…
それにこの大きな木は涼むのにちょうど良い影を作ってくれそうだな』
『でしょ!此処は私のお気に入りの場所なんだ!気が沈んだり、悩みごとができたりしたら気晴らしによく此処にくるの…
昨日はありがとね…私のこと気遣ってくれて…私ってうじうじしてるしいつもお兄ちゃん頼りきりだったから中々パーティに入れて貰えなかったり…
自分から踏み込めないでいたの…』
『礼には及ばないよ、俺たちも助かったしなそれに冒険者には粗暴な奴が多いって聞くしうるさい奴や自己中な奴…
荒々しい奴は苦手だからな…最初にパーティを組んだのがリーリャで良かったよ』
『そ…そう言ってもらえるなら嬉しいな…
それにね…昨日のクエスト以降パーティによく誘われるようになったし…皆んな私のことに関心を持ってくれるようになったの…』
『それはよかったじゃないか、ユリアスさんも安心できるだろうな』
『うん…そうだね…
れ、蓮!唐突何だけど…私のお友達になってくれませんか!』
リーリャは顔お熱らせ緊張しながら蓮に頼んだ。
『唐突だな…それに敬語になってるし…リーリャなら歓迎するよ宜しく…』
『う、うん!宜しく…私初めてお友達できた…』
『そうだったのか…増えると良いな友人…
音村はどうだ?煩くて馬鹿だが悪い奴じゃない、奴とも友人になって見てもいいかもな…
アイツならそこそこ人脈築けそうだし音村経由なら他の人ともパーティ組み易いだろう』
『勿論蓮も一緒にね!』
『そう…だな』
蓮の返答は歯切れがいいものではなかった。
『私ね…夢があって素敵なお友達とチーム組んで色んな街行って依頼を受けながら旅とかしてみたいんだ…絶対楽しいと思うの』
『…確かにそれは楽しそうだな』
『蓮?どうしたの浮かない顔しちゃって』
『…俺と音村はそう遠くないうちに此処を離れる…
冒険者として生きて見るのも面白そうだと思えたよ…ほんとにいい経験をした。
だが俺達にはやらなければいけないことがある』
『そうなんだ…私もお兄ちゃんや蓮達に頼りきりじゃダメだよね…
もうちょい此処には居るんでしょ?蓮達が旅立つ前にもう少し思い出を作りたいな…』
『そうだな…すぐに立つわけじゃないしな
修行の具合にもよるが1ヶ月前後は此処にいると思う…』
『また…一緒にクエスト行ったり今日みたいに遊ぼうね…』
『あぁ…短い期間だがよろしく頼むよ
今日はもう遅いな、俺は帰るよ今日は楽しめたよ…ありがとう』
『うん、こっちこそありがとう
蓮またね…』
二人はそれぞれの家に帰宅した。
日が変わり朝になる頃には音村は回復しており、二人は修練場でレオナと修行を行っていた。
『騒も回復して魔力登録も済んだことだし!
新しいメニューやってみますか!』
『お!何やるんだろー?ワクワクするなぁ!』
『まぁ見てなさいな…システムコール!
ゴーレム起動!』
レオナが声を上げると地面から魔法陣が発生し、一体のゴーレムが出現した。
『ゴーレムか…此奴と模擬戦をやらせるつもりか?』
『正解!このゴーレムの動きは5パターンあって、5パターンの中からランダムに動きが選択され動き続けるのさ…
やめたくなったら、システムコール!ゴーレム停止!って叫ぶとゴーレムはいなくなるよ』
レオナの掛け声と共にゴーレムの足元に魔法陣が発生し、ゴーレムは魔法陣に取り込まれ姿を消した。
『君達は此処の魔力登録を済ませてるから同じことができるよ』
『このゴーレムには五箇所刻印が刻まれていて、五箇所全てに魔法を当てるとゴーレムは破壊される…
んでこの修練場の設定で破壊されたら再度ゴーレムが生成するようにしてあるよ。
よし!一時間でゴーレムどっちが多く討伐できるかゲームやりますか!負けた方はメイド服を着て家事をやってもらうね!』
『はぁ!?』
『…流石に俺っちもそれは嫌だな…』
『ゴーレム2体出すからあとは頑張って!
システムコール!ゴーレム起動!』
レオナは戸惑う蓮と音村に構うことなくゴーレムを召喚した。
『くっ…やるしかないか…』
(音村に負けて女装だと…死んでも負けられないな…
とは言っても音村の女装とか言う目の毒も拝みたくはないな…)
『蓮には負けねーぜ!』
(普通に恥ずいから普通に嫌だ)
二人はゴーレムの討伐訓練へ挑む。
『アイスショット!……くっ…』
(このゴーレム動きのパターンが変化することに加え…刻印の場所もランダムなのか…
一個一個、狙い撃ってもキリがない…
だったら…)
『
蓮は右手をゴーレムへ向け魔法陣を展開し、ショットガンを発射するかのように鋭利な氷塊を複数射出した。
(何個か刻印に命中したな…ただ魔力の消費が気がかりだな…
刻印に当たらない氷もあるし射出の勢いもそこそこある…音村の方はどうだ…)
『ウオォオォ!
『なっ…』
(風の機動力を生かした攻撃に…音の衝撃による範囲攻撃だと!?
見たところ俺より魔力のロスも少ないし…何より速い…
せめて、氷散弾を撃つ前に敵の刻印の位置が分かればな…俺の時の魔力を目に付与し未来をイメージする…)
『
詠唱と共に蓮の両眼が青く輝く。
(ゴーレム…の刻印の位置が右肩に一つ…右下腹部に一つ…
顔に一つ…後の二つは後ろ側にあるっぽいな)
『解除!』
(両眼共に未来視に使うのは眼と魔力の無駄だな…)
ゴゴゴゴゴ…
(ゴーレムが現れたな…大体五秒先を見た感じになるな…)
『
グサッ!
(よし…三弾とも命中したな…
後は後ろ側を穿つ…)
『ふむふむ…三十分経過したわけだけど…
騒が23体…蓮が18体かぁ…始めは騒の圧勝だと思ってたけど蓮の追い上げが凄いね…
あの不思議な眼の影響なのかね…?私の推測だと多分時の魔力を付与した未来視かな〜?…凄いね時の魔力…
ん?てか目に魔力を宿せるってそれって魔眼では…?』
レオナは地下修練場の隣の監視室から二人の様子を見ていた。
『くっ…』
(右眼、左眼で交互に先見眼を使用していたが…そろそろ限界か…目眩がしてきた
残り15分…多分音村と俺の討伐数は大体同じくらいだろう…
こんな状態で継続しても結果は火を見るよりも明らかだ…)
『システムコール!ゴーレム停止!』
蓮が告げると以降蓮の目の前にゴーレムは現れなくなった。
『あれ?もう蓮辞めるの?俺っち勝確だぜ?』
『辞めなくても、辞めても負確だよ俺は…
眼に限界が来てな…
これ以上使うと視力悪くなりそうだし、こんなしょうもない勝負で眼を使い潰すこともない』
『よーし!そこまで!蓮が降参したから騒の勝ちだね!
蓮は私の部屋に来て着替えよう!騒は疲れただろうし休憩しててくれ!
それにしても蓮の眼あれもしかして未来視してたのかい!?』
『あぁ…最大で5秒先の未来を見ることができる。
ただ使いすぎると眼に負担がかかる上に魔力の消費も激しい…』
『蓮も成長したね!今まで魔力切れでぶっ倒れたり、死にかけたりしてたみたいだけど引き際を自分で判断できるようになってきたね!
蓮の成長を讃えてめちゃかわにしてあげなきゃね!』
『……程々で頼む…』
『俺っちは昼まで休んどくぜ、蓮が可愛くなったら見に行くからな〜…んじゃまた!』
音村はそう言い残し、自室へと戻った。
『さ!蓮行こっか!』
『…拒否権は無いことは分かっている…好きにしてくれ覚悟なら出来てる』
蓮はレオナと共にレオナの部屋へと向かった。
『これはねぇ〜長髪の櫛っていって特級アーティファクトなんだ〜これで髪をすくと不思議と髪が伸びるんだよねぇ〜…
やっぱり女の子っぽくする為に髪は伸ばしたいよねぇ〜…
因みに魔道具やアーティファクトの階級は上から最上級、特級、上級、中級、下級だね
アリシア様が蓮に使用した融合ノ楔は最上級アーティファクトだね…一体いくらするか分からない伝説級のアイテムだったんだよ〜』
レオナは上機嫌に喋りながら蓮の髪をすき蓮はどうとでもなれと言わんばかりの表情をし俯いていた。
レオナは蓮の髪が肩にかかる長さになるまで髪をすいた。
『お!いい感じに髪が伸びたね!
萌えを意識するならツインテールが硬いけどまぁ蓮の素材の味を生かすならポニーテールがいいかも!あとはヘッドドレスをつけて…よし!頭の方はい感じだね!
ショート丈のスカートよりもロング丈の方が蓮に合ってる気がするな〜清楚路線で固めよう!』
『…』
レオナは楽しそうに蓮の着せ替えをし、着せ替えをレオナにさせられている際蓮は放心状態であった、暫く時が経過し蓮の着せ替えが終了した。
『よし!出来た!うん!うん!やっぱ素材がいいと捗るなぁ〜』
蓮は肩までかかった髪を後ろ一つ結びにし頭には白黒のヘッドドレスをつけ、白黒のロング丈のメイド服を着ていた。蓮とレオナは昼食の準備の為厨房へと向かった。
『家事はメイドさんの仕事だから後は頼んだよ!蓮!頑張ってね!』
『……』
『あ〜、シエルちゃん農作業疲れましたねぇ〜少し休憩しますか〜………
え…え〜と…家事手伝いの依頼とかって出してましたっけ…?
お嬢さん…説明してくれるかしら?』
メルシーは女装した蓮に説明を求めた。
『蓮だよ』
即座にレオナが女性?の正体が蓮である事を明かした。
『へ?』
『蓮だよ』
『蓮ちゃんに確かに似てますけど…だとしたら一体なぜ…メイドさんに…』
ニギニギ…
『メルシー…ちゃんと付いてるよラギーで間違い無いと思う…』
『こら!シエルちゃんニギニギしちゃメッです!にしても…ニギニギされても無反応とは…蓮ちゃ〜ん聞こえてますか〜』
『……ふぅ〜』
レオナが蓮の耳に息を吹きかけた。
『うぁ!?なんだ!』
『あ、蓮正気に戻ったみたいだねもうそろそろ昼が近いし、昼食の準備頼んだよ!メイドさん!』
『なんだこの格好!?』
『蓮ちゃん似合ってますよ〜こうなった経緯は知りませんけど…こういうのも中々いいものですねぇ〜』
『メイドさん…疲れたからマッサージして』
『……』
シエルのお願いを聞いた蓮は不貞腐れた顔で俯く。
『おーい、メイドさん愛想悪いぞ〜メイドには奉仕の精神が大事だぞー』
レオナが無愛想な蓮に注意した。
ガチャ!
『お!皆さんお揃いで…おおぉ!蓮なのか!すっげ〜可愛いじゃん!』
『……音村お前からのその言葉は聞きたく無い吐きそうになる』
『騒〜聞いてくれよこのメイドさん無愛想なんだよ〜なんとかしてくれないか?』
『蓮貸し1使うから愛想良くしてくれよな〜』
『……』
『重ねて貸しを使用する…蓮、愛想良くしろ』
『あー!もう分かった!分かったから!』
『人を呼ぶ時はお嬢様とか御坊ちゃまとか付けてくれたら雰囲気出るよね〜
分かったら返事だよ!メイドさん!』
『しょ…承知致しました…レオナお…嬢…様…』
『ん〜まだちょっと辿々しいけどまぁいいか!んじゃ昼食の準備頼んだよメイドさん!』
『…はい』
その後蓮は昼食の用意を始めとした様々な家事、雑用を行った。住民達に弄られまくった蓮は疲弊した様子で床についた。
蓮と音村は引き続き、レオナの指導の下、地下修練上でのゴーレムの討伐訓練、野外修練場での的当てや模擬戦等を繰り返し3週間程実施しつつ、ギルドで魔物討伐もこなして行きリーリャと共にCランク昇格に必要なギルドポイントに達し、三人はCランク昇格試験へと向かった
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