第12話 突然の襲撃
『貴方!特級魔導士のイズナさんですよね!サインください!大ファンなんです!』
音村とイズナがリンと別れた直後一人の少女が駆けてきてイズナに色紙を渡した。
『よっ!有名人!』
『よせや…お嬢ちゃん名前なんて言うの?』
音村はイズナを煽てた後イズナは少女の名を尋ねた。
『申し遅れました!私リリィと申します! 』
少女は自分の名を答えた。
『リリィちゃんな~了解~
リリィちゃんへイズナ…よしこれでええやろ!』
サインを書き終えたイズナはリリィに色紙を返した。
『わぁ~!ありがとうございます!一生の宝物にします!』
『大袈裟やなぁ~文字書いただけやで~』
3 人は暫く楽しく談笑した。
『へぇ~リリィちゃん冒険者なんや~』
『そうなんです!最近拠点を王都に移したんです!だからあんまり王都のこと詳しくないんですよねぇ…えへへ』
『だったらリリィちゃんがよかったらウチらと一緒に観光しぃひん?音村もかまへんよな?』
『おう!勿論!3 人で回った方がきっと楽しいぜ!』
イズナの提案に音村は快諾した。
『えっ!やったー!憧れのイズナさんと一緒に周れるなんて夢みたいです!』
3 人は暫く王都の観光を楽しんだ。
『私!イズナさんの魔法生で見てみたいです!差し出がましいお願いですが時間あったら王都の外れの平原で見せてくれませんか!?一生のお願いです!』
『俺もイズナちゃんの魔法生で見たい!』
『一生のお願いやったらしょうがあらへんな~今…18 時頃か~チラ見せくらいやったらええやろ』
リリィと音村の願望をイズナが渋々了承した。
『『やったー!』』
リリィと音村の二人は大きな声をあげ喜んだ。その後リリィの後に二人は着いていき平原へと向かった。
『お前ら見ときぃ~これからウチの自慢の大技ぶっ放すでぇ~』
イズナはそう言い放ち魔力を込める。
『おう!やったれ!ぶっ放せー!』
『イズナさんブチかまして下さい!』
見物人の二人のテンションは臨界点に達していた。
イズナが魔力を込めた直後…
『ウォオォォオオッ!』
ガタイのいい謎の男がイズナ向かってものすごい勢いで突っ込んできた。
『なんやこのオッさん!?』
イズナは即座に反応し男から離れた。
『逃さねぇよ!』
男はしつこくイズナを追い回す。
『ガチの不審者じゃん!イズナちゃん今助けに行くぜ!』
音村がイズナに加勢しようとした直後…
ボンッ!
『イッテェ!』
背後から飛んできた衝撃波が音村の右足に命中した。
『行かせませんよ…音村さん』
リリィは右手を広げ音村の方を向けている。
『リリィちゃん…あのオッサンの味方で俺たちを騙してたんだな…』
リリィの攻撃を受けた音村は余裕のない表情を浮かべている。
『そんなこと気にしても意味ないですよ!音村さん!貴方は私が連れて行ってまともな人生送れなくなるだけですから!』
リリィは不気味な笑みを浮かべ、音村へ向け言葉を発した。
『そっちがその気なら俺も手加減しないよ…いやまだ未熟者だから手加減できないの方かも…?まぁいいや少し大人しくなってもらうぜリリィさん…いやリリィ!』
(多分リリィとあのオッサンは
イズナちゃんと俺を標的にしたのか…?いずれにしても一対一の構図…どっちかが早くケリつけて加勢してやらねぇと…)
『あーやっぱ未熟者でしたかぁ~今回は簡単なハントになりそうですねぇ~
あんまりアガらないなぁー…ちゃっちゃか終わらせてゴンザレスさんの手助け行きますかー…』
再びリリィは右手を音村へと向けた。
ボンッ!
衝撃波は音村の腹部に命中した。
『グハッ!』
(どゆこと!?音も詠唱もなしで魔法放ったってこと!?しかも見えねぇ!)
『貴方は私には勝てませんよ~例え天地がひっくり返ってもね』
リリィは余裕な態度で地に伏した音村を見下ろす。
(…無色…無音の攻撃…?どうしようもねぇだろ!無色…無音…無…もしや!無属性か!
確か魔力その物を利用した属性のない魔法…
多分だけど魔力の塊を右手で放出してる…その軌道さえ解かれば…)
『ふぁ~…あーつまんなかったなー
早く終わらせよっと』
リリィは欠伸をした後再び音村に魔弾を放った。
『カザヨミ!』
音村がそう叫ぶと音村を中心として緩やかな風が吹いた。
『ウィンドアクセル!』
音村は声と共に左足を踏み込み風と共に一気に加速した。
『え、マジ避けられた…これは予想外』
リリィは音村の予想外の回避に驚いた。
『もう…それは当たらんよ…』
(カザヨミで風を周囲に吹かせることでリリィの魔法の軌道は読めた…
ウィンドアクセルは負傷した右足じゃ打てねぇ…流石にハンターだな的確に機動力を割いてきやがる…
さて…左足だけで後何発打てるかねぇ…)
音村は余裕の無い表情を浮かべ思考を巡らせる。
『うん…素直に見直したかなー
もう舐めてかかるのはやめるよ』
(私の魔弾が躱されたのは恐らくカザヨミとか言うこの微風のせいだね…それに加えて風を利用した加速か~…
私が魔法を放つまでの一瞬で2 つも詠唱魔法を使うか…とは言っても…右足は潰してるし⾧引けば向こうが不利…余裕の無さからしてそれは伺えるね…ふふ…だったら)
『私も本気でキミを打ち負かすよ…
リリィが詠唱した後リリィの右隣に魔法陣が発現しもう一人のリリィが現れた。
『え…?』
(え!何何何何!ふえんの!?右足負傷して二人の攻撃いなせってか!?)
音村を突如として現れた絶望と驚愕が襲う。
『さぁ!ここからが本番だよ!』
(いいねぇその表情!対魔導士戦は如何に相手の心を折るか…だからね!)
分身して二人になったリリィの片方が音村に襲いかかり、もう片方が後方支援の為か後ろで構えている。
『…くっ』
( どうする…この状態で一対一やりながら後ろから魔弾避けるのは流石にキツい…
分身に攻撃効くのか…?まずはそれを見極めねぇと…)
『地獄耳!』
(…なるほど、偽物には心音がしないのね…今突っ込んできてるのは偽物…カザヨミの反応からして実態はある…)
『カマイタチ!』
(さぁ…どうなるかね…)
音村は音の魔力で聴力を強化し分身体と本体を特定後向かってくる分身体のリリィに向けて風の刃を繰り出した。
『
後方の本体のリリィが右手を振り魔法の詠唱を行い、分身体のリリィの目の前に透明な壁を生成し音村の攻撃を防いだ。
『ふむ…』
(分身じゃなくて本体が魔法を使って分身を守った…某アニメみたく分身が攻撃を受けて消えるのを防いだ感じか…?
それに分身が魔法を使うんじゃなくて本体がわざわざ後方で魔法を使って分身守るってことは分身は魔法が使えないってことかな…?分身が前衛で本体が後衛って言った感じかね…
いくら分身に攻撃しても本体がそれを封じる…俺は片足痛めてるし分身の対処で動けば動くだけ足にダメージが入る…
カザヨミを展開する魔力、相手の攻撃を交わす時に消費する魔力、倒れないように片足を補助する為に消費する風の魔力…
多分このままだと俺が先に魔力切れで倒れる…割り切って短期戦やるしか無さそうだね…
まずは分身を倒す!)
『ウィンドアクセル!』
音村はリリィの分身体に風の魔法で加速し距離を詰める。
『
後衛のリリィ本体が音村と分身隊の間に魔法の壁が生成される。その直後リリィの分身体はそれを飛び越える為跳躍した。
『ウィンドターン!』
それを見た音村は壁を交わす為風の魔法で壁を曲がるように避ける。
『ガラ空きだぜ!カマイタチ!』
音村は跳躍したリリィの分身に風の刃を放とうとした直後…
『
リリィの本体は不気味な笑みを浮かべた後呪文を詠唱した。
『グハッ!』
(…!?本体が詠唱した魔法が分身体のから出てきた!?…それがどうした!怯んでる暇なんてねぇ!)
『ウィンドアクセル!』
リリィ本体が詠唱した魔法は分身体の右手から出力された。
至近距離から発された魔弾を交わすことができず音村の腹部に直撃し音村は魔力の炸裂と共に吹っ飛んだが、それに構うことなく自身の体から風を吹かせ体制を整えた後、両掌と両足から勢いよく風を吹かせ分身体に突っ込んだ。
( 無詠唱魔法より高威力な詠唱込み魔法を当てる為にわざわざ魔障壁を本体である私が展開した甲斐があったね…まんまと引っかかってくれたよ!
てか詠唱魔法受けても怯まずに突っ込んでくるとは…さてどうしたものか…)
『
リリィ本体が魔法を詠唱し、分身と音村の間に再度障壁を作る。
『何度もおんなじ手に引っかかるかよ!
ボンッ!
バリンッ!
音村は風と音の魔力を同時出力し高威力の殴りで障壁を壊す。
『ウォラァ゛!』
ボンッ!
障壁を壊した直後無詠唱で分身体から魔弾が飛んできたがガザヨミで即座に感知し音と風の魔力を纏った拳で相殺し、一気に分身体に距離を詰める。
『ウォォオォオアォァ!』
(これでどうだぁ!)
音村は魔法を放ち隙を晒した分身体に渾身の一撃を叩き込んだ。
ボンッ!
『グァアァ!』
(爆発しやがった!ってぇ…今ので指の骨何本かいったな…魔力纏ってたからこんだけで済んだけど…右手持ってかれるとはね…)
音村の攻撃を受けた分身体は爆発し、音村は攻撃を行った右手が爆発に巻き込まれ負傷した。
(とは言っても分身はもういねぇ!このまま直で本体を叩く!)
音村はリリィ本体に風で加速し、距離を詰める。
( 分身壊されるのは結構予想外…とはいえ右足に続き右手も壊せたのはいい感じだね…つーか何!?あの力技!あんな高威力な魔法滅多に見ないよ!あれ喰らったらひとたまりもないね…
分身は壊されてからもう一度作るのに時間がかかるし魔力もかなり持ってかれる…
私自身がやるしか無さそうだね)
『
(私の別枠魔法は二倍…この魔法で分身を作ったり身体能力や魔法を強化することができる…分身中にバフは付けれないけどね…
あの速度で突っ込まれたら回避は無理そうだね…正面から迎え撃つしかないか…)
『
(この魔法は魔力で魔力を中和する魔法…
これが相手や相手の魔法に当たると私の魔力と相手の魔力が反応し対消滅する。
相手の魔法を打ち消したり、相手の魔力を削ったりできるってわけ。
まぁ魔力依存だから削り合いになってどっちが先に魔力切れになるかって感じかな…二倍と魔力中和のバフの重ねがけだよ…これで受けて立つ!)
リリィは自身に魔法をかけ音村の攻撃に備える。
『ウオ゛ォォオオォ!』
『ハァアァァアァッ!』
リリィは強化した聴覚、視覚、運動能力で音村を迎え撃とうとしたが音村の音と風を纏った加速に翻弄され。攻撃を受ける箇所に中和魔法を付与した障壁をギリギリで設置するのがやっとだった。そのやりとりが暫く続く…
ボンッ!
『キャッ!』
(くっ…飛ばされちゃった…あいつ化け物かよ…)
『ヴォオォォ!』
音村は吹っ飛んだリリィに容赦なく襲いかかる。この時音村の体は限界を迎えており体の各所から血が噴き出ている。
『バケモノだな…』
( 完全に理性飛んでるね…各種魔法の展開とガン攻めゴリ押し思考の影響かね…魔法に精神が奪われてる…逃げられればこのままこいつは暴走して死ぬけど…まぁ逃げらんないよねぇ~…でもこいつ死なすわけにも行けないし…一か八かやってみますか…)
『
リリィは突っ込んでいた音村の頭に右手で触れ詠唱を行った。
バタッ…
その後音村の纏っていた風と音の魔力は消え失せ音村はリリィの目の前で気を失い倒れた。
『ハァ…ハァ…どうやら私の魔力残量が勝ったみたいだね…この魔法は自分と相手の魔力を打ち消し合う魔法…先に魔力が空になったら負けの単純な魔力総量の勝負ってわけ…いや~まさか奥の手使わされるとは思わなかったなぁ~…
私の魔力も鼠の指先くらいしか残ってないなぁ~体も限界だし…
てかあんだけ高出力の魔力放出してたのにここまで私の魔力が削られるのはね…
ホント色々な意味でバケモノだったなぁ~
動けないしとりまマスターに連絡しますかね…』
リリィはベルトに掛けられた小さなポーチからライラの似顔絵が書かれたカードを取り出した。
『もしもし~マスタ~?』
『あらリリィ何用かしら?』
リリィがカードに向けて話しかけるとライラの声がカードから聞こえた。
『とりま音使いは行動不能にしたよ~私もう動けないし魔力もすっからかんだから私と音使い回収してくんない?ゴンザレスさんにそれ伝えて撤退の補助もしてくれると助かるかな~』
『ご苦労様…貴方がここまで追い詰められるとは思わなかったわ…今から向かうわ音使いをしっかり監視しときなさい』
『は~い、さてエリちゃん達はどうなってるかねぇ~』
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