第15話 戦いの幕引きと新たな道標
『撤退ね…分かりやしたぜお嬢…
命拾いしたな!狐の嬢ちゃん!』
ライラからの撤退の言葉を聞いたゴンザレスは全速力でライラに接近する。
『逃さへんで!』
イズナは即座に金縛りでゴンザレスの動きを封じようとするがゴンザレスの強い動力により破られた。
その直後ライラが伸ばした影にゴンザレスは取り込まれ、ゴンザレスを取り込んだライラは影となり地表を這い撤退した。
『あ〜逃げられてもうたなぁ〜あのオッサンと最後にチラッと見えたお姉さん只者じゃないなぁ』
『やぁイズナ大丈夫かい?』
ゴンザレスたちが撤退した後リベルがイズナと合流した。
『リベルはん来てはったんですか…
ゴツいオッサンと戦ってたんやけど後から来たお姉さんと一緒に逃げられてもうたわぁ〜』
『今日王都に来た君たち四人と敵勢力四人が戦闘になったみたいだね。
メルシーは無事だったけど蓮君と音村君が割と危ない状態だね…二人とメルシーは車の方へ向かっていて、到着しだいメルシーが二人の応急処置をしてくれるはずさ…』
『そうやったんか…何はともあれ急いで合流して家にすぐ帰って本格的な治療せなあかんな…』
リベルとイズナは急いでメルシー達と合流する為、駐車場へと向かった。
『メルシー…二人の様子は?』
メルシーと合流したリベルは二人の状態を確認する。
『二人とも脈と息はあります。
取り敢えず…水魔法で傷口を塞いで栄養剤と魔力ポーションを飲ませました。
とはいえ二人とも怪我と魔力消耗が酷いです。一刻も早く帰って治療したほうがいいですねぇ…』
『分かった…急いで帰ろう。イズナ車を出してくれ』
『あいよ〜』
リベルはイズナに指示を出し車を発進させ王都を後にした。
『今回賊の襲撃があったわけですけど…賊のやり口がどうも私達の動向を知らないと出来なさそうな感じだったんですよねぇ…
イズナちゃん達と私達の方に別々で刺客を送り分断し戦闘を行った…』
帰り道の車の中でメルシーが今回の騒動の不可解な点を呟いた。
『ウチが戦ったオッサン急にウチに向かって突っ込んできたしなぁ…あれはウチと音村を無理矢理分断したように見えたわ…
もしかして今回の敵の狙いは音村達やったんちゃうか?
特級魔導士のウチらと音村と蓮を無理矢理分断させて…
ウチらを対応したのは足止め部隊で回収したい本命は音村達じゃないんやろか?』
メルシーの呟きにイズナが反応した。
『となると蓮ちゃんと騒ちゃんが珍しい魔力を持っていることを事前に知っていた可能性が高いです…
身内を疑いたくはないですが情報を流した人がいるか…もしくは賊側の特殊な魔法や魔道具等で情報を抜かれた可能性が考えられますね…』
『……敵一人回収できたし詳しいことは尋問してみよう…』
『それもそうやな』
メルシーの発言にリベルが反応し、イズナがそれに同意した。
暫く車を動かし一行はアリシア邸に到着し、到着した頃にはすでに時刻は午後11時を回っていた。
『すぐに二人を工房へ連れてくで!』
イズナの掛け声と共に三人は負傷した二人を急いで工房へ運んだ。
『やぁ皆んな遅かったね10時前には帰ってくるものだと思ってたけど…!?
酷い怪我じゃないか!詳しいことは後で聞く!取り敢えずアリシア様とシエルを急ぎで起こしてくる!三人は医療セットとか必要なものを準備してくれ!』
帰ってきた五人の様子を見た夜勤のレオンは即座に蓮達を治療する為、シエルとアリシアを起こしに行った。
『了解や!』
『了解です!』
『分かった』
蓮達を連れてきた三人はレオンの指示に従い治療の準備に動いた。
『…なんじゃ…むにゃむにゃ…レオンの奴急に起こしおってからに…酷い怪我じゃな…詳しいことは後で聞く。
妾は治癒魔法をかける!損傷が酷い音村から対処する!レオンは液体操作で止血!シエルは止血した箇所から糸魔法で縫合と雷魔法による電気ショック!メルシーは音村の治療が落ち着くまで水魔法で蓮の止血!イズナは念力で全体的な補助!
リベルは…もしもの時の為に必要そうな魔道具やアーティファクトの準備!』
一同はアリシアの指示のもと迅速に役割を遂行した。
『くっ…音村の奴…体がズタボロな上に魔力が空じゃ…メルシー!蓮の方はどうじゃ!?』
『蓮ちゃんは騒ちゃん程じゃありませんが…安心できない状態です…ん?蓮ちゃんの左足に不思議な形をした赤い紋様があります…』
『グァアァァアァアァ!』
急に刻印が赤く輝きだしたと同時に蓮の傷口が急速に開き出し蓮は大きな叫び声を上げた。
『急に蓮ちゃんの状態が悪化しました!このままじゃ死んじゃうかもです!』
『な!?
蓮と戦った捕虜を持ってくるのじゃ!其奴を媒介として蓮に付与された魔法を打ち消す!
蓮の氷と時の魔力も外壁の氷に含まれてるはずじゃ!捕虜の肉体と魔力と蓮の魔力を利用し、解術及び肉体の補強、魔力供給を実行する!リベル!融合ノ楔を!』
『どうぞ』
(最上級アーティファクトを躊躇いなく…さすがだな…)
『ハァァアァアァ!』
アリシアは融合ノ楔をエリィが閉ざされている氷塊と蓮に結びつけ高出力の魔力を込めた。
楔は光り輝き繋がれた氷塊ごとエリィは小さくなり、蓮の左足の紋様は消え大きな傷も塞がった。
『蓮はここまで来ると命の心配はなさそうじゃ…シエル音村の方は!?』
『ムーラも不味いかも…どんどん脈と息が弱まってる…』
『捕虜と音村を楔で繋ぐ!蓮の余りじゃがこの捕虜から風の魔力を感じる!音村との親和性はあるはずじゃ!』
アリシアは音村と小さくなったエリィが閉ざされた氷塊に楔を繋げ再度魔力を込めた。
『ハァァアァアァ!』
パキンッ!
エリィは氷塊ごと消失し、それと同時に楔は砕け散った。
『ハァ…ハァ…二人とも何とか峠は越えたのぉ…』
音村と蓮は一同の治療により、体の損傷、魔力の欠乏を解決し呼吸と脈拍も正常な状態となった。
『エリィさん…残念ですけど…一刻を争う事態でしたしそれに私達を狙った賊の一人…これは仕方のないことかもですね…』
メルシーは浮かない表情で呟いた。
『せやなぁ〜…しゃあないことかもしれへんけど…心苦しいよなぁ〜』
『アリシア様…話があります…少し席を外しましょう』
『……良かろう奥の妾の部屋について来い
残りの者は蓮と音村のケアや片付けを頼む!
本件の詳細な話し合いは明日以降とする!各自休息をとれ!』
リベルとアリシアは奥のアリシアの部屋へと向かった。
『……お主じゃろう?情報を流したのは妾には記憶の読み取りができるその意味が分かるな?』
アリシアは鋭い視線でリベルを一瞥した。
『はいはい…嘘はつけないし、ついたとしても記憶見られるってことね。
そうさ今回賊に情報を流したのは俺だよ』
『…訳を聞いてやる』
『…帝国の動きが活発になってきている。
南の国境警備隊から聞いた情報によると帝国側の人間が国境付近で複数人で怪しげな術式を組んでたって話があった。
すぐに警告射撃をして退散させたみたいだけど次の日にはまた同じことやってるんだってさ』
『…何が言いたい?』
『アリシア様とクラウンは性質が近いからそれ周りの情報は強引に掴めるけど帝国側の詳細な目的や行動を俺らは知らなすぎるって訳…』
『それが今回賊に情報を渡したこととどう繋がるのじゃ?』
『あいつらは王国にいる人間だけど王国のあり方をよく思っていない反社会的集団さ…
如何にも帝国の野蛮なやり方が好きそうな奴らってわけ、今回の騒動であいつらはメンバーを一人失い二人の回収にも失敗し大きく追い詰められた…
そこで俺がやつらとコンタクトをとり帝国と繋がせる。帝国があいつらに援助をする様に働きかけて帝国の人間を王国側で泳がせるその後そいつらを捕らえ記憶を読み取り情報を抜くどう?完璧な作戦でしょ?』
『帝国との国境には城壁がある…そう易々と帝国の人間を王国に入れられんじゃろ?』
『そう!実は見つけたんだよ!帝国と王国を城壁を越えて行き来できる大洞窟を!』
『何じゃと!?その洞窟を先に帝国に使われてたりはしておるのか?』
『多分それはないだろうね…あそこには強い獣が多い…
多分古代の魔族の瘴気が地下に流れそれを糧としてるみたい特級魔導士クラスでもあの長い大洞窟を抜けるのは難しいと思うよ…
まぁ俺は灰化しながら何とか猛獣をやり過ごして通ったんだけど』
『なるほど…そうなってくると帝国側から呼び出す人間は少なくともその大洞窟とやらを突破できる輩が来るってことになると言う訳じゃな…』
『恐らく帝国側も躍起になって王国の情報を得ようとしてるはずさ…南の国境の一件もそれ故だろうね。
俺が反王国思想を持った組織の仲間という定でその組織のリーダーと共に大洞窟を抜け皇帝と会い帝国の中でもそれなりに強くて地位の高い奴を連れて共に大洞窟を抜けて賊と帝国の刺客と行動を共にするよスパイとしてね』
『…リベル良いのか?その役割は危険という言葉すら生温い王国の命運をかけた超大事であるぞ?』
『うん、多分俺しかやれないよ』
『はぁ…何故妾にこの事を伝えなかった』
『アリシア様貴方は優しすぎる特に家族にはね…家族が危険な目に遭うと知ってたら行かせないでしょ?』
『……』
アリシアは下を向いで黙り込む。
『それに今回は良いこともあった。
蓮君や音村君が元の居た世界に帰るにはクラウンとの接触が必須…帝国も動き出してるときた…
多分戦争もそう遠くないうちに起こる…俺達は帝国に遅れをとるわけにはいかないし蓮君達もクラウンと接触するのなら戦争を含む様々な闘いに巻き込まれるだろうね…
その時になって急に命のやり取りはできないよ…今回の一件は慣れるっていうのは不適切かもしれないけど心構えは多少なり出来ただろうしね。
賊との戦闘で蓮君達は大きく成長した…修練場に閉じ籠ってちゃ全然伸びないよ。
融合ノ楔によって強い魔力を浴びながら体の内部を含む様々な箇所を再生したから魔力量が大幅に増大したはずさ…それに加えてアーティファクトを使って無理矢理融合させたんだ相当な歪みが生じてる筈だよ…もしかしたらその歪みによって魔力に変化が起こるかもね…』
『はぁ…確かにお主のやっている事は理に叶っておるかもしれぬ…
しかしリスクが高すぎる…それに巻き込まれる者達への配慮も無い…』
『安いリスクで得る成果なんてたかが知れてるよ…
配慮?そんなので足踏みしてちゃ進まない…足踏みしてちゃ好機を逃す…好機を逃すと状況は悪化する…進むしか無いんだよ俺達は…』
『世知辛いのぉ…お主心は痛まんのか?』
『ぜんっぜん!むしろ今が人生で一番楽しいまである!』
リベルは不敵な笑みを浮かべる。
『はぁ…相変わらずじゃのぉ…
程々に…いやこの言葉を告げたとて意味を成さぬな…
リベルお主は引き継ぎ賊との接触を続け、帝国との接触を図れ!重要な情報が入り次第妾に伝えよ!本件は極秘じゃ!』
『りょ〜カイッ!』
リベルは満面の笑みを浮かべ返事をした。
『ところで今後の蓮君達の動きはどうなの?』
『蓮と音村は体が完全に回復するまでは家から出さぬ…体が回復次第、修練場にて特訓じゃ。融合ノ楔による魔力の変化を見つつ基礎を固め、それぞれにあった武器を持たせる。
その後蓮はネェーヴェリアに向かわせる寒冷な環境で修行させるのが目的じゃ同行人はレオナとシエルを考えておる。
音村は軍の士官学校に妾の権限で一時的に入学させる。向こうには風属性の教え役のリンをはじめ強き者が日々研鑽しておる良い刺激になるじゃろう』
『なるほどねぇ…氷魔法を扱う蓮君をネェーヴェリアに向かわせるのは英断だね。
ただ人選が気になるな。もしもの時の熱源としてレオナやシエルを連れてくのはまぁ割と分かるんだけどイズナじゃないんだね。
そこら辺は何か理由があるのかい?』
『イズナは家に残って欲しいと思っとる工房内の業務に関わるからな。それにイズナは異世界人じゃ、この地に関して疎い。
レオナは蓮に対して強い好奇心を向けるじゃろう…レオナが蓮に深く関わる事で蓮も得るものが多いと見た。シエルも若い…故に経験を積んで欲しい…
まぁ人選の理由はこんなもんじゃ』
『うんうん、納得納得〜
レオナはクラーク家長女の次期当主…
レオンの姉にして宮廷魔道士の特級魔道士…
肩書きは大層なものだけど…彼女は何かこう…ぶっ飛んでるよね…色々な意味で』
『ふふ…それはそうじゃな勝手に王都を出ては厄介ごとか大変な物を持って帰ってくる事で有名じゃな…
完全に功績を盾にしてやりたい放題しておる…お主のようにな』
ギロ…
アリシア序盤笑いながら話していたが話の終盤でリベルを鋭く睨んだ。
『うん…それに関しては何も言えないな〜
でも俺は彼女とは気が合うなぁ〜…
昔レオナもアリシア様の元で少しの間修行してたよね懐かしいなぁ〜』
『そうじゃのぉ…今でもあの賑やかな思い出が目を瞑ると鮮明に脳裏に浮かんでくる…
ふぁ〜…結構長話をしておったな…お主ももう休むが良い妾はこのまま寝る』
『あいよ、おやすみ母さん』
アリシアはそのまま自身の部屋のベッドで眠り、リベルは工房のベッドにて眠りについた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
アリシアは早起きし、家内全員分の記憶の読み取りを行った。その後蓮と音村を除く全員が起床し昨日の一件に関しての話し合いが始まった。
『皆の者目覚めたようじゃな…覗き込むようで悪いが寝ていた者に関しては勝手に妾の方で記憶の読み取りをさせて貰った。
交代で蓮と音村の看病をしていたようじゃな…看病故に起きていたレオンには了承を得て記憶を読ませて貰った。まずは結論から言うと賊に情報を流した裏切り者は身内には居なかった…』
『ふぅ…良かったですぅ…』
『となると賊側の魔法か魔道具か何かで情報を抜かれた可能性が高い…』
アリシアの発言にメルシーとシエルが反応した。
『身内ん中に裏切り者がおるのは想像したくなかったなぁ〜…ん?身内といえばなんか忘れとる気ぃするわ…』
バンッ!
『ハァ…ハァ…おい!クソ姉貴!いつまで経っても待ち合わせの場所に来ぃひんからこっちからきてやったわ!荷物持ってここまで来るのに日明けたで!ウチになんか言う事あるやろ!』
待ち合わせの場所に一向にこないイズナに痺れを切らしたリンは王都から自力でアリシア邸まで来たようだ。
『リ…リンごめんなぁ…これには深い事情があんねん…』
『深い事情やてぇ?確かに待ち合わせすっぽかすのは不快な事情やな!って何や?皆んな浮かない顔してるやん…?』
『はぁ…しょうがないのぉ…それ!』
アリシアは右手を振り翳し記憶共有の魔法を発動しリンに打ち込んだ。
『え…やばない?』
本件の詳細な情報を受け取ったリンは急に静かになり目を丸くした。
『賊側に情報を抜く手段があるにしてもそれが何か分からないと対策の立てようがないね』
その後レオンが呟く。
『妾が考えた簡易的な対策を伝える…外に出る時は常に二人以上で行動せよ…
そして何があっても別々に行動するでないぞ』
『まぁ…それが現状すぐ取れる効果的な対策だね』
アリシアの提案にリベルが反応した。
『蓮と音村の状態は安定し!本件に関しての簡易的な対策も共有した!賊の一人から情報を抜きたかったが…それは叶わぬ…
無理に賊の手掛かりを探る必要はない!ただ不可解な点や気になったことがあった際はすぐに共有せよ!
これにて話し合いは終了じゃ!各自自分の業務に戻るが良い!蓮と音村の看病は引き継ぎ交代で実施せよ!』
一同は解散し、自分の業務に戻りリベルは話し合いの後家を出た。
リンは近況報告のためアリシアと共にアリシアの部屋へと向かった。
『南の兵から情報があったんやけどなぁ!
帝国の連中が国境付近で怪しいことやっとったみたいなんや!』
『ほう…そうなのか…リンよ情報の共有感謝する。お主はいつまで滞在する予定なのじゃ?』
(リベルから聞いた情報以外特に重要なものはないようじゃな…)
『五日後までおるで!休みが昨日含めて1週間までやったしな!音村の坊主がいつ目ぇ覚めるかは知らへんけどな!』
『そうか…お主も長距離の移動で疲れておるじゃろう…今日は我が家にてゆっくり休むと良い…』
『了解や!アリシア様ありがとうな!』
『そういえば…今空き部屋がない滞在期間中はイズナの部屋を共有で使ってくれ』
『さては!あれやろ〜どうせアリシア様のことやから魔道具とかの置き場がなくなって空き部屋を倉庫にしたんやろ!』
リンはニヤけながら発言した。
『まぁ…概ねそんなところじゃ…』
『んじゃウチ風呂入ってねぇちゃんの部屋で寝るわ!アリシア様ほなまた〜』
リンは手を振りアリシアの部屋を後た。
『妾も疲れたしレオナ宛に出す文を書き、暫しの間休息を取ろう…』
アリシアはレオナ宛の文を出し休息を取った。
『ふぁ〜…いってぇ…
俺確か…リリィと闘ってて…どうなったんだっけ?何か記憶が曖昧だなぁ…』
身を覚ました音村はあたるを見渡す。
『ふむ…ここは俺の部屋で二段ベッドの下の方には蓮が居て寝てる感じか…
おや…机でぐっすり寝てるのは…メルシーさんか…どうやら俺たちの看病をしてくれてたっぽいね。
ん〜いつまで寝てたんだろ…
まぁいいか!メルシーさんおはよー!』
『ふぇ…もう朝ですか…』
メルシーは眠い目を擦る。
『ええぇえぇ!騒ちゃん起きてたんですかぁ!?』
『何だ…騒々しいなぁ…』
メルシーの絶叫を聞いた蓮も目を醒ました。
『わぁ!?蓮ちゃんも起きた!皆んなに急いで知らせてきます!』
ガチャ!
メルシーは急いで他の住人に蓮達の覚醒を知らせた。駆けつけた一同は歓喜の掛け声を上げ大賑わいである。
『大袈裟だなぁ…因みに俺達はどれくらい寝ていたんだ?』
蓮は一同に尋ねた。
『お主達は丸三日寝ておった。
それに一時は死にかけておったのだぞ…
イズナ今回の騒動の詳細を此奴らに説明せよ…今の状態で記憶共有を行ったら十中八九此奴らは吐く特に音村はな…』
蓮の問いに答えたアリシアはイズナに説明を命じた。
『一生弄られるやつやん…』
『はいはい…説明するで…
かくかくしかじかっちゅうわけや』
音村がぼやいた後イズナが今回の騒動の詳細を説明した。
『そうだったんだ…賊とはいえ女の子の命を犠牲にして俺達は一命を取り留めたんだな…』
『ふむ…アーティファクトを使って融合させたのか…魔法に変化が出るのかすぐにでも試したいところだな…』
説明を受けた二人は呟いた。
『はいはい、元気になったら好きなだけ試そうなぁ〜』
蓮の呟きにイズナが反応した。
『あ!音村の坊主!アリシア様があんたの記憶読み取っててなぁ!
それウチにも共有して貰ったんや!あんた結構やるやんけ!合格や!ウチの弟子にしてやる!』
『お!マジでリン先輩!ご指導ご鞭撻の程宜しくお願いしやす!ん?リン先輩に猫耳と尻尾生えてたっけ?』
『あぁ…これかどうせ身内しかおらへんしええやろって思ってな。
普段は形態変化で隠してるけど…ウチもねぇちゃんと同じで混ざりモンや』
『ヘ〜…そうだったんだ〜』
『記憶で思い出した!蓮貴様!時の負債とかいう碌でもない魔法を使いおってからに!
あの魔法は禁術に指定する!二度と使うでないぞ!その魔法のせいでお主は危うく死にかけたのだからな!』
音村とリンの会話をリンの会話をアリシアが遮った。
『まぁ…使わなかったら今頃俺はここにはいないけどな…』
『それはそうなのじゃが!
何でもかんでも時の負債任せになる…即ちそれは思考の放棄を意味する。
思考の放棄を行なった魔導士ほど脆いものは無い…良いか蓮よ…時の負債は無いものとして考えよ。
死ぬ一歩手前になるまでは決して使うな
その魔法を乱用するとお主はいずれ身を滅ぼす…』
『……分かった』
『まぁ…気を取り直して蓮ちゃん達の今後について話し合いしょ』
メルシーが蓮達の今後についての話し合いを提案した。
『あぁ…それならもう決めてある…』
アリシアは今後の蓮達の予定を詳細に説明した。
『成程…俺は北の地方ヘ行くのか…シエルと…レオンの姉さんと』
『えー!俺っちが軍隊の学校に入学するの!?厳しそうなイメージしかないんだけど!』
『その為に各々厳しい環境ヘ赴く為の前準備として、お主達が回復次第みっちりと修行をつけてやるというわけじゃ!』
『今回は音村の坊主の指導、日程的に見られへんけど…
あんたが軍の学校に来たら会う機会もあるやろうしそん時見てやるわ!』
『ネェーヴェリア行くの私も初めてだから…楽しみ…ラギー宜しくね』
蓮達の今後の予定を聞き一同達の会話は賑わいをみせた。
ガチャ!
『アリシア様!手紙見ましたよ!わ、私が!時の魔力を持つ少年と北へ遠征ですって!?
その少年はど!ち!ら!に!?』
一同が会話に花を咲かせていると、
急にレオンと似た肩までな伸びた赤い髪と藍色の瞳を持ち、赤と黒をベースとした魔術師風のコートとスカートを身につけた少女が勢いよく戸を上げ押し掛けてきた。
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