第13話 死闘
『言われた通り、ここまで着いてきました。エリィさんを解放しなさい』
メルシーは鋭い目つきで男を睨んだ。
『言われなくても、彼女は用済みです。そこの少年、人質を受け取ったらとく去るといいでしょう』
男はそう言い放つとエリィ蓮に向けてぶん投げ一気に踏み込みメルシーとの距離を詰める…
メルシーは無意識的に蓮とエリィへの被害を気にしたからか二人から離れるように移動した、それに男は付いていく形となり蓮達から離れて行った。
『あわわ…受け止めて下さーい!』
(受け止める…!?俺が…?…抱くってことだよな?)
人との関わりを避けてきた蓮にとって今日初めて会った女性を受け止めることはハードルが高かった。
ドサッ!
『出遅れて悪かった…大丈夫か?』
蓮はうつ伏せで地についたエリィに駆け寄ったその直後…
ガシッ!
『
エリィは駆け寄った蓮の左足首を掴み声を発した。その後蓮の足首に赤色の紋様が浮かんだ。
『グァアァッ!』
(掴まれたところが焼けるように痛い!どういうことだ…!?)
蓮は即座に右足でエリィの手を蹴り放し距離を離した。
『おえぇ~…あの変態に⾧時間密着させられた挙句…ぶん投げられるなんて…最悪通り越して地獄ですね…
それにしても貴方投げ飛ばされた女性を受け止められないなんてとんだ甲斐性無しですね…今回はそれが功を奏したみたいですけど…随分痛そうですね今すぐ楽にしてあげますよ』
(奴が受け止めたらその分赤キ烙印の面積が増えて処理が楽になったのですが…
まぁいいでしょう機動力は削げましたし…)
エリィはそう言い放ち強く踏み込み蓮との距離を詰める。
(エリィ…敵…男の味方…俺…戦うしかない…)
蓮は思考の言葉をできる限り制限し、状況に適応しようとした。この時生存本能故か蓮は無意識に時の魔力を扱い思考を加速させていた。
『
蓮は詠唱を行い蓮とエリィ間の地面から氷の壁が生成された。
『
それに対して即座にエリィは詠唱を行い自身の足元に風を浮かしうねるような軌道で氷の壁を回避した。
『
その後即座にエリィは詠唱を行った。
(フォール…降りる…上から!)
『
蓮は即座に詠唱し、詠唱後蓮の動きは加速し即座に右足を踏み込み後退した。
ブワァ!
『うぁ!』
蓮がさっきまでいた場所の真上から強風が押し寄せた。その余波を蓮は受け大きく後方へと吹っ飛んだ。
『グァアァッ!』
着地の際蓮は左足が地に着き激痛が走る。
(…強い、この状態でこのレベルの攻撃を避けながら戦うのは無理だ…痛み…痛みさえなければ…!今…今この瞬間でも良い!痛みを消せさえすれば…)
『時の負債!』
蓮は発声と共に紋様に触れた。
(痛みは消えたな…俺はこの紋様の効力を先の時間へずらすようにイメージした…
いずれそれは負債として俺の身に降り注ぐだろう…)
『
蓮は地面に手を着き周囲の地面を氷漬けにした。
(奴の目的は俺を捉えることだったら絶対近づいてくるはず…この氷床フィールドなら俺にも分がある)
(地面を凍らせた…?)
『
エリィは足から勢いよく風を吹き出し跳躍し風を利用し氷床の範囲まで移動し着地した。
(蓮さんに近づくにはあの氷の範囲に入らなければいけませんし…あの氷の仕掛けがわからない以上安易な行動は慎んだ方がいいかもしれませんね…
それに氷の地面だと相手の方が有利なはず…だったたら!)
『
エリィは右手を勢いよく振り風の刃を発射し蓮の方向へ飛ばした。
『
パキッ!
蓮の目の前に氷の壁が生成されエリィの攻撃を防いだ。
『
(少しヒビが入った程度なら修復してやればいい…泥試合の覚悟なら出来てるぜ…エリィさんよぉ…)
蓮は不敵な笑みを浮かべエリィを見た。
『クッ…』
(距離が⾧いせいで刃の威力が落ちている…これじゃ壁を崩せない…
このまま打ち続けても私が先に魔力切れで倒れる…)
『
(これならどう!さっきと比じゃないくらい痛いはず…!)
蓮に刻まれた紋様が赤く光る。
『
蓮の詠唱と共に周囲に霧が発生した。
( 目眩し…時間稼ぎのつもりでしょうか…痛みで蓮さんは動けないはず…氷の床を覆うように霧は発生している…いつ晴れるかは分からない…迂闊に近づけませんね…
とは言え…変態のことを考えるとあまり時間はかけられません…)
『
不規則な強風が蓮が発生させた霧を晴らした。
『
再び蓮は霧を発生させた。
『あ゛ぁ゛!?』
( あの餓⿁…調子に乗ってますねぇ…!久々に私キレてしまいましたよ…ガチで総魔力勝負の泥試合を望んでいるようですね…氷床の冷気が霧の発生を補助していると考えると勝利は絶望的ですね…私の乱気流は結構な魔力を必要としますし…ならば氷床を壊しますか…?
…いやそれもリスクが高い…床を壊す魔力と生成する魔力の競い合いになるだけ…下手したら私が先に倒れる…
霧はいくら晴らしてもまた出てくるだったら突っ込むしかありませんね…相手も視界が悪いはずだし…その上機動力に制限がかかっている…感覚強化と風を使っての感知が此方にはある!臆することはな…)
エリィは一歩踏み出した氷霧の中に入ろうとしたその時…
『なっ!?』
物凄い速さで蓮はエリィに距離を詰めた。
『何故!?刻印の効果を受けてるはずなのにこんな速…』
意表を突かれたエリィは咄嗟に身構えようとする。
『おせぇよ…!
蓮は剣に氷の魔力を纏い一瞬の内にエリィに3 連撃を叩き込んだ。
『ガハッ…』
蓮の攻撃を受けたエリィからは箇所の深い切り傷とその周囲が凍結が見られた。
『……ゔっ…
(私の別枠魔法は痛覚や触覚といった刺激に干渉する…痛みを消すくらい雑作もない…)
即座にエリィは詠唱の後風を利用し瞬時に後退し、蓮から距離をとった。
『…もう辞めておけ…その出血量でこれ以上動くとあんた死ぬぞ?横になってろ切り傷を凍らせて止血してやる…』
蓮は多量の血を流すエリィに戦闘の中止を促した。
『そ、そんなこと言ってあんたらは情報の為に私を生かすんでしょ?悪いけどマスターの情報を売るくらいだったら死んだ方がマシだわ…』
エリィは重傷を負いつつも鋭い目つきで蓮を睨みつける。
『それに…私はまだ負けてない…
ぜ…全魔力解放!』
全魔力を解放したエリィは全身に風属性由来の魔力が発する黄緑色の光を纏い風が巻き起こり、滞空している。
『その体で全魔力解放だと!?本気で死ぬ気か!?』
『私は死ぬ…だが死ぬ前にお前をマスターの元へ届ける!この命に変えても!
蓮の周りの強力な竜巻が発生した。
(逃げ場は無い…俺も腹を決めるしか無い!)
『全魔力解放!』
蓮はエリィに続き全魔力を解放した。全魔力を解放した蓮は水属性の魔力由来の水色の光を纏っている。
『お前はもう逃げられない!私の全てをお前にぶつける!行くぞ!』
エリィは蓮に向かってものすごい勢いで上空から突っ込んできた。
『五重…
蓮の詠唱と共にエリィと蓮の間に5 つの分厚い氷の盾が生成された。
『
エリィはそれを強い風を纏った蹴りと殴りで次々と破壊し蓮に接近する。
(くっ…なんて破壊力と速さだ…正攻法じゃ無理だ…だったら…)
『
蓮は周囲を一瞥した後倍速の魔法を自身に掛け瞬時に氷の鎧を見に纏った。
バキバキバキッ!
エリィの攻撃を受け蓮の氷の鎧は砕ける。
『ぐっ…負債…時の負債!
アクセルラッシュ!』
蓮はエリィの風を纏った殴りを時の負債と氷の鎧で乗り越え、時の魔力と氷を纏った拳高速の殴りで応戦する。
『ヴァアァァア゛ァ゛!』
『ウオ゛ォオォォ!』
蓮とエリィの壮絶な殴り合いが暫く続いた。
『グァアァ!』
『終わりだぁあぁぁぁ!』
殴り合いの末蓮はエリィに吹っ飛ばされ背中から地についた。エリィは一気に蓮との距離を詰めトドメの一撃を当てようとしたその時…
『
ガシッ!
エリィの背後から巨大な氷の手が襲いかかりエリィを握りしめた。
『ぬぅん!』
(何度も虚をつかれると思うな!)
エリィは即座に自身の体に激しい風を発生させ氷の手を砕いこうとした…
『なに!?この氷割れるのが遅い…!?』
『アブソリュートゼロォォァアァァッ!』
蓮はエリィの一瞬の隙を見逃さず自身が放てる最大の魔法をエリィに繰り出した。エリィの周りに多数に重なった魔法陣が出現し高出力の冷気が押し寄せる。
ピキーン!
エリィは一瞬にして氷漬けになった。
『エリィさん…あんたの敗因は俺だけに注意を向けすぎたことだ…
氷の盾の残骸も氷の鎧の残骸も全部小さな氷の粒となって一箇所に少しずつ集まっていたんだぜ…あの殴り合いは単なる時間稼ぎだ…十分な氷が一箇所に集まるまでのな…
氷が集まったら後はあんたを誘導するだけだ…それに加え
正直賭けだったよ…あんたが少しでも周りに注意を向けていたら氷の集約にも気付けただろうしな…
それにあんたはどうも勝ち急いでいるように見えた…氷霧の再展開で一歩踏み出した時確信した…
俺はあんたらの事情は知らないけどその余裕の無さが勝敗を分けた。
あんたは俺を捕まえることが目的で殺すことは目的じゃなかった、はなから殺すつもりなら俺はとっくに死んでただろうさ…』
『…お…俺も限界みたいだな…』
蓮は地に着いたまま気を失った。
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