第18話 初クエスト‼︎

『お!蓮!準備できてるか!』


『当たり前だ…リーリャさんとは8時集合だったからな…

 前日に余裕を持って支度はしてあるギリギリになって支度をすると準備に漏れが発生する可能性が高いからな…』


『流石は蓮だぜ!んじゃ行こうぜ!俺たちの初クエストだ!』


 蓮と音村はメグミ村のギルドへと向かった。


『リーリャちゃんお待たせ!』


『騒さん…蓮さん…おはよう』


『あぁ…おはよう

 まずは大まかなゴブリンの生息域の把握と購入物品の確認からだな…

ギルドの資料や他の冒険者の発言を纏めて方針を定めよう…

 音村お前は周りの冒険者に聞き込み調査を行ってくれ俺とリーリャさんはギルドの資料や書店でゴブリンの生態を調べる…

 今は…9時だな二時間後ギルドに集合しよう』


『おう!分かったぜ!』


『うん…分かった』


 蓮の指示の下三人はゴブリンの情報収集を行なった。その後三人はギルドへ集まりミーティングを開始した。


『今出た情報を纏めると…ゴブリンは基本群れで行動しており…

 稀に口減らしで食糧にされそうになったゴブリンが群れから外れ単独で行動するケースもあるのか…』


『それにゴブリンは基本洞窟に生息してる… 多数討伐を想定するなら洞窟への侵入も考慮した方がいいみたい…』


『それにアイツらは鼻がいいらしいぜ!

 匂いで敵の接近や臭いを感じ取るらしいぜ!』


『…となると煙玉はあった方がいいかもな…音村の風魔法で洞窟内に煙を流し込み奴らの鼻を封じる…

 それに洞窟内は暗い俺の冷気による熱感知も悪くないが…寒さとかの刺激で警戒されても厄介だ…

 音村の音の索敵が有効そうだな…癪だがお前がカギだ音村…』


『お!これは嬉しい評価だねぇ!因みにリーリャちゃんはなんの魔法使えるの?』


『私は光属性のメイン魔法と身体能力強化の別枠魔法を使えるかな…

 光属性の魔法で目眩しや暗い場所を明るくしたり、光弾を飛ばして攻撃できたりもするね…

 別枠の方は自分や他人の身体能力を強化できて、この別枠魔法は自分を強化している間は他人の強化は出来きないかな…

 逆もまた然り…他人の場合複数人強化できるけど人数が増えるとその分効果も薄くなる…』


『デュアルマジシャン!?そりゃ才能が枯らすの勿体無いね!

 ユリアスさんも熱が入るわけだ!』


『これはかなり優秀なサポート役だな…

松明の購入は無しで良さそうだな…

 となると回復用のポーションと煙玉…

後は…短剣とかあれば良さそうだな…

 洞窟は狭いだろうし大きな武器は邪魔になるそれに短剣なら投げやすい利点もある』


『よし!早速買いに行こうぜ!

 あんまり荷物持っても邪魔になるだろうし!このくらいでいいっしょ!』


『ふふ…』


『お?どうしたのリーリャちゃん』


『私いつも一人かお兄ちゃんの後ろに居ただけだったから…

 こんなふうにクエストの打ち合わせとかやったこと無くて新鮮で…その楽しいなって…』


『おう!俺もスッゲー!楽しいぜ!なぁ?蓮も楽しいよな!』


『…さっさと行くぞ』


『蓮も楽しんでるみたいだね!リーリャちゃんも行こうぜ!』


『…うん!』


 三人はゴブリンの生息地へ向かうべく村を出た。


『村を出たな…音村は中央で風と音による探索に専念してくれ前衛は俺がやる。

 リーリャは後衛で後方支援を頼む!俺に身体強化の魔法を付与してくれ!』


『おう!』


『…うん!わかった!』


 蓮の指示の下三人は各々の役割を遂行し、ゴブリンの生息域へ向かって歩を進めた。


『蓮…30メートル先くらいに何体か何かいるぜ』


『地図を見た感じそろそろゴブリンの生息域の森が近いな…恐らくゴブリンだろ』


『レンさん…どうする?』


『勿論、一網打尽だ!』


シュッ!


 リーリャの身体能力のバフがかかった蓮は高く跳躍した。


『アイスミキサー!』


 蓮が詠唱を行うとゴブリンの群れの足元から魔法陣が出現し陣の外側から鋭利な氷を含んだ竜巻が吹き荒れゴブリンを囲んだ。


『縮まれ!』


 蓮がそう叫ぶと竜巻は縮小した。


『グギャァアァァ!』


ボリボリボリッ!

グチャ!

バキバキバキ!


 ゴブリンの悲鳴と共に氷とゴブリンの体が接触する生々しい音が響いた。そして竜巻は真っ赤に染まった。


『うん!上手くいったみたいだね!ちょっとグロいけど!』


『体感だが、魔力の通りが良くなっている気がするな…

 元の身体能力も前回の一件で向上したしそれ故か結構跳躍できたな…

 身体強化…いい魔法だ…よし、じゃ耳を回収するか…』


『うぷっ…何で二人とも平気なの?こういうの慣れてるの?

 てか…音村さんの索敵も蓮さんの戦闘力も凄すぎない!?

 私いる!?氷の竜巻もすごいけど身体能力強化込みとはいえ跳躍すごいし!突っ込みが追いつかない!』


『ん〜グロイのは工房の業務で慣れてるし〜?もっとやばい奴らとの死闘乗り越えたしね〜』


『まぁ概ね此奴の言う通りだな、それにリーリャさんの身体能力強化の恩恵も大きい…

 此方としても助かってる』


(ホントかな〜?)


 二人のレベルの高さにリーリャは驚き蓮達は余裕な様子でゴブリンの耳を回収している。


『おっ!短剣買ってて良かったね!耳切りやすい!けど何個かダメになってるね…』


『少し乱暴にやり過ぎたかもな…善処しよう…

 耳は二つで1セットで1000ゼニの買取だ、

今の群れで8セット取れたから8000ゼニか

これが山分けとなると少々渋い…

 もっと狩らないと採算合わないな…』


『まぁ…Fランクのゴブリン討伐なんてこんなもんでしょ』


『とはいえ、討伐数に比例してギルドポイントが上がるからランク上げには効率的かもな』


『確かに!何かその辺ゲームっぽいよね!』


『あぁ…正直楽しんでる自分がいる…』


『なぁ!蓮!索敵と前衛変わってくんね?俺も新技試し撃ちしたい!』


『しょうがないな…俺の探知は風と冷気による温度差による探知だ、お前の音より勘付かれるリスクはある…きっちり処理してくれよな』


『おう任せとけ!』


 音村と蓮は役割を交代しゴブリンの探索を行った。


『音村、向こうに10匹いるぞ』


『了解!

アクセルウィンド!

からの〜

鎌鼬乱舞かまいたちらんぶ!』


 音村はアクセルウィンドで加速し一気にゴブリンの群れに距離を詰め鎌鼬乱舞かまいたしらんぶで風の刃を複数発射しゴブリンの群れを一網打尽にした!


『おー!いいね!同じ属性で融合したからか分かんないけど威力と精度が向上した感じがする!

 それに身体能力強化のお陰で!動きにキレが増したよ!理想以上に動けると楽しいな!なぁ!蓮!』


『ふっ…そうだな

まぁ…動けるのはいいがどうも張り合いがないな…

 ゲームに例えるなら初期エリアのレベル5の敵を30レベルで攻略している感覚だ』


『あ〜それわかるわ〜!

まぁランクも上がればもっと楽しくなるっしょ!耳集めようぜ!』


『うむ…』


(突っ込む気がもうしないな…ホントにこの人たち駆け出し冒険者?

 さっきから上級魔導士って言われても疑わない程度には魔法ぶっ放してるんだけど…)


 蓮と音村は暫くゴブリンの生息域の森でゴブリン討伐を行った。


『100セットは集めたんじゃないか?臭いし汚いし嵩張るし…

 一旦切り上げてもいいかもしれないな』


『そうだね〜魔力的にはまだ余裕はあるけどここら辺もうゴブリンの反応ないしねぇ〜…

 ん?あそこに荷馬車あるじゃん!一旦どこかに蓮の氷魔法で耳凍らせて隠して後で荷馬車引いて荷物乗っけて帰ろうぜ!』


『…それはいいが荷馬車どうやって引くんだ?』


『リーリャちゃんの身体能力強化と俺の風魔法があれば余裕よ!』


『それならまぁ…いいか

じゃ洞窟行ってみるか?』


『おっけ!後さ!先輩冒険者に聞いた話なんだけどさ!

 群れの中に偶にゴブリンキングとか言う強個体がいるらしいぜ!』


『ほう…それは是非とも見てみたいな

リーリャさん…洞窟入るけど一緒に来るか?』


『う、うん!』


 三人はゴブリンの住処の洞窟へと向かった。


『あれがゴブリンが住む洞窟か…』


『ふむ…門番のゴブリンが複数体いるねぇ〜…統率が取れてるってことはもしかしたらいるかも…』


『あぁ…いるかもな…』


 三人はゴブリンの巣穴から50メートルほど離れた位置で様子を伺っていた。


『音村少し試したいことがある…少し手伝ってくれないか?』


『お?蓮が俺に助力要請か!何やるつもりだい?』


『身体能力強化で視力を強化してもらった後にあいすアローで遠隔スナイプを行う…

 お前は風魔法で命中のアシストをやってくれないか?』


『お!なにそれ面白そう!やろうぜやろうぜ!』


『リーリャさん視力の強化を頼む』


『う、うんリインフォーストアイズ!』


『見える…見えるぞ…

アイスアロー!』


 蓮は氷の弓を生成し左手で弓を支え右手で弦を引いき魔力を込め発射した。


『風ノ導キ!』


 音村は風で矢を導いた。


ドスッ…


『グギャァアァァ!』


 矢はゴブリンの頭に命中し、矢が当たったゴブリンは音もなく地に伏しそれを見た他のゴブリンが奇声を上げた。


『よし!命中だ!』


『ん…』


 音村は蓮に拳を向けた。


『ふっ…』


トン…


 蓮はそれに答え拳を合わせた。


『さーて蓮よ、アイツらびびって仲間呼ぶぜ?』


『とは言っても森にいたゴブリンは殆ど狩り尽くした…洞窟から何匹か出てくるだろ

 だがその方が都合がいい洞窟は奴らのテリトリーだ少しでも外に出てくれた方がこっちとしてもやりやすい』


『だったらどうするよ?』


『奴が来る前に洞窟の入り口の地面を氷ノ床(アイスフロア)で凍らせる…

 駆けつけた奴らは滑ってこける、そしたら後は狩るだけだ…

 ただ一匹は痛みの魔法で奇声を上げ続けてもらおう後続を呼んでもらう為にな』


『うわぁ…えげつねぇ…名付けてゴブリンホイホイだな!』


『よし!行くぞ!』


 蓮達は洞窟の入り口に向かって走り出した。


アイスフロア!』


ツルンッ!


『ガァッ!』


 駆けつけたゴブリンの一体は転倒した。


『氷ノ拷問!』


ガシッ!


 氷ノ床を通して出力された氷によってゴブリンの体は固定された。


『グギャァアァァ!』


 氷に固定されたゴブリンは悲鳴を上げる。


『氷ノ拷問は触れると激痛が走る氷で対象を固定する魔法だ…さぁそのまま叫べ!』


『蓮!洞窟から後続が来るぜ!』


『グギャァアァァ!』


ツルンッ!


氷柱地獄つららじごく!』


 蓮は地面から鋭利な氷の針を生やし転倒したゴブリンを串刺しにした。


『うわぁ…こりゃ地獄絵図だね…

よし俺っちも!ソニックショット!』


ボンッ!


『グギァ…』


 音村は指先に風と音の魔力を込め、圧縮された風と音の魔力は大きな音とともに勢いよく発射した。

 放たれた衝撃弾はゴブリンの体を貫き大きな風穴を開けた。


『殺意高いな…その技…』


 蓮は音村の新技に驚いた。


『んまぁ…けど連発はできないかなぁ…

 指痛くなるし別の指使えばまぁ打てなくもないけど』


 暫く蓮と音村は洞窟から外に出てくるゴブリンを討伐した。


『ハァ…ハァ…何体倒したか…

 数える気も起きないな』


『お…おい…蓮…

 でっけぇ足音が近づいてくるぜ…くるぞ…キングが』


ドシ…ドシ…ドシ…

バキ…バキ…


『グォオォォォオオ!』


 巣穴から出てきた巨大なゴブリンは大きな足音と共に蓮達の前に姿を現し蓮の生成した氷ノ床に転倒することなく踏み壊した。


『で…でけぇ…4メートルぐらいねぇかこれ…

 蓮、魔力後どんくらいある?俺っち残り3割ぐらい』


『俺も3割弱って言ったところだ…

俺が奴を引きつける!音村奴の耳を破壊することはできるか?まずは感覚を奪うぞ!

 リーリャさんは引き継ぎ身体強化でバフを付与しつつ光弾で援護してくれ!』


『了解!』


『う…うん!』


『行くぞ!アイスショット!』


グサッ!


『グァアァ!』


(くっ…やはり皮膚が硬い氷塊が少し食い込んだ程度だな…)


『音村!』


『任せろ!波掌撃はしょうげき!』


バンッ!


『グァアァァァア!』


 音村はゴブリンキングの背後に回り跳躍し肩に飛び乗り両掌をゴブリンキングの両耳に勢いよく叩きつけ衝撃波を放った。


『グォオォォォオオ!』


『錯乱してる!耳は潰せたよ!』


『でかした!リーリャさん奴が錯乱してるうちに光魔法で目を潰してくれ!』


『分かった!二人とも目を瞑って!

フラッシュバースト!』


 リーリャは光弾を飛ばし光弾はゴブリンキングの目の前で勢いよく炸裂し眩い光が当たりを包んだ。


『グギャァアァァ!』


『もう大丈夫目を開けて!』


『グギャ!』

ブンッ!


『おっと…大分アイツの動きは鈍くなったけど匂いで位置を補足してくるね…

 蓮!煙玉を使うのはどう?アイツのでっかい鼻の穴に突っ込んでやるのさ!』


『音村お前にしては妙案だ!お前の煙玉貰うぞ!

 俺が奴の鼻の穴にぶち込むんだ後に奴の動きを遅くする!今の俺の魔力じゃ奴の皮膚は貫けない!お前なら内部破壊とかも出来るはずだ!

 今のうちに魔力を込めろ!トドメは任せる!』

 

『おう!任せろ!

音よ…風よ交錯せよ…融合しその活力を我が手に纏て…炸裂し障壁を除せ…』


 音村は大詠唱を行い魔力を高める。


『蓮さん私もう魔力切れ!身体強化のバフはもう無理!』


『分かった!二倍加速ダブルブースト!』


ボスッ!

ボスッ!


ブワァ…


 蓮は加速しゴブリンキングの左右の鼻の穴に煙玉を突っ込んだ。


遅延ディレイ付与エンチャント

自分由来じゃないものにはこの付与は長くは持たない!音村一撃で決めろ!』


『響かせよ…遥か彼方へと…伝えよ…万物の最奥へと…

天穿鳴動てんきゅうめいどう!』


 音村の高密度な魔力を纏った拳を受けたゴブリンキングの腹部は内部に伝わった振動と外部からの衝撃で一瞬にして崩壊した。

 音村は跳躍し拳をゴブリンキングにぶつけており上を向いた拳から出力された魔力はゴブリンキングの腹部を貫いた後、天へと届き辺りの雲を払った。


バタッ…


『音村!』


『音村さん!』


『なんて馬鹿げた魔法だ…空を晴らしやがったぞ…脈と息はある…魔力切れで気を失っただけのようだな…

 取り敢えず倒したゴブリンの耳を集めて…せっかくだしゴブリンキングの頭も持って帰ろう…

 とは言っても大荷物だし…馬車を引く馬は気を失っている…不味いな…』


『蓮さん!近くに廃墟があるよ!荷馬車で音村さんと荷物を引っ張って一旦そこまで行こう!私も手伝う!』


『分かった!案内してくれ!』


 蓮とリーリャはゴブリンの耳とゴブリンキングの頭を回収し気を失った音村と一緒に荷馬車に乗せた。

 二人は荷馬車を引き廃墟へと向かった。


『つ…疲れた…

にしても助かったよ…こんな所に廃墟があるなんてな』


 蓮は気を失った音村をベッドに乗せ、回復ポーションを飲ませた。


『元々この辺りには少なからず人は住んでたんです…

 ここ数年で魔物が急に増え出して人間の生活圏を脅かすようになったの…捨て置かれた荷馬車も家も元々は追われた人達のものだと思う…

 私は光弾でゴブリンから逃げながらこの辺薬草採取してたからこの辺の土地勘は多少あるよ』


『図鑑で見た情報だがゴブリンは稀に生まれてくるゴブリンの雌ゴブリンクイーンと多種族の雌を利用して繁殖するらしい…

 この繁殖方法は他の魔物にも幾つかは共通している部分がある…戦闘員は全てオスだ一応洞窟の中を索敵してみたが中に生体反応はなかった…

 つまり繁殖を行う為の雌がいなかったことになる…そうなった群れは人里に被害を出しに行くか、他の群れと戦争して雌を強奪するか、負けて群れの傘下になるか消滅するかになる…』


『奴らは俺たちよりもリーリャさんに近づこうとする頻度の方が多かった』


『私も薬草採取する時よくゴブリンに追われてたなぁ〜他の薬草採取してた男の人はあんまり追っかけられたことはないって言ってた気がする…』


『男を襲うメリットは薄いからな…どっちかというとリスクの方が大きい』


『基本的にゴブリンは警戒心が高い…安易に人里は襲わず逸れた人を攫う…

 ただ…追い詰められた群れは…容赦なく人里を襲うかもなこの廃墟のように…』


『ゴブリンは他の魔物と比べて弱く、討伐金も安いし…それにこの習性故に毛嫌いされてあんまり依頼を受ける人少ないよ…

 ゴブリンは弱いから注目されてないだけで結構被害を出してる気がする…』


『もしかすると他の討伐依頼で疲弊した冒険者を襲って攫ったりとかしてるかもな…

 ギルド的には他の討伐依頼で死亡したと扱われる…

 もしかすると死亡扱いになった冒険者がゴブリンの巣穴にいる可能性だってあるわけか…』


『うわぁ…何それ怖…』


『取り敢えず…此処で夜を越そう…回復しだい帰ろう』


 蓮とリーリャは一休みし携帯食料を食べながら会話をしていた。


『ねぇ…蓮さんこの際だからさぁ呼び捨てしてもいい…?』


『まぁ構わないが…』


『一つ思ったんだけど蓮や音村ってさぁ…

 何者?魔力量も出力される魔法もFランク冒険者のものじゃないんだけど…』


『……師匠と魔力に恵まれた…それだけだ』


『それに…躊躇いなく最善手を行動に移したりできる所もすごかった…

 踏んできた場数が多分違うんだろうね…』


『おーい!リーリャ!蓮くん!どこにいるんだ!』


『この声は!おーい!お兄ちゃん!こっちだよ!』


 黄昏時の森にユリアスの声が響いた。


『その声はリーリャか!?』


 リーリャの声を聞いたユリアスは廃墟に入った。


『蓮くん…状況を説明してくれるか?』


『分かった…』


 蓮はユリアスに状況の説明を行った。


『ゴブリンキングの討伐はCランク…ゴブリンの巣穴の壊滅に関してはBランクの依頼だ…

やはり君達は只者じゃないな…

 俺は森のゴブリンを少し倒してすぐ帰ってくるものだと思っていた…まさか此処までやるなんて想像していなかったよ

 それに妹がかなり逞しい顔につきなった…そこに関しては感謝しているよ…

 ただ…あまり自分たちの力を過信しない方がいい、君達は限界ギリギリまで戦い帰る体力を失った…

 クエストの敵を倒した後に帰れず死ぬ奴はごまんといる…帰るまでがクエストだそこを見失うな』


『あぁ…今後気をつけるよ』


『荷馬車は俺が引く…夜になると魔物や獣の動きが活発になる…此処も安全とは言えなくなるだろう…』


 蓮達は荷物と音村を荷馬車に乗せた。


『これは火鼠の毛皮だこれは火に耐性があって燃えない!これを巻き付けた物は引火しないってことだ!』


 ユリアスは荷馬車の持ち手に火鼠の毛皮を巻き付けた。


『んじゃ行くぜ!

ウォオォオォ!ファイアアクセル!』


 ユリアスの身体から炎が舞い上がった後ユリアスはものすごい勢いで走り出した。


ガタン!ガタン!


『うわぁ!なんて勢いだ!』


『お兄ちゃん飛ばしすぎ!』


 蓮とリーリャは激しく揺れる荷馬車に驚く。


『えぇ?なんだって?まぁいいか!しっかり掴まっとけよ!』


 荷馬車は一瞬にして村のギルドへ到着した。


『ふぅ…やっと着いたぜ…スッカリ暗くなったな〜

お前ら大丈夫かぁ〜?』


『大丈夫そうに見えるか…?』


 蓮はゲッソリした様子で答えた。


『喋れる元気がありゃ大丈夫だな!肩貸してやる中に入んな』


 蓮達は荷物と音村を運びギルドの中に入った。


『お!妹の帰りが遅せぇって嘆いてた

シスコンユリアスじゃねぇか!無事連れて帰れた見てぇだな!』


『にしてもすげぇ耳の量…300匹はくだらないんじゃないの?ユリアス貴方も手伝ったの?』


 帰還したユリアス達の様子を見てギルドの人間が騒いでいた。


『んにゃ…俺はこいつらを連れて帰っただけだ』


『おい!見ろよ!ゴブリンキングの首だぜ!こいつらが狩ったのか!?Cランクの魔物だぜコイツは!

 いや待てよ…キングも倒して300匹倒したってことは巣穴壊滅させたのか!?』


『キングを倒した後巣穴を索敵で確認したが中に生体反応はなかった…

 どうしても気になるならギルドの方で調査してくれ…まぁただ外に出て帰ってきたゴブリンの分に関しては知らないがな』


『いや…それはねぇよ奴らは警戒心が強ぇ…壊滅した巣穴に居座らねぇよ…

 数日経過して大丈夫なことがわかったら元いたゴブリンか別の群れの奴らかが入ってくる…』


『わぁ…凄いねぇ〜ゴブリンキングの討伐と約300匹のゴブリンの討伐…もしかすると巣穴を壊滅させたのかな…?』


『ギ、ギルマス…どうしやすか?これ?』


 薄黄色の長髪の紺色ローブを羽織った爽やかそうな雰囲気な男性が近づいてきた。


『後日ギルドの方で巣穴の調査依頼を出そう…壊滅した巣穴の調査の為今回クエストを受けた人の誰かを案内役として参加してもらいたい所だね…

 ふむふむ…どうやら君達はFランクのゴブリン退治を受けてたみたいだけど…とんだ大手柄だね…

 ゴブリンキング討伐の証拠もあるし…

取り敢えずCランククエストのゴブリンキング討伐分とFランククエストのゴブリン討伐

のギルドポイントと討伐金はこの後渡すとして…

 巣穴の調査が完了次第君達にはBランクのクエストの報酬とギルドポイントの付与を約束するよ』


『貴方がギルドマスターか…随分と気前がいいな』


 蓮はギルドマスターと思しき人物に声をかけた。


『申し遅れた…私はギルドマスターのステラこの村の領主も兼ねて勤めている…

 ギルドメンバーが成果を上げたのならそれに見合った報酬を与えるのは当たり前のことだ。

 君たちのおかげでこの地の魔物は減り人が住みやすくなった領主としても君達の働きを讃えたいしね』


『セリーナ…正確なゴブリンの討伐数の確認が完了次第、討伐金とギルドポイントの授与をお願いするよ』


『は、はい!分かりましたマスター!』


 ステラは受付嬢に指示を出した。


『おーい!蓮と騒いるー?、あ!いた!君たち遅いよ〜アリシア様から様子見てこいって言われて来たんだよ〜』


 帰ってくるのが遅い蓮達のお迎え係としてレオナがアリシアから遣われた。


『やぁ…レオナこの大型新人は君の知り合いと聞いたよ?

 もしかしてアリシア様とも関係があるのかな?』


『お!ステラさん久しぶり!こいつらは私の弟子だよ〜と同時にアリシア様の弟子でもあるのかな?』


『通りで…アリシア様は才有る者の導き手…この子達は幸運だ…地母神ナトラの幸あらんことを…』


『只者じゃねぇと思ってはいたが…アリシア様とも関係があったとはな…』


 レオナの話を聞いたギルドの面々が騒ぎ出した。


『マスター!集計完了です!

ゴブリンの討伐数325体!ゴブリンキング討伐1体!

 Fランク任務達成分の討伐金32万5千ゼニ!

ギルドポイントはゴブリン一体につき3ポイントですので…975ポイントの付与となります…

 ゴブリンキングの討伐金20万ゼニでギルドポイントは500ギルドポイントの付与…

 合計で52万5000ゼニと1475ポイントの付与となります!報告は以上です』


『い…一日で325体!?』


『うぉ!スゲェ!一人当たり490ポイントくらいか?クエスト初日でもうDランク昇格試験の権利を得たのか!?』


『一日で52万ってのもすげぇな…それに加えて巣穴壊滅分の報酬も上乗せされる可能性があるんだろ…』

 

 ギルドの面々は報告結果を聞いて再び騒ぎ出した。


『蓮君かリーリャさん…

 明日私に巣穴の案内をしてくれないか?音村君は無理そうだしね…勿論報酬も出そう…

 この手の調査は責任者の立ち合いが必須だからね…それに早い方がいい』


『分かった…』


 ステラは蓮とリーリャに巣穴の案内を頼んだ。蓮とリーリャはそれに了承した。


『んじゃ私達は帰るね!早く帰らないとアリシア様怒だからねぇ〜!

 あとそうだ!リーリャちゃん…とそのお兄さん!色々ありがとね〜

 後…ステラさん!今回の報酬は巣穴の調査が終わって余裕ある時にまとめて支払ってあげてね〜』


 レオナはそう言い放った後、音村を担ぎ蓮を引っ張ってギルドを出た。

 その後リーリャはギルドの面々に質問攻めに遭い…その様子をユリアスは優しく見守っていた。

 目を覚ました音村と蓮及び監督者であるレオナは今回の件でアリシアからの叱責を受けることとなる…

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